6話 ざわめく教室
文化祭が終わった翌週、教室はまだ余韻に包まれていた。映画の主演を務めた悠斗は、意外なほど好評で、クラスメイトから「意外と演技うまかったな」「カッコよかったよ」と声をかけられていた。舞台袖で支えていた葵の存在も、自然と話題に上がる。
昼休み、女子の一人が葵に声をかけた。「ねえ、葵。恋人って、どうやって付き合うのがいいと思う?」
突然の質問に葵は少し驚いたが、真面目に答えた。「うーん……私は恋人の経験はないけど、相手を大事にすることが一番じゃないかな」
「じゃあ、悠斗とは?」と別の子が茶化すように聞いた。周囲の数人が笑いながら耳を傾ける。
葵は少し笑って首を振った。「悠斗は恋人じゃないよ。親友。だからこそ一緒に頑張れるんだと思う」
その答えに、教室は一気にざわめいた。
「え、あんなに仲良いのに?」
「絶対付き合ってると思ってた」
「親友って言い方、逆に特別じゃない?」
「なんかドラマみたいだな」
笑い声と好奇心が入り混じり、教室の空気は騒がしくなった。葵は少し頬を赤らめながらも、言葉を変えることはなかった。心の奥では、周囲の反応に揺れを感じつつも、「友情だからこそ支え合える」という確信があった。
その噂はすぐに悠斗の耳にも届いた。放課後、廊下で別の女子から声をかけられる。「ねえ悠斗、葵と付き合ってるんでしょ?」
悠斗は一瞬驚いたが、すぐに笑って答えた。「いや、違う。葵は親友だよ。恋人じゃなくて、親友」
その言葉に女子たちはさらにざわついた。
「親友って……そんなに仲良くて、恋人じゃないの?」
「逆にすごいよね。あそこまで一緒にいて、恋人じゃないって」
「でも、羨ましいな。そんな関係」
男子の一人は「逆にすげーな。親友であそこまで一緒にいるって」と感心したように呟いた。別の男子は「俺だったら絶対意識するわ」と笑い、さらにざわめきが広がる。
悠斗の胸の奥には、ほんの少しの揺れがあった。周囲の視線や噂に流されそうになる瞬間もある。だが、葵と過ごした日々を思い返すと、答えは揺るがなかった。「恋人じゃなくても、俺たちは十分特別だ」その思いが、彼の言葉を強くした。
教室の空気は騒がしくなったが、二人の間には静かな理解があった。互いに恋人ではなく、親友として支え合う。それは周囲には奇妙に映るかもしれないが、二人にとっては自然で、唯一無二の関係だった。




