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ヘクセリットの魔法騎士と紅月の悪魔  作者: 春野まつば
第2話 初任務と下剋上
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集会にでよう②


「次は君の左隣、七席リリア・ポップルウェルさん。彼女のことも同じ一年生だし、君を迎えに行ったんだからわかるよね」


 あぁ、パンツの色まで知っている。

 心の呟きが聞こえたか、リリアから冷たい視線を感じた。


「リリアさんの隣、八席のミカエル・フリューベルトくん。実家はかなりのお金持ちだよ」


 マッシュっぽい銀髪に長いまつげと女のように白い肌。

 どうにもナルシストっぽくてルークには仲良くなれそうにないと感じたが、どうやら相手も同じ気持ちらしく敵意満々の目で睨みつけてくる。


「キミはリリアくんの何なんだい?」


「…何でもねーよ」


「嘘をつくな。ボクは君とリリアくんが楽しそうに会話をしてるのを何度も見たぞ。おまけに僕だけの特権だったリリアくんの隣に座るなんて分不相応にもほどがあると思わないかい?」


 思わぬ口撃にルークは言葉に詰まる。

 確かにパンツまで脱がしといて何でもない関係というものでもないし、だからといって友達というわけでもない。

 言うなればーー


「黙って」


 口を開き、今まさに言葉を発しようとしたルークにリリアは冷たい言葉で制止をかけて、キールに紹介を続けるよう目で訴えた。


「ケンカは後でしてね。この後は面白い話もあるから」


 相変わらず、柔和な笑みを崩さないままキールは次にオリヴァーの隣、すなわちルークたちが座る椅子の向かいにある長机、ブラインの真向かいのたくましく筋骨隆々な男に視線を移した。

 ムキムキの体に角刈りの男。いかにも男らしい身体をしているが、顔面は化け物じみている。

 分厚い唇にはどぎつい赤の口紅に頬にはピンクのチーク。瞼には薄青色マスカラを施した、所謂オカマさんのようだ。


「ア・タ・シ・はカトリーヌよ」


 明らかにカトリーヌという名前ではなさそうだが、カトリーヌはルークに向けてチャーミングで醜悪なウィンクをしてくる。


「ははは、彼は第九席のダグラス・ウォルトン。彼も僕と同じ三年生だよ」


「んもうっ! 彼じゃなくて彼女っ! それにダグラスなんて可愛くない名前じゃないわよっ!」


 頬を膨らませてプリプリ尻を振りながら怒るダグラス、自称カトリーヌに例えようのない嫌悪感をルークは抱いた。


「黙れ、オカマ野郎。いちいち気持ち悪いんだよお前は」


 今まで不機嫌そうではあるが、黙って聞いていたクライドは凍てつくような眼光でダグラスを睨みつける。


「……やんのか、チビ」


 その言葉を受け、妙に女よりも女らしかったダグラスの顔が突如鬼のような顔に豹変し、重低音のきいた声で応対した。


「何度も言ってるけど、ケンカは後で。今は紹介の時間なんだから」


「…チッ」


「わかったわよ、キールちゃん」


 いつものことなのか慣れたようにキールは二人をたしなめるとダグラスの隣の少女の紹介に移る。


「彼女は第十席のアンナ・ウォーターズさん。巷ではとっても有名な歌姫として知れ渡っているよ」


「は? 巷じゃなくて世界でなんですけど〜」


 キールの紹介を不服そうにアンナは髪を指でくるくる巻きつけながら言った。

 あぁ、こいつがダンの言う女か。

 確かに美しい顔立ちをしている。隣にダグラスがいることによって殊更ことさら、少女の美貌を際立たせているようにも思う。

 桃色がかった長く緩いウェーブのかかった髪に長い手足。立ち居振る舞いは妖艶で歌姫だけあって確かに綺麗ではあるが、なんとも性格が悪そうな印象を受けた。

 ダンはこんなやつの何がいいのだろうか。


「その隣が二年生、第十一席のモーリス・フリッツくん。身体は大きいけどとても優しい子だよ」


「オイラはモーリスっていうんだわ。よろしく頼むんだわ」


 顔半分が埋まってしまっているモジャモジャのヒゲに坊主頭。逆さまにしても顔になりそうな見た目。

 喋りは地方の訛りが強く、ゆっくりと話すのでこちらまでゆっくりと気の抜けた気分になってしまいそうだ。


「長い紹介もこれで終わりだね。彼女が第十二席のグローリア・クラナッハさん。二年生だよ。最初に忠告しておくけど彼女を怒らせないように。恐ろしい目にあうよ」


 今まで紹介になんて興味ないといった感じで読書に没頭していた少女が顔を上げて小さく会釈する。

 ざっと紹介を受け、自分が言うのもなんだが、なんともアクの強いメンバーだ。


「そうだそうだ、君をみんなに紹介しなくちゃ終われないね。まぁ、しなくても入学早々、色々と話題にはなっていたんだけど」


 そこでキールは一呼吸を置いた後に爽やかな笑顔で、


「彼は新しく第六席になってもらうルーク・キスリングくん。なんとルークくんはエルシュタイン牢獄に幽閉されていたんだ。それもそのはず彼は各国の民衆を震撼させたエルシュタットの悪魔なんだからね。その力は一国の軍隊に匹敵するほどと言われているよ」


大きく手を広げながら大々的に紹介した。

 悪魔と言うワードが出たところで何人かのひりつくような視線を感じたが、すぐに消えてしまったためルークは誰によるものかは判断ができなかった。

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