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魔王の花嫁  作者: 真麻一花
本編
53/65

53


 フリーシャは幸せに浸りながら、今までの数日を思い返す。


 姉様は、今頃グライデルについたかしら。それとも、まだマージナルかしら。


 数日前、マーシアは、呪いが解けて人間に戻った白竜の王子と共に魔王の城を去った。

 美しいマーシアと、想像以上に美形だった白竜の王子の並んだ姿を思い出して、フリーシャのほほがゆるむ。


 フリーシャは白竜の王子が好きだった。出会って数日だけの付き合いだったがマーシアと一緒になってくれたら……お兄さまになってくれたら、と、本当に願っていた。思いがけず、その願いが叶いそうで本当に嬉しかった。

 おそらく、近い内に二人は結婚するだろう。


 マージナルの第一王子となると、さすがにアトールの後押しがあろうともグライデルのような小国の姫では釣り合いが取れない。せいぜい寵姫として迎えられるのが関の山だ。

 ところが、マーシアはナイジェルの呪いを解くというとんでもない偉業を成し遂げたのだ。アトールでも、魔王でも解くことのできない呪いを。

 そして、この呪いを解くという事は、ナイジェルの正妃の座を約束するということと同義であった。

 それは、ナイジェルが呪いにかけられた時に、アトールがマージナル国王に約束させたことだ。

 誰であろうと、どのような人物であろうとも、呪いを解いた者をナイジェルの正妃に迎えること。それを受け入れることができなければ、マージナルは永遠にナイジェルを失うことになると、アトールの進言がされていたためだ。

 ナイジェルにかけられた呪いは、最も古典的で簡単な、そして、解くことがとてつもなく難しい呪いだった。


 醜く恐ろしい姿になってもなお、誰かを愛し、そして愛されたとき、口づけによって解かれる呪い。


 どこのおとぎ話だ、と、知った今なら笑ってしまいそうだが、もし解ける前に知っていたら、むしろ絶望しただろう。希望があるがために、絶望も大きい、ひどく残酷な呪い。


 故にどのような者であれ、ナイジェルの呪いを解いた者が正妃なのだ。

 それが、小国とはいえ、一国の王女であり、かつ、絶世の美女である。そして二人の愛は解呪によって証明されている。マージナルとしても、身元不明な女ではなく、れっきとした姫ともなれば願ったり叶ったり、というところかもしれない。


 そうはいってもマージナルとしては諸手を挙げて……とは行かないかもしれないが、それでも問題なく結ばれることだろう。

 出会ってから呪いが解かれるまでのほんの二、三日で、二人の間に一体どういうやりとりがあって、どういう交流があり、どうしてそんな事になったのか、フリーシャには分からない。けれど、とりあえずは結果良ければ全てよし、そんな事はどうでも良いことなのかもしれないと思っている。

 けれどいつか、照れずに話してくれるようになったら聞きたいな、と、未来に思いをはせた。


 そして、アトール。

 白竜の王子がマーシアを伴ってマージナルに帰るにあたり、魔王がペンダントを媒体に、アトールを城に呼び出してくれた。


「結構、これは疲れるんですけどねぇ」


 などと平気そうな顔をして影を飛ばしてきた。

 が、王子が人間に戻っていることに気付くとさすがに驚きで言葉を失っていた。しかし、そこは年の功なのか、早々に気を取り直すと、王子がマーシアの前でいつものように言い返さないのを良いことに、疲れるといったその口でさんざんからかい倒して遊ぶ余裕まで見せた。

 それもようやく飽きたところで、後のことにも話が及び、マーシアと王子のことは、アトールが上手く取りはからうよう、約束をしたのだった。



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