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 朝目が覚めて、一番に一輪差しの花瓶を見た。その隣に置かれた透明の箱の中には、綺麗なピンクの薔薇が入っていた。


「これプリザーブドフラワーって言ってね。本物の花を加工して、ずっと枯れないで飾っておける様にしたものなんだよ。良かったら貰ってくれないかな?」


 そう言って最上さんがプレゼントしてくれた。プリザーブドフラワーって買うと結構高級だったりする。永遠に枯れない薔薇。それは永遠の愛のようで、それを貰えた事が嬉しすぎて、昨日は良く眠れなかった。

 腕を振り上げた男を止めた、最上さんはとても格好良かった。そしてあの最上さんに感謝してもらえた。勇気を出した自分を褒めてあげたい。


 今日もまたアドベントカレンダーを見る。運命のイヴの日まであと1週間。昨日のあの事件のおかげで、ずっと最上さんとの距離が縮まった気がする。……大丈夫。神様は私についている。

 今日の分のカレンダーをめくる。


「信じる物は救われる」


 そう書かれていた。本当はこれは主イエスを信じるものに救いがある。そういう言葉だと知っている。でも私には別の意味を感じた。そっと薔薇の入った箱を手に取って、微笑む。


「信じても……いいよね」



 学校についてもまだ昨日の出来事が頭の中でリフレインして、ぼんやりしてしまう。ああ……最上さん、カッコイイ……。


「真耶……大丈夫か? 熱でもあるのか?」


 由香がそっと私の額に手をのばして熱を測っている。


「恋の病っていうやつなんじゃないの? また何かあったでしょう……。白状しちゃいなさい」


 瞳が好奇心満々で目を輝かせて私に詰め寄る。私もあまりに嬉しくて、誰かに言いたくて仕方がなかったから、昨日の事を二人に話した。


「すごい……。真耶頑張ったな」

「なに、その少女漫画展開! もう恋愛フラグたってるじゃないの」


 二人とも大興奮で、大喜びしてくれた。一緒に喜んでくれる友達がいるのが嬉しい。


「あのね……。私、イヴの日の夜。最上さんに告白しようと思うんだ。仕事が終わる頃にあの店に行ってみようと思うの」

「頑張れ真耶……検討を祈る」

「私の選んだ勝負服で、最高に可愛く告白してきなさい」


 二人は力強くエールを送ってくれた。二人の言葉が私に勇気をくれる。来週。頑張る。


「あ、あのね。親には、イヴの日は由香と瞳と遊ぶって言ってあるの。何か聞かれたらお願い」

「大丈夫……任せなさい。ふふふ。それにね……まったく嘘でもないわよ」

「そうだな……」


「どう言う事?」


 私が聞くと瞳は嬉しそうに話した。


「私ね、あのショッピングモール内のレストランでデートする事になってるの。近くから、真耶の事応援してるから。真耶も私にエール送ってね」

「あそこにそんなに高級なレストランとか、ないけどいいの?」


「医大生って忙しくてバイトもできないし、お金あんまりないんだって。でもいいの。ファミレスだって、恋人と一緒なら最高のクリスマスデートよ」


 瞳はうっとりしながらそう言った。玉の輿狙いのミーハーと思ってたけど、案外本気で彼の事が好きなのかもしれない。そんな夢見る乙女な瞳は、いつも以上に可愛かった。


「私も……イヴの日はあのショッピングモールに行く。昼間野球部の練習で、夕方からみんなであそこの、カラオケ屋に行く……みんなでクリスマス祝いする」

「もしかして……あの彼も一緒?」


「うん……。途中で二人で抜け出して、告白する」

「ついに告白するんだね……頑張って」


 いつもクールな由香が、恥ずかしそうに微笑んだ。グループデートから二人だけ抜け出して、こっそり告白……ああ。やっぱり少女漫画の世界だ。由香ほどの美少女に告白されたら、絶対にOKするに違いない。


 私は二人の親友の幸せを本当に心から祈った。


「みんな……イヴの日は頑張ろうね」

「そうね。私達のリア充記念日よ」

「うん……。みんなで幸せだ」


 それからしばらく、3人で幸せなイヴの過ごし方をあれこれ話した。どうやって告白するかとか、どんな服を着ていくとか。いつまでも話し続けたい、女の子同士の恋の話。

 予鈴のチャイムがその話を打ち切った。

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