7話 唯一無二の2人
文化祭の余韻が消えきらない教室では、まだ噂が飛び交っていた。
「やっぱり付き合ってるんじゃない?」
「親友って言い方、逆に特別だよね」
「どう見ても恋人にしか見えない」
笑い声や好奇心が入り混じり、教室の空気はざわついていた。だが、その中心にいる二人は、不思議なほど落ち着いていた。
昼休み、窓際の席で並んで弁当を広げながら、悠斗が小さく笑った。「なあ、異性ってなんだろうな」
葵も箸を止めて、少し考えるように窓の外を見た。「友達じゃだめなのかな。恋人じゃなくても、支え合えるのに」
二人は顔を見合わせ、同時に吹き出した。笑い声は弾むように広がり、周囲のざわめきを一瞬かき消した。悠斗は肩を揺らしながら「だよな、俺らって変わってるよな」と笑い、葵も「でも、その変わってるのが一番楽しいんだよ」と返す。
そのやり取りは、まるで秘密を共有するような親密さを持ちながらも、爽やかで軽やかだった。クラスメイトが不思議そうに見守る中、二人はただ楽しそうに笑い続けた。
窓から差し込む午後の光が、二人の笑顔を照らす。青春の一瞬が輝きとなり、教室のざわめきさえ背景に変わっていく。
「友達じゃだめなのかね」悠斗がもう一度呟く。
「だめじゃないよ。むしろ一番強いと思う」葵が答える。
二人はまた笑った。肩を寄せ合うでもなく、ただ自然に並んで座り、笑い声を響かせる。恋人ではなく、親友として並び立つこと。それが彼らの選んだ唯一無二の関係だった。
青春は、恋愛だけじゃない。友情だって、こんなにも眩しく、こんなにも輝かしい。
そして――
窓の外には雨上がりの光が差し込み、校庭の水たまりに未来を映すように輝いていた。
友情は、恋愛よりも特別で、誰にも真似できない形を持っていた。
そしてその絆は、これからも続いていく――青春の先へ、まだ見ぬ日々へ。




