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永久の契約  作者: 由乃
2/15

2_ささやかな幸せを

わたしたちは早速夕食の支度を始めた。


由利恵とママが食器を用意する間にわたしはビーフシチューを作る。


ママは器用だけどなぜか料理だけは劇的に下手なんだ。


だからいつも簡単な下ごしらえだけ頼んで、それ意外は当番の子が作る。


由利恵はもともと料理が上手いから、当番が回ってきたときはわたしが練習もかねて調理をすることになってる。


「できたよー、由利恵。味見してみて?」


わたしが小さな器にとったビーフシチューをテーブルの上に置くと、由利恵が来るより早くルールシエルがすたっとテーブルに乗った。


「ルル?」


「あーーっ!!なんでルーが先なのぉ?!」


ルルは小さな舌でペロッとシチューを舐めると、ふむ、と頷きわたしを見る。


『美味しい。ちょうど良い味付けだよ』


「こらーっ!神無ちゃんはわたしに味見頼んだんだよぉ!なんでルーが味見してんの!」


『‥君が味見しなくてはならない理由なんてないだろ』


テーブルを拭いてたタオルを使って、ルールシエルをしっしと追い払うと由利恵はぷーっと頬を膨らませた。


「ルー生意気ぃ!!言葉はわからなくたってなんとなく言ってることわかるんだからねっ!神無ちゃんの料理の味見はわたしの仕事なの」


由利恵にルールシエルの言葉は解らないはずだから。


普通の猫みたいに“にゃーん”て鳴いてるようにしか聞こえてないだろうに。


なんとなくわかっちゃうなんて、逆に仲良いからなんじゃないかと思うのはわたしだけかな。


『カンナと同性の君が僕に嫉妬するなんて、実に愉快だよ』


ルールシエルはそう言って、すたんとテーブルから飛び降りた。


わたしは新しい器にシチューをとってルールシエルに敵意むきだしな由利恵がしゃべりだす前にずいっと渡した。


「はい、由利恵!味見よろしく」


「む‥はーい‥。うんっ美味しいよぉ。だいぶ料理うまくなってきたね神無ちゃん」


由利恵はにっこりと満足そうに笑うと、床から自分を見上げてるルールシエルを見下ろした。


わたしは2人の間に見えない火花が散ってるように思えた。


なんでこんなに2人は敵視しあってるんだろうか。


ルールシエルはいつも昼間から夜にかけて外に出てるから家にはいないけど、時々こうして早く帰ってくると飽きもせず由利恵と揉めている。



「「ご飯できたー??」」


お腹をすかせたみんながキッチンに入ってくると、由利恵とルールシエルの冷戦は終わりを告げた。


2人を呆れ半分で見てたわたしも最後の仕上げにかかった。





「それでは、いただきまーす」


ママの声がかかってわたしたちの夕食は始まる。


食事はみんなで摂るのが決まりみたいになってて、何個かのテーブルに別れて食べる。


ルールシエルは基本的に直接食器に口を付けて食べたりしない。


だからわたしが食べさせてあげてる。


わたしの膝に行儀良く座ってるルールシエルの口元に、小さく切ったビーフを持って行くと、これまたパクっとうまく食べるのだ。


好き嫌い無しに食べるルールシエルだけど、こんなにいろんなモノを食べて平気なのかと時々心配になる。


『美味しいね。味も良いけど、やっぱりカンナが食べさせてくれると美味しさが増すよ』


「ルルって大袈裟」


わたしがクスっと笑うと、向かい側に座ってサラダを頬張ってた由利恵が面白くなさそうに言った。


「なにぃ?神無ちゃんから食べさせてもらうと余計美味しい、とか言ってるわけぇ?」


あはは‥‥近い。


『この女子には僕の声が聞こえてるのかな?』


「や、聞こえてないでしょ?」


『‥思考を読まれてると思うと悲しくなるな‥。あ、カンナ』


「うん?ちょっ‥ん」


わたしを見上げて話してたルールシエルがいきなり唇付近を舐めてきてびっくりした。


「!!なにやってんのぉお!?」


由利恵がガタンと立ち上がったのと同時にルールシエルは涼しい顔をしてぴょんっとわたしの膝から飛び降りた。


『ごちそうさま。カンナの口元に付いたシチューは格別に美味だったよ』


「もう、ルル!」


「逃げるなぁルーっ!!」


流石に声を上げたわたしと、半分叫び気味の由利恵に背を向けたルールシエルは、長く綺麗な尻尾をふるんと一振りして部屋をでて行った。


「もう!あれは本当に猫ぉ??絶対わかっててやってるよねぇ?!わたしの神無ちゃんにキスしたぁ!許せないぃっ」


「キスって言っても口の端だけどね?」


「あははっ神無のファーストキスはルーになりそうね?」


「猫に神無ちゃんのファーストキス取られるなんてやだよぉ?!」


「まあまあ、由利姉落ち着いて?」


「相手は猫なんだからさ」


「あっはははっ!」


ママの爆笑と、由利恵を宥める姉妹たちの笑い声につられてわたしも声を立てて笑った。


わたしはみんなが笑ってられる空間を、幸せ、だと思った。

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