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魔王の花嫁  作者: 真麻一花
本編
9/65

9 師匠5


 フリーシャは乗ってきた馬をつなぐと、見慣れた扉を静かに叩く。


「師匠、突然すみません」


 小さく声をかけると、すぐに扉が開いた。


「来ると思っていた」


 アトールが気遣うようにわずかに微笑んだ。

 家の中は明かりが一つあるのみで、ひどく暗い。昼間には見慣れていた部屋も、夜には違う表情に見える。それとも、自分の気持ちが沈んでいるせいか。

 それでも、彼の顔と声にフリーシャは安堵するのを感じていた。

 フリーシャはアトールを見上げた。何もかもを見通しているような表情に、覚悟を決めて尋ねる。


「……もう、ご存じなのですか?」

「ああ。魔王が来たのだろう?」


 この人は、どれだけのことを知っているのだろう。

 フリーシャは、何も気付かなかった自分のふがいなさに、唇を噛んだ。

 家に入るとテーブル脇にある、座り慣れた椅子に促されるまま腰を下ろし、フリーシャは息を吐く。向かい合ったテーブルの向こうに、アトールもまた、腰を下ろした。


「師匠は、魔王が来たことを感じたんですね……。私は、感じる事すら出来ませんでした。姉様がさらわれたのに、姉様を守るための魔術さえ反応しませんでした」

「……それは、しかたがないかもしれないね。相手は魔王だ。魔力で敵う者がいないからね。それに、俺が魔王が来たのを知っているのは、感じたからじゃない。魔王に直接釘を刺されたんだ。何があっても手出しをするなとね」


 その言葉にフリーシャはがっくりとうなだれる。

 まさか、魔王が釘に刺しに来るとか、師匠何者……。


「えぇ……当てにしてたのにぃ……」


 アトールはアトールで、そんな弟子の姿を見ながら「あれ?」と首をかしげた。


「って、フリーシャ、ちょっと待て。悪い、大事なところを聞き逃しそうになっていた。姉様とは、マーシア様のことか? 彼女がどうかしたのか?」

「魔王にさらわれたんです。花嫁にすると」


 アトールが驚いた顔をした。

 その反応に、今度はフリーシャが驚く。

 招き入れられたときのアトールの反応に、彼は全て気付いているのかと勝手に思い込んでいたが、どうやらそうではないらしい。


「師匠こそ、なぜ私が来ると思ったんですか? それに、なぜ魔王がわざわざ師匠に釘を刺しに来るんですか。師匠は、何が起こったと思っていたんですか?」


 詰め寄るフリーシャにアトールが困ったように頭をかく。


「俺は、てっきり、おまえのところに行ったんだと思ったんだ。人間にその魔力ははっきり言って異常だ」

「師匠に言われたくありません」


 フリーシャのツッコミを意に介さず、アトールは当然とばかりに断言した。


「その異常なおまえに、何か話しがあるんだろうと思ったんだ。」


 なんか失礼なことを言われた気がしながら、フリーシャは詳しく話を聞く事にした。


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