アルデーヌ・テア・コロスーゾの独占欲
みなさんこんにちは春咲菜花です!「メッチャツオイ王国の第一王女ですが、名前のせいで威厳ゼロです」の番外編〜!!いえーい!!メッチャツオイ王国も早くも65エピソード!長く続いているメッチャツオイ王国のリディール以外の視点も取り入れた物語、「メッチャツオイ王国の国民ですが、自分達目線の話も知ってもらいたいです」を投稿開始!!記念すべき一人目はやっぱり、一番最初にリディールに救われたあの男!アルデーヌくんでーす!では、アルデーヌ目線の物語、お楽しみください!!
「…………王女殿下。なぜ俺達は倉庫に閉じ込められているんですか?」
「…………アルデーヌ、私にも分からないことを聞かないでくれるかな?」
現在、アルデーヌ・テア・コロスーゾはこの国の王太女であるリディール・セア・メッチャツオイ王女殿下と裏庭の倉庫に閉じ込められていた。
こうなった理由を俺が分かる範囲で説明しよう。
これは少し前に遡る。
◇◆◇
「え?魔導具製作ですか?」
俺は少し前から所属している王立魔導士団の団長に呼び出されていた。
「ああ、王立魔導士団は主に魔法や禁呪、魔道具に携わっているだろ?」
「はい」
「少し前、王女殿下が国民の農作業を効率的に行える魔道具が作れないかと訊いてきたんだ」
ああ、王女殿下が……。
リディール王女殿下は俺が密かに慕っている相手だ。
あの方は誰よりも国民を愛し、誰にでも優しい。
今まで誰も聞かなかった俺の声にも耳を傾け、父上との和解にも手を貸してくださった。
「魔導具に詳しい団員にも色々訊いた結果、魔力の少ない平民でも使えるような魔導具が作れそうだと分かったんだ」
「ほうほう」
「そこで、魔力が団員の中で一番強いお前にも手を貸してもらう」
「はぁ…………は!?」
いやいやいやいや!
魔力が一番高いとはいえ、俺まだ入ったばっかですけど!?
新参者にそんな重要なこと任せていいのか!?
団長はなぜかニヤニヤしている。
「まさか断るなんて言わないよな?愛しの王女殿下にアピールするチャンスだぞ?」
「なっ!何で知って……」
「分かりやす過ぎるんだよ、お前は」
クッソ!
社交界では鈍感と有名な団長に諭されるなんて悔しい……!
「ていうか、コロスーゾ公爵家の人間なら普通に王女殿下に婚約申請くらいはできるだろ?何でしないんだ?」
「だって、そんなことしたら王家は絶対に承諾するじゃないですか」
メッチャツオイ王国は栄えているから、王太子や王太女が公爵家みたいな爵位の高い家の者と婚約する必要はない。
でも、公爵家から、それも国王陛下が目をかけているコロスーゾ公爵家からの申請だったら?
きっと陛下はその婚約を承諾するだろう。
「その何がいけないんだ?想い人と婚約できるんだぞ?」
「俺は王女殿下には本当に愛する人と婚約して幸せになってほしいんですよ」
「……まあ確かにそうだな。お前らしいよ、アルデーヌ」
団長は肩をすくめて笑った。
どうやら本気でからかっているわけじゃなさそうだ。
「それで、俺は具体的に何をすればいいんですか?」
「裏庭の倉庫にある農作業用の道具の在庫を見てほしいんだ」
団長は俺に個数チェックの紙を渡した。
珍しく楽な任務だな。
「最近は血生臭い任務しか任せていなかっただろ?」
「魔物討伐のことを血生臭い任務って言わないでください」
「この仕事が終わったら明日は休みにしてやる」
休みか。
王立魔導士団に入ってからは非常に忙しくしていて、片手で数えられるくらいの休みしかもらっていない。
「じゃあ、とっとと終わらせて来ますね」
「おー、頼んだぞ」
◇◆◇
――数時間後
思ったより重労働だった……。
せっまい倉庫の割に、大量の道具が仕舞われているから数えるのめんどくさい。
「あ、いたいた。アルデーヌ〜!」
ああ、重労働のせいで幻聴が……。
王女殿下がこんな薄汚い場所にいるはずないだろう。
そう思っていると、誰かに背後から目を隠された。
「だーれだっ!」
この美しい手は……。
俺は抑えていた農具を離してしまった。
「お、王女殿下!?なぜここに!?」
「塔に行ったら魔導士団長がアルデーヌはここだって教えてもらって」
あんのクソ野郎ー!!
王女殿下をここに行かせるとかアホなの!?
「ところでアルデーヌ、実は――」
王女殿下が何かを言おうとした時、支えを失った農具がこちらに倒れて来た。
「危ないっ!!」
俺は咄嗟に王女殿下を押し倒して、自分が盾になる形で守った。
すごく大きな音が鳴り響く。
「大丈夫ですか?王女殿下」
「わ、私は大丈夫だけど、アルデーヌは……?」
「俺は訓練でよく投げ飛ばされてますからね。王女殿下よりは丈夫ですよ」
俺は笑った。
けど、正直結構痛い。
よく投げ飛ばされてるから、まだ治ってない傷に当たった。
でも、心配はさせたくない。
「あれー?倉庫が開いてるー!」
「本当だ!すごい音したけど、誰もいなさそうだね」
「閉めちゃおー!開けっぱなしは良くないもんね!」
「鍵もさしっぱだー!」
そんな声が聞こえて、ガラガラと扉が閉められ始めた。
「ちょっ!まっ!」
扉が完全に閉まってしまった。
分厚い鉄製の扉だから、声はもう届かない。
よし、一回脱出する方法は後で考えるとして、この状態をどうにかしないと……。
王女殿下は身をよじって、俺の下から脱出した。
「アルデーヌ、私が風魔法で農具を支えるから、その隙に出て来てね」
「あ、はい」
「我が契約精霊よ、我に力を貸したまえ。ソフト・ジェントル・ウィンド」
俺は王女殿下が農具を支えてくれたおかげで、農具の山から出ることができた。
「すみません、王女殿下わざわざ魔法を使ってもらって」
「大丈夫大丈夫。さて、どうやって出るかなぁ」
王女殿下は高い位置にある小さな窓を見て何かを考えている。
正直、この状態はかなりまずい。
想いを寄せている異性と二人きりはまずい。
「正直。この鉄の扉を破壊することは造作もないけど、お父様に怒られたらどうしよう……」
そこを気にするんですか……?
一国の姫が分厚い鉄の扉を破壊できる時点でおかしいのに……。
「でも、このままここに居続けるのも問題では?」
「じゃあどうするの?」
「あ、風魔法で鍵を開けるのは?」
「あ、いいね。やってみよう」
俺は細かい作業が苦手だと言うと、王女殿下が代わりにやってくれることになった。
本当に感謝しかない。
「我が契約精霊よ、我に力を貸したまえ。スモール・ファイン・ウィンド」
王女殿下が風魔法を使って鍵穴を覗く。
「あとちょっとぉ……あ、待ってくしゃみでそう」
「え?待ってください。別にそんなオチ誰も求めてませんからね?」
「はぁっ、はぁっ、はぁぁああっくしょぉぉおおいい!!」
王女殿下が盛大にぶちかました。
緻密な作業をしていたため、集中力が切れ魔力が大放出された。
鉄の扉は遠くに吹き飛ばされている。
王女殿下の顔が真っ青になっているけど、大丈夫かな……。
◇◆◇
その後、リディール王女殿下は国王陛下にこっぴどく叱られ、魔法師団長も王女をあんなところに向かわせるなと言われたらしい。
ちなみに俺はお咎めなしだ。
「にしても、王女殿下も大胆なことをしなさる。まさかあの扉を吹き飛ばすとは」
「よっぽど外に出たかったんですかね」
俺は書類をめくりながら言った。
王女殿下がくしゃみで扉を吹き飛ばしたことは、国王陛下以外は知らない。
王女がくしゃみで扉を吹き飛ばすなんて笑いものだからな。
だけど、俺は王女殿下が笑われなくてよかった。
ではなく、王女殿下がくしゃみをしたことを誰も知ることがなくてよかった。
と、心から安心したことは、俺だけの秘密だ。




