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マブダチ  作者: 双鶴


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5話 雨と舞台練習

朝から降り続く雨が校舎を包み、窓ガラスに水滴が連なっていた。昼休みになっても空は暗く、教室の空気はどこか沈んでいる。悠斗は窓際に座り、ぼんやりと外を眺めていた。昨日返ってきた小テストの結果が赤点ぎりぎりで、心が重くなっていたのだ。


「どうしたの?」葵が声をかける。彼女は傘を持ったまま席に腰を下ろし、悠斗の横顔を覗き込んだ。

「……またダメだった。努力しても、結局こんなもんかって思うとさ」悠斗は苦笑いを浮かべる。普段なら軽口でごまかす彼が、今日は素直に落ち込んでいた。


葵は少し考え、机の上に手を置いた。「ねえ、私だって失敗するよ。絵だって、思った通りに描けないことばかり。でも、諦めなかったら少しずつ形になる。あなたも同じだと思う」

悠斗は視線を落とし、雨粒が窓を伝うのを見つめた。葵の言葉は、静かに心に染み込んでいく。


その週、文化祭の準備が本格化した。クラスで自主制作映画を作ることになり、悠斗は主演に抜擢された。チャラい見た目の彼が演技をするというだけで、クラスはざわついた。だが悠斗自身は、試験前の忙しさもあり、どうしても気が重かった。


「セリフ覚えるの、全然進まない……」放課後の教室で台本を抱え、悠斗は頭を抱えた。

「じゃあ、私が相手役やるから。練習しよう」葵は迷わず言った。


それからの日々、葵は毎日のように悠斗の練習に付き合った。雨の日も晴れの日も、教室の隅で二人は台本を広げ、声を合わせた。悠斗がセリフを噛むと、葵は笑いながら「もう一回!」と促す。彼女の真剣さと根気強さに支えられ、悠斗は少しずつ自信をつけていった。


「お前、試験前なのにいいのか?」ある日、悠斗が申し訳なさそうに言う。

「いいの。あなたが頑張ってるの見てる方が、私も頑張れるから」葵はさらりと答えた。


その言葉に悠斗は照れくさく笑い、台本を握り直した。雨音が窓を叩く中、二人の声は重なり、教室に響いた。


放課後、昇降口で二人は並んで靴を履き替える。外はまだ雨が降り続いていた。悠斗が「傘忘れた」と呟くと、葵はためらいなく自分の傘を差し出した。

「一緒に入ればいいじゃない。濡れるよりマシでしょ」

悠斗は少し驚き、そして笑った。「……ありがとな」


二人は一つの傘に入り、校門を出た。雨の中で肩が触れ合い、互いの存在が確かに支えになっていることを感じる。恋人のように見えるかもしれないが、そこにあるのは純粋な友情だった。雨音に包まれながら、二人の歩幅は自然に揃っていた。


文化祭当日。舞台の上に立った悠斗は、緊張で手が震えていた。だが、観客席に座る葵の姿を見つけた瞬間、心が落ち着いた。練習の日々が背中を押してくれる。セリフを口にすると、思いのほか自然に声が出た。観客の笑い声や拍手が広がり、悠斗は初めて「やってよかった」と思えた。


終演後、舞台袖で悠斗は息を切らしながら笑った。「……なんとかやり切ったな」

葵は拍手を送りながら「すごく良かったよ。練習の成果、ちゃんと出てた」と言った。


雨の日の励ましと、試験前の支え合い。二人の友情は、心を守るだけでなく、努力を共にする力へと変わっていた。


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