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エルディー・ルザ・メッチャツオイの初恋

俺、エルディー・ルザ・メッチャツオイはある人に恋をした。

現実では会ったことのない誰かに、恋をした。


「だーかーらー!俺は婚約者にしたい人の名前がリリアなのは確実なんです!」

「そのリリアという名前の令嬢がこの国には三人しかいないと言っているだろう!」

「全員違いますよ!!黒髪黒目の女です!!」

「そんな女性、リリア嬢の中にはおらん!!お前の幻想ではないのか?いいから別の女を探してこい!!」

「俺は別の人とは結婚したくない!!父上のバカァァアアアアア!!」


俺は父上の執務室を飛び出した。

俺はリリア以外とは結婚しない!!

絶対に結婚しないんだからなぁぁああああ!!

猛ダッシュで王宮を走っていると、足がもつれて倒れてしまった。


「いっててて……」

「何を見苦しい姿を晒してるんですか?エルディー兄様」


後ろを見ると、冷たい目で俺を見るセラフィーと、戸惑ったような顔をしているアルカがいた。

セラフィーは片足を突き出している。

足がもつれて転んだんじゃない!

セラフィーが足を引っ掛けてきたのかよ!!


「あ、兄上……。大丈夫ですか?」


アルカが俺に手を差し出してきた。

俺はその手を掴んで立ち上がった。


「ああ、大丈夫だ。すまない」


セラフィーは何もせずにずっと俺を冷めた目で見ている。


「おいセラフィー、危ねぇだろうが」

「何のことですか?」

「その足なんだ」

「ちょっとかかとが痒くて」

「言い訳下手すぎるだろ!!」


なんだよ、かかとが痒くて足突き出してましたって。

意味わかんねぇ。

セラフィーは俺に対して冷たい態度をとっている。

リディールやアルカに対しては普通なのに。

なんでか分からないとは言わない。

俺も昔はセラフィーに辛く当たってたし。


「で、なんであんなに泣き喚きながら走ってたんですか?」

「セ、セラフィー兄さん、ここは人目がありますし、続きは俺の部屋で……」


アルカがそう言うから周りを見てみたら、ちょっと騒いだだけなのに人が集まってきていた。


「なんてこった」


◇◆◇


「……なるほど、つまり兄上はその()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に恋をして、父上に婚約したいと申し出たけどそんな令嬢はおらず、他の令嬢を探せと言われて腹が立って執務室を飛び出して、()()()()()()()走っていたと」


色んなところに含みを感じるけどその通りだから何も言わないでおこう。

俺はアルカの専属執事が用意してくれた紅茶をすすった。


「でも、現実にいるんですかね。そのリリアって女性」


――目が覚めたらお前を探すからな

――ええ、待ってるわ


「ああ、存在してる。俺を待っていると言っていた」

「妄想ではなく?」

「リリアになんてことを言うんだ」

「そんなに会いたいならファミリーネームくらい聞いておけばよかったのに」

「忘れてた……」

「兄上は相当なバカだったとしれて嬉しいです」

「セラフィー、お前はそろそろ年上を敬うことを覚えろー」


そりゃ俺も突き放すためとはいえとんでもないことを言った覚えはあるが、こんなに冷たくされると流石に傷つく。

アルカはただ苦笑いしてるだけで、否定も肯定もしないし。

いや、されても困るけど。

ほんっとにコイツら、リディアの前でだけはいい顔するんだよなぁ……。

まあ、俺もだけど。

そんなことを考えていると、部屋の扉が叩かれた。


「どうぞー」


入ってきたのは俺の妹のリディール。

俺はリディールのことをリディアという愛称で呼んでいる。


「アルカお兄様、結界の魔法陣の形について質問が……って、エルディーお兄様にセラフィーお兄様?珍しいですね、三人が一緒にいるなんて」


リディアは驚きながら俺たちのところに来た。


「リディ、何度も言っているけど、俺は魔法陣のことは詳しくないんだよ。力になれそうになくてごめんな」


アルカはリディアの頭をポンと叩き、申し訳なさそうに眉を下げている。

リディアも少し申し訳なさそうにした。


「じゃあセラフィーお兄様、教えてもらってもいいですか?」

「なんだ?言ってみろ」


セラフィーが俺に向けるものとは違う、少し優しい目をリディアに向ける。

リディアが机に紙に描かれた魔法陣をおく。

俺達はそれを覗き込んだ。


「この魔法陣のここなんですけど、実際にリュミエールに張ってみたら若干歪んでて……。調べてみたところ、この結界に関する資料があまりなくて」

「この結界は結界として足らないところが多すぎるから、あまり使われないものだ。それで、これがどうしたんだ?」

「ここの部分に他の結界の術式を組み込めば、普通に使えるかなと思ったんですが、可能ですか?」

「可能ではある。ただ、上手く組み込めないと……」


セラフィーは微妙な顔をしている。

リディアは不安そうな顔でセラフィーを見る。


「爆発する」

「怖っ」

「やるならダンジョンとか山でやれよ」

「じゃあ、早速爆破してきますね!」


リディアは嬉しそうに笑って猛ダッシュで部屋を出て行った。

あくまで爆破する前提なんだ……。


「あの……」


猛ダッシュで出て行ったはずのリディアがなぜか戻ってきた。

俺達が首を傾げると、リディアは満面の笑みを浮かべた。


「教えてくださり、ありがとうございます!!」


そう言って再びどこかへ走り去って行った。


「…………リリア?」

「うーわ、兄上が妹に初恋相手の姿を重ねてるよ。気持ち悪っ」

「えぇ……。エルディー兄様、流石にキモッ……いや、シスコンすぎますよ」


言葉を選ばずにドン引きするセラフィーと、言葉を選ばないように見せかけて言葉を選ぶアルカ。

どっちの方がタチが悪いか……。


「アルカ!お前、ちょっと表出ろ」

「え?えぇぇぇええええ!!急に!?」


◇◆◇


その後、剣を交えてアルカに剣術を教え込むフリをして先ほどの鬱憤を晴らしたのと、遠くの山で数百メートルが吹き飛ぶほどの大爆発が起きたのは、また別の話。

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