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惑星ケモミミα  作者: 梅しそ ほろろ
1章 ケモミミの惑星
3/35

未知との遭遇

――少女に逃げられてから2時間後


「ええと…このケーブルが……此処に繋がってだな」


俺はサンパチのカメラを修理しつつ、ログ報告を聞きながら現状を整理する。

どうも俺達は船の燃料タンクをぶっ飛ばすことで恒星への衝突は避けれたようだ。実際今こうやって生きてるしね。


サンパチの推測では、その後も船は止まらず慣性で流れ続け。俺達が仲良く気絶してる間に船は星系から離脱していき。

宇宙を漂い続け、気がついたらこの惑星に墜落した。という状況らしい。爆発の衝撃でブラックボックスのログも残っていないそうだ。

しっかし、不可解な点もある。

あの事故宙域辺りにはこんな青い海や植物豊富な地球型惑星のある星系なんて無い。


いったい俺達は何処まで飛ばされたのだろうか…


<<メインカメラに接続>>


「おっしゃ!なんとかなったぁ…!」


幸いな事にカメラ本体が故障したのではなく、ケーブル数本の断裂程度。

これくらいならサービスマニュアルを見ながら俺でも直せた。ひとりで宇宙船修理の実績獲得。

だが問題は山積みだ。船体の裂けた外装や推進機周りは俺だけじゃどうにもならない。

さっさとドック入りさせないと…


<<接近する複数の生体熱源を探知>>


今直したばかりの船体外部カメラがギュイッ!と音を立てて内陸の方向を見つめる。

さっきの子供が戻ってきてくれたのだろうか。


「もしかして救援を呼んできてくれたのか?だったらようやく助かるぜ」


俺は船の天井から滑り降りて、出迎える。

ガサガサと音を立て、草木をかき分けて出てきたのは。

複数人の子供だった。


「あ?何だ何だ…キミ達遊びに来たのかぁ?出来れば大人の人を呼んで来て欲しいんだがなぁ」


俺はオーバーに首を降って、見物客に相対する。

どの子供も見た目は…10代前半だろうか?しかも全員、また女の子っぽい。

そんな彼女達はこちらを警戒するように睨んでくる。


「………」


一番後ろから遅れて来た女の子がこちらに歩み寄り、手作りの槍のようなものを突きつけてきた。

背中まで伸びてボサボサした黒い髪、褐色に焼けた健康そうな肌。そしてまた謎の獣耳と尻尾。昼間見た子供とあまり格好は変わらない。

周りの子達のリーダーか何かだろうか。瞳に強い意思を感じる。


「…そういう遊び流行ってんの?」


「…*@**!!*o**、**"***!」


しかし何を言ってるのかはさっぱりわからない。


「…おいコミュ壊れてんぞこれ」


<<未知の言語です。該当する近似語源無し>>


「銀河共通語にちゃんと訳したのか?」


<<此方側は翻訳済みです>>


「田舎の方便レベルじゃねえってこと…?」


「**! *****!!!」


女の子が俺の胸にぐいぐい槍を突きつけてきて、軽く仰け反る。

いや~結構先に付いてる石尖ってんなこれ。生身だったら普通に刺さるんじゃねーか?

つか尻尾みたいなのがブワってなってる。そこだけハイテクだなおい。


「がるるるっ!!」


しかもなーんかすっごい怒ってるんですけど。困ったな。

だが、そう。こんなときは。

言葉が通じないなら。古来より船乗りに受け継がれし、"アレ"をやるしか無い。


俺は大げさなジェスチャーで自分と天を指差す。


「聞いて!!俺!宇宙から!来た!」


「!? *****!!がうがう!!」


「俺!そらから!落ちてきた!この船!とんで~!ドガーン!!ぶっ壊れた!落ちた!ここに!」


「***…? ********!」


うんうん、聞くだけは聞いてくれてるようだ。伝わってるかは解らんけど。


「俺船直したい!帰りたい!ここどこ!ていうか助けて!?」


「****…」


槍を突きつけていた少女は、俺の言動を見聞きして諦めたように…また集団に戻って仲間と何か相談を始めた。

代わりに別の少女が俺に槍を向ける。でも腰は引けちゃってるしケモ耳がぺたーんってなって、尻尾も丸まってちょっと震えてる…俺コワクナイヨ?


「…おい、なんとかこいつらの言葉解析出来ないのか?」


<<言語データを収集中。もっとサンプルが必要です>>


「うーむ……つか叫んで喉乾いたな。そうだ、まだ俺のお気に入り残ってる?吹っ飛んでない?」


<<食料庫は無事でした>>


「だったら…」


俺が船に戻ろうとすると気づいた女の子数人が追いかけてきて、俺の背中を槍でバシバシ叩いてくる。

いててて!逃げないって!!大丈夫大丈夫。

なんとかジェスチャーで彼女達を抑えながら、俺は慌てて人数分のコップと最近ハマっているフルーツジュースを船から持ってきた。

それを彼女達の眼の前で注ぐ。


「美味そうだろ~?」


そして一気に飲み干した。


「っかぁー!うまい!!!」


「***!?」


俺が持ってきた未知のジュースに不信感を覚えているのか。

人数分用意してやっても警戒して誰も続いて飲もうとしない。

俺はもう一杯自分のコップに注いで、砂浜にどっかり座る。

そしてチビチビと見せつけるように飲んだ。


「めちゃくちゃ美味いぞ?ほら、お前らもやれって!俺の奢りだ」


「**! ********…」


さっきのリーダーっぽい子が俺を警戒しながらコップを受け取る。

最初は中身を見て何だこれは…と怪訝そうな顔をしていたが。

少し匂いを嗅いだ後、舐めて美味しいことに気がついたのか。普通に飲み始めた。

周りもその様子を見て続く。


「どうだ?美味いだろ。勤務中っていうか航行中は酒飲めないからさ、これが一番良いんだよな~」


「******」


「お、気に入ったか?ほらどんどんやれよ」


俺はまだ飲むか、とボトルを彼女達に突き出すと。

ワッと皆集まってきて、ジュースで乾杯が始まった。

うんうん、やっぱ子供には甘味だよな。


・・・


それからしばらく、互いに大げさなボディランゲージを交えたやりとりをしていると。

女の子達は立ち上がって、俺にたぶん着いて来い…とジェスチャーを送り始めた。

きっと住んでる所に案内してくれるのだろう。

俺は持てるだけの装備と土産のジュースを背負って、彼女達に続いた。


ガサ、ガサ…ザッザッザッ


鬱蒼と茂った密林を掻き分け、案内された先は小さな村だった。

壁に石や木、屋根に葉っぱも使ったなんとも趣のある家がいくつも並ぶ。

大きな動物の皮が干してあったり、土で出来た壺がたくさんおいてあったり…生活感が漂っている。


「おいおい昔の地球映画のセットかよ…」


内心ちょっとワクワクするね。

舗装もされていない簡素な道を行く人々の往来は結構な数。何人ものケモミミ少女達とすれ違うが…しかし何故だろう。大人を見かけない。

俺はそんな村の一番奥、他より明らかに立派で大きな佇まいの家に案内された。


「ここ すわれ」


よし、簡単な言語ならようやくコミュニケータが翻訳し始めた。

片言だが、これならどうにかなりそうだ。


「 **** くる はなし しろ」


「あー。村長とかくるの?やっと大人のおでましか~」


しばらく待っていると。槍を構えた女の子達が跪き、頭を下げて仰々しく出迎え始める。

その中央を、シャラシャラと不思議な音を奏でる装飾品をなびかせて…一人の少女が俺の前に歩み出た。

黄金色に輝く長い髪。儀式めいた装飾。純白の生地に目立つ赤の刺繍が入った服。明らかに周りと格が違う。

俺の前に座った少女は周りの子より更に幼く見える。

しかし…またしてもケモ耳ケモ尻尾。…どういう宗教なの?それ


「ようこそ里にいらした、旅人。言葉が通じぬとお聞きしたが、如何じゃ?」


お?ここに来て初めてまともな会話。


<<アースノイド系ヤポーニャ語に類似した言語を検出>>


アースノイドって俺の種族じゃん。だから見た目似てんの?

でも何処だよそのヤポーニャって。そんなコロニー聞いたこともねぇぞ。

…まぁ俺が知る由もない。全部AIに任せる。


「あー、その言葉なら理解出来る」


「ほう…?これは神に祈る時に使う古代語なんじゃがな。わしの名はミユシス。この里の長をしておる」


こんな小さい女の子が村長ねぇ…。どうにも胡散臭い。

普通こう言うシチュだと出てくるのは老人だろうに。


「ご丁寧にどうも。俺はケンタロー・ジョセフ・キリンジャーだ。カーゴシップライダーをやってる」


「ケンタロ…?名前ながいのぉ」


「呼びにくいならケンでいいぞ?仲間内からはそう呼ばれてるし」


「あいわかった。ケンよ、そなた何処から参られた?」


「俺は宇宙から来たんだ。船に乗ってな」


俺は天井を指差す。眼の前の女の子はほぉ…と納得したような面持ちで続けた。


「星の海から…?もしかして先日の轟音と地揺れはそなたの仕業か?びっくりして皆飛び起きたんじゃぞ」


どうも俺が気絶している間に大変ご迷惑をお掛けしたらしい。ほんと申し訳ございませんでした。

しかし、こんな人里近い場所に墜落してたなんて。巻き込まれて死人とか出てたら洒落にならんかったな…。


「いやぁすまなかった。俺にはどうすることも出来なかったんだ…」


「…なら致し方あるまいの。して、まずはお主に確認せねばならんことがある」


「なんだ?」


翻訳越しなのに随分ババくさい喋り方をする幼女は、立ち上がってこっちに近づき。

俺の匂いを嗅ぎ始めた。


「くんくん……」


「お、おい?」


今度は顔を弄りだす。

ペタペタ触っては「ほぉほぉ」だの「ふむふむ」と勝手に納得していく。なんだってんだ。

ていうかお手々ちっちゃ。


「ふむ…やはりお主………**じゃな?」


周りがザワッ!と一気にどよめきだつ。

今気づいたけど窓の外とかからめっちゃ住民が見物に来てるし。

イベント会場に入りきれなかった立ち客みたいになってる。


「あー……すまん、今の言葉を翻訳出来なかった」


「なんと言えば良いかの…あれじゃ、ほれ…女じゃない人」


「男、って言いたいのか?」


「そうそう、それじゃ」


「なるほど。んでさっき俺が男だと周りが驚いてたが何でだ?」


「…この里には男がおらんからのぉ」


「あー、あれか?何処かに働きに行って女だけってこと?」


「そうではない。言葉通りこの世にはもう、おらぬのじゃ…」


んなわけあるかい。じゃあ君たちはどうやって生まれたんだっての。


「……以前はおったのよ。じゃが…」


ミユシスの表情が曇る。

一体何があったんだ……?

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