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冬を告げる木枯らし

作者: ララポン
掲載日:2025/12/04

 其の者は、冷たい体に太陽と月の色をした木の葉を纏い、祠の前に居た。其の者は塵一つない、綺麗な祠を見て嬉しそうにしている。

 そんな其の者のもとに、幼子が現れた。


「あれ? だれかいるの?」


 幼子は其の者をじーっと見つめる。やがて、其の者の正体に気がつくと、ニコニコとした笑顔で話しかけてきた。


「あ、かぜのおにいさんだ! おにいさん、きょねんみたいにこのどんぐりあげるから、またきれいなはっぱちょーだい」


 幼子が強請ると其の者は何も言わず、夕焼けを吸ったような紅葉を渡す。紅葉は、まるで宝石のように美しく、されど太陽のように力強く、赤く光っている。

 その紅の美しさに幼子は目を輝かせ、満面の笑みでお礼を言った。


「わぁ、すっごくきれい! きっとおかあちゃんもよろこんでくれる! ありがと、おにいさん!」


 祠に背を向けて家へ帰って行く幼子を、其の者は暖かな眼差しで見送る。


 そうしていると、其の者の元に髭を蓄えた老人驚いた様子で走って来た。その老人は一礼をして喋り始める。


「木枯らし様、もういらっしゃったのですか! 毎年毎年村の子にも良くして頂きありがとうございます。それではどうか今日は、我らの感謝の気持ちをお受け取り下さいませ」


 其の者は冬を告げる風、木枯らしであった。木枯らしはその老人を一瞥したのち、風で静かに老人の頬を撫でた。老人は木枯らしに深く礼をして、祭りの準備をしに行った。


 ここ、南東の村は木枯らしが最後に冬を告げに訪れる場所だ。だからこそ終着点であるこの村では毎年、木枯らしに感謝するための祭りが開かれているのだ。


 村が赤く染まったころ、力強い太鼓の音と儚げな笛の音と共に舞いが始まった。村の誰もが木枯らしへの感謝を伝える為に舞っている。

 その光景を、村はずれの祠から木枯らしが見物する。木枯らしは満足げに村人達を見つめていた。


 やがて半刻が経った頃、舞いは終わり、辺りには余興が残るのみとなった。

 祠に居る木枯らしに、村の人々が米やら餅やらを捧げる。「ありがとう」という言葉が添えられた供物を、木枯らしは村人の頭を撫でながら受け取った。


 最後の村人が供物を捧げたのと同時に、木枯らしは一礼をして宙に浮かぶ。

 そして、木枯らしは夕暮れと共に、感謝の気持ちを乗せたすこし暖かな風を吹かせて、南東の村を去っていった。


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― 新着の感想 ―
 北の方などでは悩みの種な寒風・木枯らしも、作中の暖気と縁深い村では、遅まきの彩りをもたらす恵みの一種ですか。  紅葉を純粋に喜び、嬉しさを家族にも分けようとする子供や感謝の気持ちを疎かにしない老人…
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