現実⇐ 『分岐点』 ⇒夢
「そんなの許せる訳ないだろ!」
「あの子のしたいようにさせてあげるべきよ!」
一階からお父さんとお母さんの怒鳴り声が聞こえる。
二人とも私のことで、
私の進路のことで抗論しているのだ。
原因は、
私が自分の進路について、「イラストレーターになりたいから専門学校に行かせてほしい」と言ったからだ。
それにお父さんは反対、
お母さんは賛成と分かれてしまったので、抗論が始まったのだ。
そんな二人の声を聞き流しながら、私は夏コミの原稿に筆を走らせる。
部屋に響く筆音のように、私の心は無機質だ。
なぜお父さんとお母さんは怒っているのだろう。
いや、どちらも自分の為だということは分かっている。
お父さんは有名大学を目指せと、そうすれば将来安泰だと言う。
お母さんは自分のやりたいことを、後悔しないように自分の夢を追いかける方が良いと言う。
それは分かっている。
十分分かっているのだ。
しかし、何故二人とも怒っているのか、
それがどうしても分からない……
ああ……そうか……
私は『人形』なんだ。
二人の大事な、大事な大事なお人形さん。
少し前に、ある本で読んだのを思い出した。
なんで怒っているのか
それは相手が自分の思い通りにならないからだ。
相手が自分の意見を認めてくれないからだ。
だから互いにもどかしくなって声を荒げてしまうのだ。
ほら。気が付くと、
「あなたはいつもそう! いつも私の話を聞いてくれない!」
とか、
「お前だってそうだろうが! あの時だってなあ、俺の言う通りにしてれば!」
なんて、私に関係ない自分たちの話題が変わった。
結局二人とも、『あなたのため』なんて言いながら『あなたをこうしたい、ああしたい』と言っている。
親なんてそんなもの、なんて悟ったことは言わない。
ただ彼らを見ていると、私もそんなことを言っていないか。
他人に助言するつもりで、操ろうとしていないか。
それがただただ心配になってくるのだ。
…………筆は線を描き続ける。
淡々と。
ただ淡々と……




