その二
ホームズは一年ほど前から、このように突然子供じみたことをやるようになっていた。まだそこまでひどく年を取ったわけではないのにも関わらず、年上のハドスン夫人より、精神的にも肉体的にも老いてしまったように思えた。
一方で、彼のその明晰な頭脳はまだ健在だった。彼とテラスの上で話し合ったあのときからも、我々は来るべき戦禍の嵐をどうにかして避けようと、最大限の努力を払ってきた。しかし、我が国は結局、ホームズの働きを最終的には封じてしまったのだ。その点でいえば、確かに我が国は今度の戦争に責任があることになる。
ホームズはそれ以来少し塞ぎこんでしまった。外にもあまり出ることはなく、三ヶ月ほど前からは足が痛いといい始めた。ただ、私の見る限り、特に足に故障があるようには思えない。きっと彼の心の問題なのだろう。
それでも彼のもとには事件の依頼が届く。この二月には毎週長髪になって散髪にくる紳士についての「長髪の紳士」事件を解決したし、ガーター勲爵士ばかりを狙って起きた「ガーター・スキャンダル」にも、世間の知らないところで解決に大いに貢献した。彼が動けなくなってからは、私が代わりに出かけて調査をすることもしばしばだった。