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ヘクセリットの魔法騎士と紅月の悪魔  作者: 春野まつば
第2話 初任務と下剋上
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系統判別とオリジナル魔法②

 アデリーヌに渡された鍵のタグに書かれた部屋番号を頼りに、広い学生寮内を探し回ってやっとの事でルークは自分の部屋にたどり着いた。

 火を灯す魔法も使えないので、棚の上に置いてあった自分用に用意されたとも思えるマッチを擦ってランプに灯りをつける。


「じめじめした牢獄と比べたら最高級の宿だな」


 備え付けられていたのは立派な机と椅子。ベッドはふかふかでいい夢がみれそうな感じだ。

 だが、ただ一つ気にくわないものがあるとすれば机の上に置かれた分厚い本の数々。

 一冊手に取ってみると授業用の教科書だとわかる。流し読みをするようにパラパラとページをめくってみるが、所狭しと並べられた文字を見てすぐに嫌悪感を覚えて閉じてしまう。

 勉強は嫌いだ。

 小村で生まれ育ったルークにしてみれば勉強なんて何の役にも立たないもの、という考えがあるからだ。

 畑仕事や狩りができれば生活するにあたって困ることはない。加えて、絶対的な力を持ち合わせたルークには狩れない獲物はいなかった。


「あーあ」


 教科書を乱暴に放り投げてベッドに仰向けに倒れこむ。

 見慣れぬ天井を見上げながらふとゼピアの言葉を思い出した。

 自分は最終的に騎士なって何がしたいのだろう。楽しく生きる、をモットーに生きてきたルークだが、言われてみれば何がしたいのか考えたこともない。

 六年間も牢獄に入れられてもう自分も十六歳になる。

 悪巧み以外でこんなに頭を使ったことがなかったルークはすぐに投げ出して考えるのをやめた。




「ルークくんが遅いからでしょ!」


「眠かったんだからしゃあねぇだろ。今更急いでもなんも変わりゃしねーよ」


 慌てた様子で足早に歩くメイナとだらだらとその後ろを歩くルーク。

 初めての授業に緊張していたメイナが一緒に行こうと戸を叩いてみれば、事もあろうにスヤスヤと寝息を立てていたルーク。

 寝起きの悪さは一級品で無理矢理、布団を引き剥がして幾度か頬を叩き、やっとのことで目を覚ましたところを初授業で遅れるわけもいかなかったので強引に腕を引っ張り、連れ出すことに成功した。


「ま、間に合った…」


 ちょうど始業のチャイムが鳴り響いたと同時にメイナはルークの腕を引きつつ、急いで空いてる席に座って教科書を机に並べる。

 初めての授業は魔法特性の授業だ。


「なにしてるんですか、早く教科書出してください」


 メイナは母親のようにルークの教科書を自分と同様に並べる。

 周りからくすくすと笑い声が聞こえてくる。

 ルークはされるがままに大欠伸をしながらその様子を見守り、メイナの世話焼きが終わると眠そうな目を擦る。


「なぁ、お前タメだろ? 敬語やめねー?」


 そう言えばなんでずっと敬語で話してたんだろう、とメイナは不思議に思う。

 調子を整えるようにメイナはこほんと咳をした。


「ルークくん。真面目に授業うけてくだ…受けてね!」


「ぎこちねーな」


 ルークは呆れたように笑った。

 なんだか照れくさくメイナは少し顔を赤らめて誤魔化すように教科書に目を通す。

 それからすぐに初老の男が教室に入ってきて教壇に立った。


「えー今日から編入生がいるとのことなので初めに自己紹介をしておく。魔法特性の授業を担当するシュタインだ」


 分厚いメガネにひょろりとした体型。いかにも学者風の男だ。


「今日からはみんなに自分の系統について理解してもらおうと思う。では、まず魔法系統の説明から…」


 シュタインは黒板に六角形の図を書いた。それから角に上から時計回りに『光』『風』『火』『闇』『土』『水』と順に丁寧な文字で書き加えていく。


「あー魔法はこの六つの系統から成り立っているのはみんなも知っているかと思う。中にはもう自分の系統を理解し、独自の魔法を作っている者もいるだろう。編入生のために簡単に説明すると、本来私たちはこの六つの系統のどれか一つを潜在的に得意としている。もし、私が風の系統魔法を得意としているならば対角にある土系統の魔法は習得できないわけじゃないが、正式な土系統の使い手には威力では遥かに劣ってしまう。つまり、対角にある系統は苦手系統となってしまうわけだ。両隣にある系統、風系統ならば火と光。土系統ならば水と闇。これらはそれなりに得意な魔法と言っていいだろう。ではお互いが闇系統の同じ術を使った場合どうなる?」


 シュタインが一番前に座っていた生徒に聞くと、その場で立ち上がりその優等生そうな少女は答える。


「土系統使いが勝ちます」


 それにシュタインは頷く。


「その通り。では、お互いが火系統の同じ術を使った場合はどうなるだろうか?」


 次に先ほど当てた少女の横に座っていた熱心にノートを取る少年に答えるよう促す。


「土系統使いは火系統を少し苦手としているため火系統を少し得意とする風系統使いに軍配が上がります」


「その通り」


 シュタインが正解だと告げると少年はメガネをくいっとあげて得意げに着席した。


「つまり、自分の系統から遠くなるほど苦手な系統となってしまうわけだ」


 シュタインはそこまで説明を終えると机の下から箱に詰められた小瓶を一つを取り出して机の上に置いた。


「では、自分の系統はどう判別するか…その際、一般的に使われるのが『シンクロフェアリー』と呼ばれるこの虫だ。試しに私がやってみよう」


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