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想ヒ音  作者: 鈴木 アル
12/14

第11小節

あなたは、人と人とを比べるような人じゃない。

でも、私は無意識にサヤカちゃんと自分を比べてた。

何度も、何度も。

あなたはサヤカちゃんのどこを愛していたのだろう、と。




‐第11小節‐




会場へはバスで移動した。

車で1時間近くかかる道のり。

その移動中、私はヒロトくんの比較的近くに座っていた。

だからよく覚えているのだけれど、この時ヒロトくんは車に酔ってしまっていた。

ヒロトくんは元々酔いやすいらしい。

それに緊張と疲れからくるものでもあったんだと思う。

私はまたいつものように、弱っちぃなぁ、と思ったのだけれど、それを知ったサヤカちゃんは……泣いてしまったらしい、と友達に聞いた。



私は、そんな事で泣かない。

むしろ、そんなの格好悪い、と思ってしまうような奴だ。

でもこの時、サヤカちゃんを格好悪いと思いつつも、私は愛の強さを感じたの。

泣くほど心配な気持ちって、どんな気持ちなんだろう……思いを馳せた。

その時の私に分かるはずもなく、結局、今でも、私には分からないのかもしれない。



会場に着くと、トラックから楽器を下ろし、少しの空き時間のあと、すぐに楽器の準備をしてステージに向かう。

ステージに上がると全てがあっという間に終わってしまう。

後は結果を待つばかり……。



全ての団体が演奏を終え、閉会式が始まる。

私は地区大会の時のようにステージで一人結果を待つ。

この上の大会に進むには、まず金賞であること。

それから改めて、次に行ける団体が金賞の団体の中から読みあげられる。

いよいよ私達の高校の番が来る。



「……高校」



緊張の一瞬。



「銀賞」



……夏が、終わった。



私には、来年があった。

でも、私は部長だった。

泣くまいと、最後まで気丈に振る舞った。

意気消沈している部員にかける言葉が、何も見付からなかった。

中学の時から何度も経験している悔しさだったけど、やっぱり耐えきれない。

顧問の先生のところに行くとやっぱり泣いてしまった。

家に着くと堰を切ったように涙が溢れた。



私はなにかけじめをつけたくて、この悔しさを来年までしっかり心に刻みたくて。

だから、2年間伸ばしていた髪をバッサリと切った。

ある先輩には

「遅いよ」

と言われてしまった。

申し訳なかった。

だからこそ、来年こそは、と意気込んだ。



部長になってから、本当に短い一年だった。

心残りが多すぎる一年だった。



ここで吹部の活動は一区切り。

そしてまた新しい吹部が始まるのだ。

私とヒロトくんの関係も、やっと一歩ずつ進み始める。




私には私のいいところがある、って思うよ?

でもね、あなたが一度でも愛していたんだって考えると、やりきれない気持ちになるの。

過去は変えられないなんて承知の上。

でもしょうがないじゃない。

消えない事実だからこそ、私には忘れられないの。

ずっと私を縛り続けたの。

まだアスカはこのとき、ヒロトは好きじゃないんです。でも気付いてないだけなのかなー?御想像にお任せしましょう。秋はラブソングが多くて何やら辛いですねー。

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