ロリババァじゃねぇか
村長?族長?まぁどっちでもいいが。
この狐耳っ娘なミユシスが言うには、昔は普通に男も居たらしい。
だが、男自体が本当に稀にしか生まれない事。
そして村にはもう、男はいないのだと。
「他の村とかに探しに行くとかはしないのか?」
「……したとも。他所はもうとっくに滅んだよ。わし達はその寄せ集めなんじゃ」
滅んだ。寄せ集め。
どうもこの地域の住民は相当苦労しているらしい。
どういう政治体型なのだろう。最低でも星域を束ねる総督なり大統領なりはいるだろうに。
なんでこの村は放置されているのだろうか?
何にしても深刻そうな事には変わりない。話をもっと聞こう。
「わしも長く生きておるが、この里もこのままではいずれ……」
長く生きている、と眼の前の少女は言うが。
どう見ても俺にはやっぱり子供にしか見えない。
「失礼ながら、君の年齢は…?」
「わしか?今年で192じゃ」
「……192ぃ!??」
マジかよババアじゃねえか。いやロリババアじゃねえか。
誰がどう見たって192には見えないし、顔にシワ一つすら無い。この子お肌ピッチピチ!
きっとあれだ、この惑星は恐ろしく自転が早いとかで暦が一瞬で過ぎるんだろう。そう信じたい。
ていうか年齢以上に気になることがもう一つ。
「……その。耳と尻尾は?」
「む?そういえばお主の耳は変じゃな…なんで横から生えておるんじゃ。尻尾も無いではないか」
「まさか、それ本物なの」
「当たり前じゃろう?わしのは里の中でもダントツでふわふわなのじゃぞ?ふふん」
ミユシスの髪と同色の。黄金色で毛先だけちょっと黒い尻尾がフリフリと揺れる。うん、ふわふわ~。
誇らしそうに自分の尻尾を自慢するロリババア…いや、族長様。
この仕事を長くやってると、色々アースノイドと見た目が違う種族に沢山出会う。
おでこに触覚が付いた妙に筋肉質で緑の奴とか、すげー小柄だけどやたら丸いカエルみたいなのとか…
強いて言えば体中が毛で覆われてる剛毛の種族なんかはしょっちゅう見かけるけどさ。
人間の体に直接獣の耳と尻尾を持った種族なんて。見たことも聞いたこともない。
未知との遭遇ってやつ。発表すればギャラクシーニュースでトップ間違いなし。
「そ、そうか…いや話がずれたな。それで?この村には外部との繋がりはまったく無いと?」
「…無いんじゃ。1000年以上前には山をいくつも越えた向こうに大きな都があったと伝えられておるが……」
・・・
ミユシス曰く、何処かに生き残りは居るかも知れない。
でもこの村には長らく人の往来などは無い、と。
…これは参ったぞ。てっきり俺は宇宙港のひとつくらいはあるものだと思っていた。
だって地球型惑星だぜ?この村が星の中で超が付くど田舎だったとしても、何かしらの通信手段くらいは。
しかしこの村の様子や家の中をパッと見るに…そんな物はとてもありそうにない。
まさか本当にここは未開惑星なのか?まったくAIが知らなかった言語が主流とはいえ、どうにか伝わる人類語もあるのに???
…とにかくもっと情報を集めないと。星系外通信施設くらいは何処かに無いとおかしい。
「…3810、たしか積み荷に大気圏飛行可能な大型ドローンがあったな?詳細報告」
<<該当のパッケージに損傷無し。カーゴコンパートメントは一部を失いましたが積荷は全て無事です>>
「…なら緊急事態だから有効活用させてもらう。お前にも同意してもらうぞサンパチ」
<<……状況を鑑みて致し方無いと判断します。艦長の提案を支持>>
「よし、貨物排出を実行する。カーゴベイ エマージェンシーオールイジェクト、キャプテンコンファーム」
<<チェック、オールカーゴイジェクトコンプリート。全貨物の所有データ、ミッシングへ移行>>
いくら艦長の俺が船で一番偉くても、積荷をそのまま私用で使うなんて事は出来ない。
だったら使えるようにするにはどうするか?簡単だ、一度捨てたことにすれば良い。
貨物船というのは、宇宙海賊なんかに襲われた時は貨物を放出して逃げる事を法律で許可されている。
変に抵抗しても、救援が間に合わなければ船ごとぶっ壊されて死ぬだけだし?会社だってそこまでバカではない、積荷なんて保険でどうにかなる。船の方がよっぽど高価。
今の長いやり取りも、つまりそういう事にしておく為だ。
当然、後から正当な理由が無けりゃ勿論会社クビで、狭苦しいお部屋で屈強なポリスメンに囲まれて楽しいお泊り会が開催されるけど。キャプテンだって楽じゃぁないのよ?
「……? そなたさっきから誰と話して居るのじゃ…?」
「ん?あぁそうだな……なんて言えば良いんだろ。俺は離れてても船と会話出来るんだよ」
「な、なんとぉ!?船が喋る!?馬鹿な、そのような事あるはずが」
「普通に喋るぞ?ほら、お前も族長様に挨拶しろ」
『皆様こんにちは 私はトラピストヘヴィインダストリ製、コメットカーゴシリーズ搭載のAIシステムです』
横に置いていたメットのスピーカーから機械音声が流れる。
「うにゃぁ!?」「きゃーん!!」「ふぎゃーっ!!」
それを聞いていた住民たちが大慌てする。盛り上がっとる盛り上がっとる。
歓迎してくれてるのかい?そんな大げさにリアクションしてくれてありがとう。
「ひょぇ……そなたの船とやらは、まさか神なのか!?」
「神じゃねーよ、AIだって」
「えーあい…?しかし生首が喋ったんじゃぞ!?」
おいおい…まさかマジでビビってるの?なんかゴメンね?
それに生首て。これただのヘルメットだよ。
…もしかして今までずっと俺が生首を持ち歩く蛮族か何かだと思ってた?
「これは俺の…なんて言えばいいんだ鎧みたいな?船の…あー、魂みたいなのがさ、喋るんだよ」
「め、面妖な…突然ぱくっと噛みついてきたりしてこぬじゃろうな!?」
「してこねーよ!大抵何でも知ってる賢い奴なんだぜ?」
「そ、そうか…叡智に長けて?…やはり神の遣わせた化身か。ありがたやありがたや」
『弊社製品をご愛顧頂き、ありがとうございます』
どうもミユシスはサンパチの事を神かなんかだと思いこんでしまったらしい。なんかにゃむにゃむメット相手に拝んでる。
しっかし、ここまで原始的な種族だとは……ますます惑星脱出の望みが薄くなっちまった。
「とにかく!俺の船には誰も近づかないように周りに言っておいてくれ。色々危ないからさ」
「あいわかった、皆に伝えておこう。それで神に……いや、お主に。我らの願いも聞いて貰いたいのじゃが」
「なんだ?俺に出来ることなら手伝うぞ」
「では…」
ミユシスが身を正す。そして深々とお辞儀し、俺に礼をして手を揃えた。
まるで神に祈るように。その神聖な一連の動作に俺も息を呑む。
一体どんな願いを
「………頼む!わしと子作りしてくれ!」
「…は?」
子作り。子作りってなんだ。
ひとつ屋根の下、男女がにゃんにゃんしたら子供が出来る事さ。
いやそんなもん誰でも知っとるわ。
「もう里には男がおらんのは話したろう。このままでは誰も居なくなってしまう!」
うんうん、それも理解るよ?滅亡の危機ってやつだよな~。
だが、コイツ今何と言った?「わしと」?
192のババアと?いや見た目はロリだけど??
どのみちアウトなんですけど!?
「おい…本気で言ってるのか!?」
俺は思わず仰け反ってしまった。
突拍子もないお願いにも程がある。
「頼む!!そなたのような男が里に来たのは奇跡…神の与え給うた救いなのじゃ~!」
「いやいや待て待て…。あんたその…なんだ。…孕めるの?」
だってそうだろう。見た目はともかく、高齢出産にも限界ってもんがある。
この村じゃどう考えても、体外受精装置だとか人口子宮だとかそんなもんあるわけがない。
当然俺の船にだってそんなものは無い。
「む?何の心配をしておるのじゃ。子作りくらいまだまだ余裕じゃわい!」
「……決してキミ達の種族をバカにしているとかじゃないのだが…その…年齢的に?」
「何を言う?お主は確かに異様にデカいが…肌は若々しい。そなたいくつじゃ?200…いや、250歳くらいじゃろ?」
「200~!?俺はまだ24歳だ!!」
「……今なんと?」
「なんと?じゃねーよ。どうなってんだこの星の住民は」
どうもこの種族は年齢感覚が一桁くらいずれてるらしい。
つまり192歳って19.2歳って事だ。しかし彼女は19歳にすら見えない。マジ幼児。
…ちょっと待て。その理論だと、俺は2歳児ってことぉ…?
「20そこらなどまだ赤ん坊ではないか…」
正解。嬉しくはない。
「いやおたくらの感覚で言われても。他の星だと大抵の人間は100歳くらいまで生きたら死ぬんだっつの」
メンテしなければな。やろうと思えばサイボーグ化したりハイヒューマン治療すれば、200歳くらいはいけそうなもんだが。
ステラノームにも長命な種族は居ないってわけじゃないが…どう間違ってもアースノイドな俺の見た目で、フレッシュな生身の200歳は居ない。
「ふむ…そういうものなんじゃのう」
「そう。だから俺はアンタ達にとっては完全別種族の異星人であって……子供出来るかどうかも怪しいんだよ。だいたいなぁ」
そもそもだ。もっと根本的な問題がある。
「俺のちん◯が入るわけねえだろぉ!?」
「なっ…!?///」
ミユシスが頬を染めて驚く。
だってよぉー。俺のは大人ち◯ぽだよ???
そして君たちは見た目年端もいかない少女。族長様なんて幼女。ローリロリのプレティーン。
平均サイズだとしてもだよ。物理的に無理だろ常識的に考えて。
そもそも法律的にもアウトなんだよ。合意とかそういう話じゃねーの。俺がポリスと世間にファックされんの。
「そ、そんなに…?ちょ、ちょっと失礼…」
「…おい!?」
ミユシスが再び近寄ってきて、俺の股間をまさぐる。セクハラですよそれ。そもそも宇宙服越しに触られても。
……いいぜ、そっちがその気なら判らせてやるよぉ!俺のマッシブな…大人ちんちんをなぁ!!
俺は宇宙服を少し開けて、少女の手をパンツの辺りへ誘導する。
「ふ…む?これくらいなら…」
しばらく触らせていると、俺もほんのちょっと。ほんのちょっとだけな?
幼女のちっちゃなお手々にイケナイコトさせてる背徳感がこう…。つまり、バッキバキに勃起した。
「んむ?…むむ!?……ぴゃあああ!?///」
「族長!? ***!!」
「よ、よい!なんともない…! 下がるのじゃ」
俺の首筋を槍で突こうとする護衛の少女を、ミユシスが空いた手で制止する。
一方で俺の槍を握っていた方の手も離して、元座っていた位置に戻ったセクハラ族長は顔を紅らめたまま。
少し震えながら、ぽそっと呟いた。
「………む、無理かも知れん…///」
「だから言っただろ」
「じゃが…これしきの事で…!」
「えっ」
「それでも、わしと!!子作りしてくれ!!///」
「なん…だと…!?」
俺の猛り狂う暴竜の片鱗に触れてもなお…挑んでくる、だと?
種の存続がかかっているとはいえ、なんて覚悟だ…。
「たのむ!」
「……どうしても、か?」
「里のためにも…ぜひ!」
「ていうか入るのか!?」
「ワシだってわからん!!/// そこはほれ、ごにょごにょ…な、なんとかぁ…?」
よくよく考えれば、このロリババ…族長様の説明が正しければ。
村の少女達の中には長い寿命の中で妊娠経験がある者も居るんだろう。とても信じられんが。
出産出来るくらいならまぁ…俺のも入る…のか?
……なんにしても、女の子にここまで縋られて拒否するなんてのは男が廃るってもんだぜ。
へっ、俺の負けだ…。
いや、本音で話そう。
俺も童貞のままこんな未開惑星で死にたくねぇっす。
「………妊娠しなくても恨むなよ?」
「おぉ!それでは!」
「ただし!!条件がある!!!」
「むむぅ!?何でも言ってくれ!!わしの財産は全てお主にやろう!足りぬなら里中からかき集める!」
「んな物は要らねえ……。もっと大事な事だ…!」
「そ、それは…?」
「俺、その、童貞だから…いろいろ心の整理とか…ね?準備?とかがさぁ…」
「そ、そうなんじゃの……」
命からがら生き延びたと思ったら、今度は子供?に抱いてと迫られる。
本当に厄介な事になっちまった……