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惑星ケモミミα  作者: 梅しそ ほろろ
1章 ケモミミの惑星
7/35

生活レポート

拝啓、皆様お元気ですか。ケンタローです。俺は胃もたれ気味ですが元気だよ。

この名前も知らない惑星に不時着して数日が経ったが、本日は。


<<…3,2,1 イグニッション>>


キィィィイン、ドウッ!! シュゴゴゴ


「フギャァアー!!」「ワンワーーーン!?」「キャーン!キャンキャン!!」


ゴォォオ……バリバリバリ…


<<No3、ブースタージェットソン 安定自立飛行に入りました>>


「がううう!がうがう!!」「ふにゃああ…」「クゥーン…クゥゥーン」


ドローンは原住民の力を借りて、問題も無く無事に打ち上がった。

いや、すっげーうるさいぞってキキルパ達に怒られたりはしたが。

今は高高度から地表探査を行い、逐一船に情報を持ち帰っている。


結論から言うと、この星はギャラクシーマップに登録されていない完全未開惑星だと解った。

パンゲアのような一つの大陸と大小無数の島があり、四方を大きな海で囲まれている。地形と一致する登録惑星はない。

北極と南極には氷があり、大陸には多種多様な植生も観測されている。

ドローンの撮影した映像では未知の生物が陸上で生活している様も見て取れた。


それと。複数の人類による痕跡。街の跡のようなものも発見された。確実にこの星には先史文明が存在したのだ。

3基あるドローンのうち、1基はそれら放棄都市とでも言うべきか。人工物を中心に探索調査させている。

石碑がならんだ神殿のようなもの。家が複数あったであろう場所。どれもこれも、風化して遺跡になってしまっている。


街や村の痕跡はポツポツと見つかるのに。未だにこの村に居る住民以外の生存者は見つかっていない。

ドローン3機程度では惑星上の完全マッピングにはまだ時間がかかる。もう少し詳細な報告は待たないといけないだろう。


つまり、だ。

しばらくはまだ村の周囲で現地調査続行、という事。


数日彼女達を観察して、俺にも少しづつだが色々理解ってきた。

俺が見て学んだ、村人達の生活環境レポートの一部をここで紹介しよう。



・・・



朝。日の出と共に彼女達は目覚めて活動を始める。


川から引いた水路で顔を洗い、しばらくは日光浴などをしてのんびりしている。

飲料水もこの用水路から取得しているようだ。


ある程度すると、お腹をすかせた少女達が共同の炊事場に集まってくる。

炊事担当というか専業のコックはどうも居ないらしい。村人総出で調理をしている。

木の実や果実を洗う者。肉の下ごしらえをする者。その肉を焼く者…各々連携しているが、自由だ。


彼女達の主たる食料確保は狩猟採取らしい。

主に森で捕れた木の実や果実、狩りで得た肉を食べている。

本格的な農耕をしている形跡は無い。


調理が完了し、配膳が終わってもすぐに食べ始める訳では無い。

この村での食事作法には独自のルールがある。

まずはミユシスのお祈りから。


「森の恵みに皆が感謝を…むにゃむにゃ」


『……ぐるるるぅ…』


周りの少女達はミユシスの祈りが終わるのを根気強く待つ。終わるのを今か今かと待ち構えている。

飢えた狼達の眼の前に肉を置き、待て!と言っているような物である。いやそのまんまだが。

だが皆よく堪えている。それほどに里のリーダー、族長の言葉は重い。


「にゃむにゃむ~…よし、いただきますなのじゃ!」


『ふぎゃふべろばぶむしゃむしゃもぐむしゃぁ』


祈りが終わった瞬間、戦争は始まる。

朝っぱらから大きなステーキに齧り付く者もいれば、木の実を美味しそうに頬張る者もいる。

肉を奪い合う者。それを嗜める者。仲良く分け合う者。食事ひとつで個々の性格が滲み出る。


そんな彼女達に共通している事と言えば、食べる量が半端ない。

彼女達は地面に敷いた大きな葉っぱや土を焼いて作った器に、食事を山積みにする習性があるのだが。

その山はみるみるうちに消えていく…


「ケン食え」


俺はそんな量とてもじゃないが食えない。

本職は宇宙船の艦長であって、フードファイターではない。

しかしキキルパはお構いなしに俺に食事を押し付ける。

彼女から見ると俺は群れで一番年下、ヒエラルキーの最下層なのだろう。

だからだろうか、まるで子守をするように食事を運んでくる。重ねて言うが量が半端ない。

所詮子供が食べる量だと?ならばこのレポートを読んでいる諸兄達にお聞きしたい。


君ら朝から1ポンドステーキ3枚と、付け合せの果物5個と木の実山盛り食える???


「うん、もう…良いかな……」


「もっと食え 大きくなれない」


「いやいや、君たちに比べりゃ十分デカいって。だからもう」


「駄目だ食え」

「なんじゃケン、好き嫌いはよくないぞ?」


「いや…」


「「食え」」


「はい……」


食事に関しては俺が食っても体調に大きな問題はなかった。胃薬が必要になって船のトイレに駆け込む回数が増えるだけだ。

主な味付けは塩と謎のスパイス。あとは焼くだけのワイルドな調理だが…決して不味くはない。パンが欲しくなる。いや、もう食えない…。


・・・


昼間は各々が仕事をして過ごしている。


食料の確保は最優先。大勢の村人達はチームを組んで森に出掛けていく。

村に残った者は、土を捏ねて壺や皿を作っていたり。毛皮をなめして服を作ったりと…専門職のような村人も見受けられる。

川で談笑しながら洗濯をする娘もいるし、まだ幼いのか走り回って遊んでいる子も。昼間はとても賑やかだ。

道具は基本的に土器と石器。動物の骨なんかも使うが、金属加工はしていないらしい。


だが妙な事に、一部だけ金属製の道具がある。

キキルパのマチェットや、共同の炊飯場にある鉄板とかだ。


偶にこういう金属道具が海岸に漂着するらしい。

もしかすると、ドローンが観測した他の街から流れてきた物かもしれない。

だとすると過去の街にはもう少し進んだ文明があったのだろうか…?

しかし彼女達の生活はかなり原始的で…いっちゃなんだが、高度な技術レベルを感じない。

金属加工どころか農耕すらやってないのだから。皿だって半分は葉っぱだったり。だからこそ違和感がある。

他の街の跡から、何か文明の痕跡がもっと見つかれば良いのだが…。


違和感と言えば、住民の中ではミユシスの存在は特に異質だ。

彼女はどうもここの生活からは説明が付かない、豪華な装飾の服を一人だけ着ている。

周りの住民は粗末な布を編んだり動物の皮を使った原始的な衣装をしているのに。彼女だけが特別な服。

少し触らせてもらった限りでは、シルクの肌触りに近い。


先祖代々から伝わる衣装なのだ、とミユシスは言う。その割には全然劣化もしていないし謎の技術。

脱がせてさらに調査してみたかったが、とうとう子作りする気になったんじゃな!?と勘違いされた為諦めた。はい、まだ童貞です。


そんな村で一番偉いのじゃぞ~?と普段から偉ぶるミユシスの元には相談事をする村人が偶に来るくらいで。

その他の時間は岩に縄を括り付けた場所で神に祈ったり。日向ぼっこをしてたりするだけ。

身の回りの世話は当番制の村人がやっている。主にマルチルがそうだ。まるで従者の着いた王族のような扱いだが、族長の仕事とは一体…?

俺が隣に座れば甘えて来てゴロゴロするあたり、なんというか…。いや、これ以上はやめておこう。不敬な事言って頭ポーンは避けたい。


夕方、日が落ちると村人たちは仕事をやめて、各々の住処に帰る。村の建物には明かりが灯りはじめた。

照明には水をかけるだけで光を放つ、不思議な石を各家で使っている。これも海岸とかで拾えるらしい。

夕食も朝と同じ物を食べる。たまに魚も焼いて食べるようだ。基本的に焼き物。


食べて仕事して遊んで、眠くなったら寝る。これを毎日繰り返す。


ミユシスの衣装や金属の道具以外、特に変な違和感はない。

これがきっと何百年も村で繰り返されている日常。

……平和だ。


◯観測ドローン


PSG-3801の貨物室に積載されていた大気圏内用全天候観測ドローン。

全長3m、主翼最大展開時全幅7.5m。ホバリング状態から亜音速まで自由に速度調節可能。


小型ロケットジェット複合エンジンで飛行し、大気中の水素を自動補給しながら恒星光発電を行い半永久飛行する。

搭載されたマルチセンサーで地形情報取得から鉱物やガス等の資源スキャン、通信中継まで多種多様な任務をこなす事が出来る。


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