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意味ある視線  作者: nasanasa
3/4

夏課外後半 先輩

部室までは運動場から体育館を抜けて校舎横に建っている。足早に部室に戻り、いつもの棚にある箱を開け、中を探すがない。


あれれ?と思いながら他の棚を一つ一つ見て回る。

なんで無いんだろ?いつもの箱にあるはずなのに、誰か使ったのかな?

んーと考え込んでいると



「アキ!」

「!??」



急に呼ばれて驚いたため、ビクっと肩が上がってしまった。



「なに、そんなに驚いてんだよ?」

「いや、普通大きな声で後ろから呼ばれたら誰でもびっくりしますよ!」



驚いた自分が変とでも言うような言い方にムッとし、相手に対してちょっと大きな声で反論した。



「そんなに怒んなよなー。あ、これ、ストップウォッチちょっと俺が借りてて持ってたんだ!忘れててさ、無かっただろ?」



けろっとした感じで言い返すこの人はヒダカ ショウ先輩。

私の一つ上の先輩だ。




「無かったろ?じゃないですよ、どこにあるかなとかちょっと考えてたんですから!」

「”ちょっと”だろ?ずっと考えてたんじゃないから良かったじゃん」




ハイハイって感じでにっこり笑いながら私の肩をポンポンと叩く先輩。

いや、そーいうことではないのに!ってか、持ってたことに対して謝ってくれないのか!




「ヒダカ先輩、言葉の一つ一つに反応しなくて良いですよ」



背の高い先輩をちょっと睨みながら話した。



「まー、俺って頭の回転早いからねー」



睨みを利かせても効果はないようだ、むしろそれを楽しんでいるように思える。

この人はよく私の反応を見て楽しむのだ、手のひらで転がされてる感が自分でも分かる。




「そうですね、わざわざありがとうございました、では、私は行きます」




トゲのある言葉を発し、早々と部室を出たが、先輩はすぐさま私の横に並び歩調を合わせてきた。





「どーせ同じ部活なんだから一緒に行っても良いじゃん、寂しいことしないでよ」

「ナナミ先輩待たせてるので、急いでるんです」





早歩きで体育館の横を通ってると、体育館のドアが開けっ放しになっており、そこから体育館の中の人を発見した。



あっと思ったのも束の間、その人物はパッと視線を外し見えない所へと移動した。




ヤマモト君だったよね?たまたま見えたのかな?




「あいつ、アキのこと見てたね」




隣を歩く先輩が急に今の状況を言葉として発したため、パッと先輩の方を向いてしまった。

けれど、ヤマモト君が自分を見つめてたのかと改めて思うと恥ずかしくなり、再び前を向き直す。

赤くなってしまってないか心配な顔は下を向くことで先輩にも見られないだろう、先輩背が高いし。





「…」

「…」





あれ?先輩何も言わないのかな?

いつもならどんどん質問攻めとか、からかってきそうなのに、無言って何だろ。



いつものうるさい先輩ではない雰囲気がして、チラッと先輩の顔を伺ってみる。


先輩は全く表情がなく、視線も真っ直ぐ向いていた。


チラッと見ただけだけど、先輩はやっぱりカッコイイ。

180近くある身長に対してガッチリとはしておらず、程よく筋肉がついている。

眉にかかるくらいの長すぎず短すぎずの黒髮でサラサラだ。

顔は鼻筋が通っており目も切れ長の二重で整っている。

一年の間でもカッコイイと評判だ。

そういえば、学力も学校で10番内とか聞いたな、

凄いな、天は二物を与えずとか言ってたけど与えてるよね!?私には一つも与えて貰ってないよ!




なんて心の中で嘆いていたら、ナナミ先輩のところについてしまった。




「あれ?ショウ君も一緒だったんだ?みんなすでにアップ始めてるよ?」

「ちょっとな、そのまま合流するわ」




そう言葉を残し、駆け足で集団で走っている輪の中に入り込んで行った。



「んー?何かあったのかな?」




ニヤニヤしながらナナミ先輩は私の顔を覗き込んだ。



「いやいや、何もないですよ!てか、ストップウォッチ、ショウ先輩が持ってました!部室で探してたんですけど無くって、そのタイミングでショウ先輩に渡されたんです」




ついさっきの出来事を思い出し、ムッとしながらナナミ先輩に話した。


「それも謝ってくれなかったんですよー、探してたのに!」




そうだ、謝ってくれなかった、普通の人なら謝るだろうに!プンプンしながらナナミ先輩へ怒りのはけ口を向けていると、



「それだけか、なんだー」




不満そうな言葉をだし、やれやれって感じで視線を走っている輪に向け、口をへの字にした。



「それだけって、それだけでもムカつきました!」

「あ、いや、そんなことではなくてねー」




アハハと笑いながら、サエちゃんてば可愛いなーってヨシヨシと頭を撫でてくれた。


キュンとナナミ先輩に胸がときめいてしまい、さっきまでの怒りがすっかり消え去ったのだ。

なんだかご主人様にヨシヨシされた飼い犬になった気分だ。ま、ナナミ先輩が飼い主なら嬉しが。



「じゃ、アップ終わってから記録取りしよっか!」

「ハイ!」




ナナミ先輩の笑顔につられて私も笑顔で返答した。


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