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四.フグ料理専門店

「ああ、源さん。神尾はどこに行ったんですか?」

 金属工作室で彫金をしていた飯島博が、そこを覘いた源三郎に訊いた。飯島は洋介が勤務していた研究所に同期で入所し隣の研究室に配属になった研究者で、筑波ホビークラブの開設時からの会員である。洋介の考え方に共感しており、あらゆる面でここの運営に協力してくれている。

「あれ、飯島さん。来ていなさったんだ。神尾さんならさっきから奥の部屋に入ったきりだよ。まだ明るい内に鹿子木さんが来て、何か話していたんだよ。鹿子木さんが帰った後はずっとボーとしていたんだが、いつの間にか部屋に入ったようで、それきり出て来てないんだよ」

「また、何か事件が起こったようですね。こりゃ、当分の間は、相手にしてもらえそうもないな」


 飯島はいつものことなので仕方なさそうな顔をして再び彫金に取り掛かろうとすると、洋介がひょっこりと現れた。籠り部屋から出て、東の端から順に各部屋を覘きながら最も西側にあるこの部屋に辿り着いたところであった。

「おや、飯島。来ていたのか」

「来ていたのか、じゃないよ。一時間も前から彫金をしながらお前さんを待っていたんだよ」

「何か特別の用事でもあるのかい?」

「いや、そういう訳じゃないけどさ。ここに来てお前さんがいないと、何かあったんじゃないかって心配になるんだよ」

「心配になるっていうより、興味が湧くって言ったほうが正確なんじゃないの?」

「まあ、そんなところかな。ところで、また鹿子木さんが来たんだって? 今度は一体何が起こったんだい?」

 洋介は掻い摘んでこれまでの経緯を説明した。

「源さんの話じゃ、ボーっとして部屋に閉じこもっていたらしいね。それにしちゃあ、随分とスッキリとした顔をしているじゃないか。さては、ヒントを掴んだようだな」

「いや、ちょっと気になることがあったんで、調べ物をしていただけだよ」

「だめだよ、嘘をついても。ちゃんと顔に書いてあるんだから」

「あはは、飯島には敵わないな」

二人が愉快そうに笑っているところに源三郎が来て、他の会員が洋介を呼んでいることを伝えた。

「それじゃ、また」

 そう言って、洋介は金属工作室を後にした。


 翌日、洋介は木材工作室でホビークラブに加入したばかりの若い会員に備品の工具の説明をしていた。そこへ鹿子木が息せき切って飛び込んできた。

「あっ、神尾さん。やっぱり神尾さんはすごいですね。おっしゃった通りでしたよ」

「いったい何が分かったんですか。そんなに慌てて入ってきて」

 鹿子木は手で合図して洋介を工作室の入口まで誘ってから声を若干落として言った。

「あったんですよ、酢の物が」

「やっぱり……、そうでしたか」

「酢の物は亡くなった港北の大好物だったそうで、特別に港北にだけタラバガニの酢の物を注文していたんだそうです」

「うーん、臭いな……。港北さんが酢の物好きだということは周囲の人たちは知っていたのですか?」

「港北は料理に関する注文が相当うるさかったようで、酢の物を彼のためだけに追加注文することもあったようです。あの日も幹事を務めた田丸徹が店に頼み込んで、港北にだけタラバガニの酢の物を出してもらうようにしたようです」

「そうすると、酢の物が出るのを知っていたのは田丸さんだけだったのですか?」

「いや、そんなことはないようです。田丸が言うには、新室長の落合が港北の所に行ってお伺いをたてた時に、港北がフグ料理を指定し、同時にタラバガニの酢の物も付けるようにと言ったのだそうです。それで落合が田丸に指示し、港北にだけ一鉢出すことで店にOKしてもらったということです。その後、田丸がこの遣り取りを研究室の皆に話した時に、『まったく、誰のための送別会だか分らない』と愚痴を言ったそうです。だから、少なくとも研究室のほぼ全員が知っていたということになります」


「それからですね、ここに来る前に念のためあのフグ料理専門店に行って酢の物のことを訊いてみました。先ず料理人の初沢に訊いてみたんですがね、最初に警察が彼のことを疑ってかかったために相当臍が曲がってしまったようで、つれないものでした。それで仕方なく他の料理人に訊いてみたのです。酢の物はフグと違って毒があるような食べ物ではないので、いつもと同じように特別の注意は払わずに調理したということです。港北に出したタラバガニや他の酢の物の材料は別の客にも出したそうですが、何の騒ぎにもなっていないということでした」

「分りました。酢の物に関しては、これ以外に何か掴めていませんか?」

「今のところ、ここまでです。しかし、これ以外と言われましても、いったい何を調べればいいんですか? それに、酢の物が港北の中毒死とどう関わっていると言うのですか?」

「いや、よくは分らないのですが、酢の物に関して何か特別なことがあったんじゃないかという気がするものですから」

「分りました。酢の物が出されていたという事実を掴んだだけで感心してしまったんですよ。でもどう調べたらいいのか、少しヒントをくださいよ」

「ヒントと言われたって、私にも分りませんよ。とにかく、酢の物に関してもう少し調べを続けていただけませんか?」

「うーん、掴まえどころがないけど、これが私の仕事だからせいぜい頑張ってみましょう。だけど、うちの署では食中毒死の線で固まりつつあるのが実情なんですよね……」


「ところで、鹿子木さん。あのフグ料理専門店は営業停止処分になっている訳ではないんでしょう?」

「ええ、そうです。事件直後はフグの食中毒だと思われていたので営業は自粛してもらい、いろいろと調べてみたのですが全く異常が見つかりませんでした。いつまでも営業自粛させておく訳にもいかないので、今は営業していますよ」

「そうですか、それはよかった。実は私も一度あの店に行ってみようと思うのですが、よろしいでしょうか? 料理を食べながらそれとなく訊いてみたいんですよ」

「もちろん、全く構いません。どうも警察に対してアレルギー状態になっている様子なので、神尾さんのような人には少しは喋ってくれるかも知れませんね」

「それじゃ、近いうちに行ってみます」

 鹿子木は洋介の前向きの提案にも嬉しそうな顔もせず、怪訝そうな表情のまま重たい足取りで筑波ホビークラブを後にした。


「愛ちゃん、明日の夕方、時間ありますか?」

 愛は頬をほんのり赤くして上ずった声で訊き返した。

「えっ、突然どうしたのですか? 神尾さんからこんなこと訊かれるなんて、私がここに来てから初めてのことじゃないかしら……」

「いや、変な意味はないんですよ。鹿子木さんに頼まれた例の事件が起こったフグ料理のお店に行ってみたいんですが、一人で行くのもちょっと気が引けるので、愛ちゃんに一緒に行っていただけないかな、って思ったものだから……」

「なあんだ、そんなことですか。お安いご用ですよ。ただし、お店に行くだけじゃ、ダメですよ。ちゃんと美味しいフグ料理を食べさせてくださいね。でも……、あのお店って中毒事件を起こしたのでしょう? 何だか怖い感じがしますけど大丈夫なのですか?」

「あのお店の調理方法が悪くて事件が起こったということにはなっていないんです。それにあんな事件が起こった直後ですから、お店のほうもいつもよりは気を付けて調理するので、大丈夫だと思いますよ」

「そうですか。それならいいのですけど……」

「大丈夫ですよ。私はね、普段から愛ちゃんがボランティアみたいにここに来てくれているので感謝しているんです。ちょうど良いと言っては申し訳ありませんけど、良い機会なのでフグのコース料理をご馳走しますよ」

「有り難うございます。明日の夕方もここに来るつもりでいましたから、大丈夫です。楽しみだなー。私、フグなんてちゃんと食べたことあるかどうか覚えていないのですもの」

「それじゃ、明日の夕方ここに来てください。私の車で行きましょう」


「ところで神尾さん、フグって冬が旬のお料理じゃなかったかしら? 祖父がそんなことを言っていたような気がするのですけど……。もう四月中旬ですよね、まだ食べられるのですか?」

「フグの旬は、『秋の彼岸から春の彼岸まで』と言われていて、愛ちゃんの言う通り冬が旬だそうです。それはね、成長したフグが産卵のために日本沿岸に近づくのが冬だからというのが一番の理由のようです。それと、鍋料理にすると体が温まるということもあるようですね。ただ、最近は冷凍技術や養殖技術が進歩しているので年間を通じてフグ料理を味わうことができるそうですよ」

「わー、良かった。明日が楽しみです」


 次の日の午後四時には愛の姿が筑波ホビークラブの受付にあった。

「愛ちゃん、今日は随分と早いですね。あのお店には一応六時に予約を入れておきましたので、ここを出発するのは五時半頃で十分でしょう。それまで時間を潰していてくださいね。私はまだ仕事がありますので」

「ご心配には及びませんわ。源三郎小父様にお願いして庭のお花を摘んで花瓶に入れてお部屋に飾ったりしていますから」

「悪いね、いろいろとやってもらっちゃって」

 愛は洋介に微笑んで応えると源三郎を探しに受付から出て行った。

 洋介が工作室に備えてある工具の修理を終えて時計を見ると、五時半を過ぎていた。慌てて外出の準備をして受付に行くと、そこには準備万端整えた愛が嬉しそうに洋介を待ち構えていた。


 つくば市の中心部から少し離れた閑静な場所にある『FUGU』の駐車場に車を止め、店に入ったのは六時を少し過ぎていた。店名にアルファベットが使われていたので、西洋風の店構えを想像して出かける前から興味津々であったが、どう見ても純和風の雰囲気が漂っていた。

「あのー、予約をお願いしておいた神尾ですが……」

「いらっしゃいませ。フグコースをご予約頂いていた神尾様ですね。お待ちしておりました。こちらにどうぞ。ご案内致します」

 和服を着た五十歳くらいの仲居が通してくれたのはせいぜい四人くらいしか入れないような小さな座敷の個室であった。洋介には店全体が随分と静かなように感じられた。


 おしぼりとお茶を持ってきてくれた仲居に、予め用意してきた最初の質問をした。

「この店はどうして『FUGU』というローマ字の名前にしたんですか?」

「店主がここに店を出す時、ここは筑波研究学園都市だから外国の方も多くなるんじゃないかと考えたようです。そんな人たちが沢山フグを食べに来てくれるようにと願って、ローマ字にしたということです」

「ああ、そうだったんですか。流石さすが研究学園都市にあるお店ですね」

「いえね、開店してみると、来て頂くお客様は日本人の方が圧倒的に多くて、思ったほど外国の方は来ていただけてないようです」

「韓国や中国ではフグを食べるということを聞いたことがありますが、それ以外の国ではあまりフグを食べる習慣がないのかも知れませんね」

「そうなんでしょうかね」

 仲居は笑いながら部屋を出て行き、お通しと前菜をお盆に乗せて戻ってきた。


「お飲物は何になさいますか?」

「愛ちゃんはどうする?」

「そうですね……、ジンジャエールありますか?」

「はい、ございます。」

「それじゃ、僕も同じものにしてください」

「かしこまりました。それではジンジャエールを二本お持ち致します」

 仲居が飲み物とグラスを運んできて、テーブルに置くのを待ってから洋介は質問を続けた。

「あの中毒事件以来、お客さんが減ってしまったんですか?」

「はい。事件が新聞に載ってからお客様がめっきり少なくなってしまいました。本当に報道って怖いですねえ」

「それで、今日も何となくひっそりしているんですね。店主の方も怒っておられるんでしょう?」

「ええ、本日はお客様方の他に二組しか予約が入ってないんです。店主は、こんなことになったのは警察がしっかりとした捜査をしないからだって、大変怒っているんです。私たちもビクビクしながらお仕事をさせて頂いております」

 苦笑いのような表情を浮かべて仲居は下がっていった。


 しばらくすると、薄く切った透明感のあるフグ刺しが白地に青の模様が入った平べったい大皿の上に載せられて運ばれてきた。

「うわー、綺麗で美味しそう!」

「二、三枚箸ですくい取って小ねぎをくるみ、紅葉おろしとポン酢にからませて食べてください。この後はフグちりになりまして、その次はフグ白子をお出しすることになります。白子はフグの唐揚げに変えることもできますが、いかがいたしましょうか?」

「愛ちゃんはどうする?」

「神尾さんはどうするのですか?」

「私はもちろん、白子ですよ」

「それじゃ、私も白子にチャレンジしてみます」

「はい、分かりました」

「ところで、あの中毒事件で亡くなった人は以前からこの店を利用していたんですか?」

「そんなに数は多くないと思いますけど、何回かは来られたことがあります」

「常連さんでもないのに、よく覚えておられますね」

「あの亡くなった方はいろいろとうるさいお客様だったので、覚えてしまったんです」

「ああ、そうだったんですか。どんなことにうるさかったんですか、そのお客さんは?」

「お料理や特注された酢の物をお出しするタイミングにクレームを付けておられました。それから酢の物の材料にも文句を言われたこともあります」

「そんな細かいことまで気にするんですか、その人は?」

「ええ、そうなんです。その上、私たち仲居に対して凄く怖い顔で睨み付けるので、あのお客様が来られると皆怖がってできるだけ近づかないようにしていました」


「皆さんの中で特に酷い目に遭った方はおられるんですか?」

「仲居の順子さんなんて、あのお客様にネチネチとクレームを長い時間付けられて泣き出してしまいました」

「どんなことをしてそんなことになったんですか?」

「一年ほど前にあの亡くなったお客様の何かのお祝いがこの店であったんですよ。その時、あのお客様から料理を出す順番についてクレームがつけられました。その時直接文句を言われたのが料理を運んでいた仲居の順子さんだったんです。散々お小言を聞かされた後でようやく解放された順子さんは店主に事情を話し、店主とあのお客様の下の人とが話し合ってその場は何とか収まったんです。ここの店主は一本気な人なので、最初に対応した順子さんがこの店の方針をしっかりとお客様に伝えなかったからこんなことになったんだって叱ったんです。順子さんは随分としょげていましたね」

「その順子さんの姓は何というんですか?」

「『しらかた』さんです。『白い』と言う字に方角の『方』と書きます」

「そうですか」

 仲居は頭を下げると口に手を当てながら、おしゃべりし過ぎた自分を戒めるような格好で戻っていった。


「愛ちゃん、今日は存分にフグ料理を堪能してくださいね。それでは、日ごろの愛ちゃんの筑波ホビークラブに対する貢献に感謝して、乾杯!」

 愛は洋介の動きに合わせて自分のグラスを上に掲げてから、ジンジャエールを美味しそうに飲むと、早速ふぐ刺しを三枚ほど掬い上げ、仲居の言った通りにして口に入れ、目を瞑って味わった。

 暫くして仲居がフグ白子を運んできた時、再び洋介が訊いた。

「このお店ではタラバガニの酢の物はよく出されるのでしょうか?」

「コース料理のメニューに入っている訳ではありませんが、お客様が注文されればお出ししております」

「そうですか。この前騒ぎがあった時もタラバガニの酢の物を出されましたよね」

「はい、出しました。あのお客様はタラバガニの酢の物に関して特にうるさかったので、よく覚えております」

「その時、何か変わったようなことがありませんでしたか?」

「変わったことですか……。さあー、心当たりはありませんけれどねー」

「そうですか。それでは、あのお客さんが倒れた時、お店の人たちはどんなふうでしたか?」

「私はお座敷の近くにおりましたので、直ぐに店主に報告しました。店主と調理場の人たちが座敷に駆けつけ、様子を見ていました。救急車が来てあのお客様が運び出された後、店主が隊員から何か言われていましたが、私にはよく聞こえませんでした」

「店主の方は直ぐにフグ中毒だと分かった様子でしたか?」

「お客様の症状がフグ中毒のような状態でしたので、店主は非常に不安そうな顔をしておりましたが、『俺は絶対に毒のある部分など客には出してない』と何回も言っておりました」

「そうですか。どうも有り難うございました」

 仲居が引き返すと洋介は愛に言った。

「さあ、これだけ訊ければ十分でしょう。後は鹿子木さんにお任せすることにしましょう」


 愛を家まで送った後、ホビークラブに戻った洋介は直ぐに鹿子木に電話した。

「ああ、鹿子木さんですか? 実は今日早速あのお店に行ってきたんですよ」

「そうでしたか。それで何か収穫はありましたか?」

「あの事件が報道されてからお客さんがめっきり減ってしまったって嘆いていましたよ」

「そうなんですよ。あそこの店主は私の顔を見ればいつもそんなことばかり言っています。客が減ったのはまるで警察のせいみたいに」

「ふふふふ、そう考えたくもなるでしょうね。それでね、料理を運んでくれた仲居さんに話を訊いたんですが、あの店では以前、港北さんとちょっとしたトラブルを起こしていたようです」

「えっ、そんなこと訊き出せたんですか? 警察には、港北はうるさくて嫌な客だったとしか言ってくれなかったのに、神尾さんには何でも喋っちゃうんですね」


「一年くらい前に港北さんのお祝いが、多分副所長就任祝いだと思いますけど、あの店で行われたようです。その時、料理を出す順番について港北さんからきついクレームが出されたようです。担当していた仲居の白方順子さんは泣き出してしまったそうです。その場は店主と港北さんの下の人と、多分落合室長だったんでしょうけど、二人で話して何とか収めたようですが、後でその仲居さんは店主に叱られてしまったそうです。だからその仲居さんは港北さんのことを恨んでいたかもしれないですね。いくら何でも、その仲居さんが犯人だと思うのは早計でしょうが、一応状況を確認されておいたほうがよいのではないでしょうか」

「なるほどね、分かりました。明日にでも私があの店に行ってその白方という仲居に訊いてみましょう。有り難うございました」


 翌日、洋介がそろそろ昼飯でも食べようかと思っていたところに鹿子木から電話があった。

「早速、あの店に行って来ましたよ」

「いつものことながら、鹿子木さんはやることが早いですね」

「白方順子という仲居に会って話を訊きました。確かに港北にはずいぶんと酷いことをされたので、恨んでいたようでした。それで、彼女がフグの毒を含む内臓などを港北の食べた料理に入れた可能性について訊いてみたんですけどねー、彼女は白ですね」

「白と思われる理由は何なのですか?」

「先ず、フグの内臓など毒を含む部位は店主がフグをさばく時に直ぐに鍵のかかる容器に入れて管理しているので、仲居などが手を出せる状況にはないのです。それと、先日港北が亡くなった日に、あの仲居は親戚の通夜が実家の大子町の方であったので、店は一日休みを取っていたんです。一応裏は取ってあります。大子からつくばまでは結構遠いので、通夜が終わってからでは宴会に間に合いませんからね」

「そうですか。どうも白方という仲居さんは事件とは関係ないようですね。しかし、港北さんという人は飲食店の仲居さんにまで恨まれていたんですね」

「本当に酷い奴ですよ、あの男は」

「つまり、港北さんという人は研究所の内部に留まらず外部の人間にまで恨まれていて、港北さんを殺す動機を持っている人は沢山いるかもしれないということですね」

「確かにそうですね……。食中毒と殺人の両面でこの事件を追いかけていくしかないですね」

 ちょっと気合いの入ったような声で洋介に応えてから鹿子木は電話を切った。


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