第11小節
あなたは、人と人とを比べるような人じゃない。
でも、私は無意識にサヤカちゃんと自分を比べてた。
何度も、何度も。
あなたはサヤカちゃんのどこを愛していたのだろう、と。
‐第11小節‐
会場へはバスで移動した。
車で1時間近くかかる道のり。
その移動中、私はヒロトくんの比較的近くに座っていた。
だからよく覚えているのだけれど、この時ヒロトくんは車に酔ってしまっていた。
ヒロトくんは元々酔いやすいらしい。
それに緊張と疲れからくるものでもあったんだと思う。
私はまたいつものように、弱っちぃなぁ、と思ったのだけれど、それを知ったサヤカちゃんは……泣いてしまったらしい、と友達に聞いた。
私は、そんな事で泣かない。
むしろ、そんなの格好悪い、と思ってしまうような奴だ。
でもこの時、サヤカちゃんを格好悪いと思いつつも、私は愛の強さを感じたの。
泣くほど心配な気持ちって、どんな気持ちなんだろう……思いを馳せた。
その時の私に分かるはずもなく、結局、今でも、私には分からないのかもしれない。
会場に着くと、トラックから楽器を下ろし、少しの空き時間のあと、すぐに楽器の準備をしてステージに向かう。
ステージに上がると全てがあっという間に終わってしまう。
後は結果を待つばかり……。
全ての団体が演奏を終え、閉会式が始まる。
私は地区大会の時のようにステージで一人結果を待つ。
この上の大会に進むには、まず金賞であること。
それから改めて、次に行ける団体が金賞の団体の中から読みあげられる。
いよいよ私達の高校の番が来る。
「……高校」
緊張の一瞬。
「銀賞」
……夏が、終わった。
私には、来年があった。
でも、私は部長だった。
泣くまいと、最後まで気丈に振る舞った。
意気消沈している部員にかける言葉が、何も見付からなかった。
中学の時から何度も経験している悔しさだったけど、やっぱり耐えきれない。
顧問の先生のところに行くとやっぱり泣いてしまった。
家に着くと堰を切ったように涙が溢れた。
私はなにかけじめをつけたくて、この悔しさを来年までしっかり心に刻みたくて。
だから、2年間伸ばしていた髪をバッサリと切った。
ある先輩には
「遅いよ」
と言われてしまった。
申し訳なかった。
だからこそ、来年こそは、と意気込んだ。
部長になってから、本当に短い一年だった。
心残りが多すぎる一年だった。
ここで吹部の活動は一区切り。
そしてまた新しい吹部が始まるのだ。
私とヒロトくんの関係も、やっと一歩ずつ進み始める。
私には私のいいところがある、って思うよ?
でもね、あなたが一度でも愛していたんだって考えると、やりきれない気持ちになるの。
過去は変えられないなんて承知の上。
でもしょうがないじゃない。
消えない事実だからこそ、私には忘れられないの。
ずっと私を縛り続けたの。
まだアスカはこのとき、ヒロトは好きじゃないんです。でも気付いてないだけなのかなー?御想像にお任せしましょう。秋はラブソングが多くて何やら辛いですねー。