第3小節
一人の人だけをこんなにも愛しく思えるんだ、ってあなたが教えてくれたんだよ?
‐第3小節‐
定期演奏会も終り、特にヒロトくんとの印象深い出来事もなく、日々は過ぎていった。
ヒロトくんは、もう既に私の中で苦手の部類に位置付けられていたから、仲良くなる努力なんてしてなかった気がする。
それに、その頃の私には気になる男の子が二人もいた。
一人は中学校で同じ委員会だった一個下の後輩。
もう一人は春休みに塾の講習で見付けた同い年の男の子。
私の頭の中はその二人のことで一杯だったから、ますますヒロトくんの事考える隙間なんてなかった。
そのときの私には男と女の友情なんて考えられなかったし。
私は中学の卒業式を目前に控え、後輩にメールで告白をした。
一週間後、返事が来て、フラレた。
新しい恋をしようという時に出会った同い年の爽やかボーイ。
産まれて初めての一目惚れだった。
でも、初めはやっぱり後輩のことが忘れられなくて、毎日、会いたい、会いたい、って思ってた。
何もないまま過ぎていったヒロトくんとの日々だったけど、ある日、二人になる機会ができてしまった…。
学校が休みの時に一日部活があって、私は迎えの車を待っていた。
初めは吹奏楽部の友達がいっぱいいた。
でも、ついには何故だか二人になってしまって…。
「帰っていいよ?こんな二人でいるとこ見られたら、付き合ってるって思われちゃうよ」
私がそういうとヒロトくんは
「別にそういう風に思われてもいいよ」
なんて言った。
心の中で、私は嫌なの!!って訴えた。
だって。
もし、今気になってる同い年の男の子、ハセくんにみられたら?
私には彼氏がいるって噂がハセくんの耳に入ったら?
……というか、ヒロトくんが私の恋人だと思われること自体、嫌だった。
そんなの口に出せるわけもなく二人で話していた。
そして話の流れで恋愛経験の話になってしまっていた。
ヒロトくんは付き合ったことがあるって言ってた。
自然消滅だったけどって。
こんなヒロトくんでも付き合う人がいるのか、と思った。
どこが良いんだか、気が知れない、とも。
そのうち迎えが来て、ヒロトくんと別れた。
そういえば、コレが初めてだった。
ヒロトくんとまともに長く会話をしたのは。
本当に、未来ってわからない。
こんなこと、今の私には嬉しいばっかりなのに。
ヒロトとアスカの恋は本当に少しずつしか進みません。初めはすれちがってばかり。私は運命を信じているのですが、人はみんな運命を辿って生きているのだと思います。アスカがヒロトを好きになるのもまた運命なのだと思います。