1.
「うぇ・・・っ、ちょ、まだ来るの・・・かよっ」
息は荒くなっているし、足はもうガクガクと震えてしまっている。
それでも・・・それでも、桃山正志は走っていた。走りたくない、走りたくないけれど。逃げなくちゃ。
・・・
学校帰り。
好きな子は仲良く女の子同士で帰っていたため声すらかけられなかった。
寂しく、いつもどおり人通りの少ない道を歩いて帰ろうとした時、だ。
それは突然現れた。
どろどろに溶けている緑色の、体。かろうじて人間のような体にも見えたが、その溶けた姿はあまりにも醜く吐き気を催した。
それがいきなり追いかけてきたのだ。逃げなければやられる・・・!そう悟った俺の体は勝手に動いていた。
なんなんだ、あの化け物は・・・!?一昔前の映画に出てくる宇宙人みたいな・・・!体・・・・・・・!
時々小石を投げつけると体に穴が開いて、「倒せたか・・・?」と思ったのだが。すぐに周りの肉で塞がれ、穴は消えてしまう。
やばい、これはやばい。
俺はただひたすらに逃げた。だがそれにも終わりが見えてきていた。
緑色のそれが、速度を急激にあげたのだ。
追いつかれる。殺される―――!!!そう、思った。
ありがとうお母さん産んでくれて。料理上手くなれよ。
ありがとう父さん。「父さんの会社が倒産した~」とか言って家の中を涼しくしてくれたけど、まじで大丈夫なの?
ありがとう妹。朝起きて真っ先にされる目潰しが痛くて痛くて仕方ないからやめてくれよ。
ありが・・・・
「・・・って、あれ?」
緑色のそれは、こなかった。
単純に、勝ったのか・・・とも思ったが、どうやら違うようだ。それは溶けて蒸発していた。
「・・・どういうこと・・・・・?」
「いやぁ・・・間に合ってよかった、良かった」
唐突に声がして、その方向を見る。どこかで聞き覚えが、あるような・・・気が・・・
その声の主は、俺と同じ中学校の制服を着ていた。そして、いつも笑っているその顔。こいつは、昔から・・・昔から俺が、大嫌いな・・・
「・・・太郎・・・!」
「うん、そうだよ桃山くん。元気?」
――鈴木太郎。小学校からの幼なじみだった。
鈴木太郎って日本男児~~~~って言う雰囲気だよな