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プロローグ ~ある日、路地裏にて~

 ……もしもし、お嬢ちゃん。あたしの懐からスリ取った財布、銅貨一枚たりとも残さず返してちょうだいね。

 12、3歳ってとこかしら? ふふ、あたしは人を見るのにかけちゃぁ、ちょっとばかり自信があるのよ。……まぁ自慢話は置いとくとして。

 その歳の割には慣れてるみたいね。とぼけなくてもいいのよ、スリよ、スリ。

 あなた、ストリート住まいでしょ。そうじゃなきゃよっぽどワルに生まれついてない限り、その歳でこんなにスリが上手かったりしないわ。ま、あたしはこのくらい朝飯どころか朝起きる前だって気づいちゃうけど……おっと、また自慢話になっちゃうわ。我慢、我慢。

 そうよここから本題。あなた、このままスリで生活していくつもり? ……何? 小さい兄弟がたくさんいて、普通に働いても養えない?

 残念ながらあたし達の業界は、そんな事情に斟酌してあげらんないのよね。……あら逃げちゃダメよ。顔はしっかり覚えてるから。

 しかしようやく気付いたみたいね。そう、盗賊ギルドよ。掟を破るととっても怖い怖い盗賊ギルド。

 あら、そんな怯えた顔しないで。もしあなたの腕が信じられないくらい良くて、あたしが見事に財布を取られていたら、まぁちょっとばかり痛い目見たかもしれないけど……よかったわね、未遂よ。これまでの犯罪歴も、あたし達が気付かなかったんだから不問にしてあげる。

 その代わり。ちゃんとギルドにいらっしゃい。取って食いやしないから。まぁちょっとばかり、収入をギルドに納めなきゃいけないわね。でもあなたくらいの子どもが普通に働くより全然稼げるでしょう? もっと稼ぎたければ、仕事の紹介もするし技術だって教えてあげる。

 まぁ、立ち話もなんだから詳しい話はギルドでね。あたしこれから家に帰るけど――盗賊ギルドは夜の客も多くてね、夜勤よ夜勤――明日はいるからいらっしゃいな。

 場所は旧市街地の酒場で、『銀の箸亭』ってとこね。そこのカウンターに座って、『炭酸と砂糖を抜いたサイダーを』って注文するの。ただの水じゃないかって? その通りよ。

 一口飲んで『ただの水に金なんか払えないね』って言えば、マスターが奥に通してくれるわ。あ、他の店でやったら叩き出されるか悪ければ袋叩きだから、ちゃんと店の名前は確かめなさいね。

 それじゃ、銀の箸亭の奥で会いましょう。それと、これは今日盗みをしなくてもいいように。出世払いよ覚悟してちょうだい。

 それじゃ、またね。

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