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24 伝説

『今、ショッピングモール1階、広場の隅にいる。助けて』


 由香と瞳の二人にメールを送ると、私はまた一人ですすり泣いていた。最上さんの爆弾発言で恥ずかしくなった私は、慌てて店を飛び出して、一人泣いていた。

 初めて好きになった人が……実は女で勘違いしてただけだなんて……。こんなのあんまりだよ。酷過ぎるよ。神様なんていないんだ。今すぐあのアドベントカレンダーを燃やしてしまいたい。

 私の24日間のときめきを返せ!


 私はこの世の終わりのような気持ちで泣いていた。きっと今頃由香と瞳は幸せなクリスマスを送ってるのだろう。それなのにこんなメールしたら心配させちゃう……。

 ごめん。でも一人でいるのは辛すぎるの。


「「真耶」」


 由香と瞳が同時に私の名を呼ぶのが聞こえた。


「由香……瞳……。ごめん……。心配させて」


 私は二人に抱きつきながら泣きじゃくって説明した。最上さんが実は女性だったと言う事を。


「それは……御気の毒様だ」

「あまりに可愛そうだわ」


 二人とも私の味方になって、ちゃんと話を聞いてくれた。ワンワン泣いて、思う存分泣き言を言ったら、少しだけすっきりした。


「来てくれてありがとう……。二人の邪魔しちゃってごめんね」


 そう言うと、由香と瞳は複雑な表情を浮かべた。


「真耶……私……許せない」

「瞳?」 


 瞳は怒りながら涙をぼろぼろ流した。


「医大生なんて嘘で本当はニートだったわ。しかも二股かけてて、もう一人の女と修羅場になったの」

「うわ……。それは酷過ぎる……」


 いつも綺麗にお化粧してる瞳の顔がぐちゃぐちゃになるくらい泣いてた。瞳も結構本気で好きだったんだ。それなのに、あまりに酷過ぎる話だ。


「真耶……」


 由香が後ろから私に抱きついて、すすり泣いた。


「どうしたの? 由香」


 ぽつぽつと由香が呟きながら語った。


「みんなでカラオケ言ったら……。途中でアイツと他の女子マネが、二人で出て行って……。二人は付き合ってたんだ。みんな知ってた。知らなかったのは私だけだった……」

「そ……それはショックだったね」


 自分だけが知らなくて、一人で舞い上がってたなんて……。そのショックは今の私には十分すぎるほどわかった。


「どうしてこんなに、みんな幸せそうなクリスマスなのに、私達はこんなに泣いてるのかな……」


 目立たない隅の方で私達は泣いているが、ショッピングモールの中は幸せそうなカップル達が、たくさん歩いていた。


「いいな……」

「そうね……私達も非リアだもんね。リア充が妬ましいわよね」

「じゃあ……リア充を殴りにいこう……」


 私と瞳が驚いて由香の方を見ると、由香がスポーツバックから金属バットを取り出した。


「腹が立ったから……、他の野球部員から奪ってきた……。二人も……」


 なぜか三本分用意された金属バット、これで本気で殴るの……。


「いいわねぇ。ストレス発散! あ……でも私達だってばれない様に、変装も必要じゃない? 確かまだあの雑貨屋開いてるはず。買いに行くわよ」


 さっきまで泣いてたはずの瞳まで、なぜかノリノリで由香の案にのる。二人に連れられて、ショッピングモールを歩くが、確かにカップル達を見ると、メラメラ、イライラしてきた。

 ただの八つ当たりかもしれないけど……。


 神様なんていない。奇跡も占いも信じない。私達は私達の生き方を貫く。

 二人の親友と手を繋ぎながら、少しだけ前を向いて歩き出す。




「君は俺が守るよ。世界で一番大切な人だから」

「嬉しい……。私も大好き」


 そんないちゃいちゃ台詞で歩いていたカップルが、夜の公園でふと異変に気づいた。向こうからあきらかにおかしい3人が歩いてくる。

 服装や体型から若い女の子だろうと、すぐにわかった。……。しかし。


 顔には鼻眼鏡やら、サンタ変装やら、トナカイのかぶり物やら。いわゆるパーティー用のウケ狙いグッズで顔が隠れて見えない。そして手には金属バット。


「リア充死すべし……」

「「リア充死すべし」」


 3人が呪いのような言葉を吐きながら、金属バットを振り上げる。まがまがしいオーラが漂い、本気で殴られそうな気迫が感じられた。


「うわぁ!!」


 驚いた男は、あろう事か彼女を盾にして背中に隠れた。


「ちょっと!! さっき「俺が守る」とかカッコいい事言ったのに、なんで私を盾にするのよ!」

「だって怖ええんだもん」


「根性無しのクズ男」

「なんだと!」


 三人の少女達の事など忘れて喧嘩を始めるカップル。それを見て三人は覆面の下で笑い、ガッツポーズをあげた。


「任務完了。次に行く……」

「了解!」


 三人は本気で殴りはしなかった。でも殴り掛かればびっくりして、情けない男は彼女を置いて逃げ出したり、彼女を盾にしたり。そんなカップルなどすぐに破局するだろう。


「私達に立ち向かう勇気がある、本物のリア充だけが生き残る権利があるのよ」

「クリスマス限定の即席カップルなんて許さない」

「リア充死すべし」


 24日の夜。一つの街に謎の少女3人組が現れた。おかしな覆面姿で、金属バットを振り回し、カップルを襲うこの恐怖のリア充撲滅隊。この「三賢者」達に立ち向かい、真に恋人を守れたカップルは、末永く結ばれるという。一つの伝説が作られた。

 ちなみにその少女達の正体は、誰も知らない。



初めからこのラストを盛り上げる為に、甘酸っぱい女子高生書きました。

石……投げないでくださいね。


「百合」に「目覚めて」クリスマスを混ぜたらこうなりました。

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