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惑星ケモミミα  作者: 梅しそ ほろろ
2章 旅人は語る
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人間の根源は欲

ゴォォ…


<<ドローンNo3 テイクオフ。ギアアップ、ポジティブレート>>


赤ん坊の世話ですっかり忘れてたドローンの整備。それが今日ようやく終わった。

整備と言っても、以前キノコ星人から借りてきたタキオン通信アンテナを腹にくくりつけただけの粗雑な改造。

ライムにドローンへ懸架するパイロンを作ってもらったは良いものの。

中身はみっちり詰まってて、ビス穴ひとつでも開けると壊れそうだったもんで。

もう面倒だったのでテープでグルグル巻きにした。

大丈夫、宇宙最強と名高いスペースダクトテープだから。絶対に剥がれない。


「…本当にあれで平気なんでしょうか。おっこちたりしませんか…?」


「へーきへーき。あれだけガッチリ巻いてたらドローンが墜落しようが外れねぇ」


<<通信プロトコルテスト終了。墜落船とのデータリンクを確立しました>>


ARでキノコ星人の顔が浮かび上がる。こちらの様子も届いているだろう。

今まではドローンの電波中継で通話くらいしか出来なかったが、これでデータ通信も可能になった。

別れ際に約束していた2200年分くらいの宇宙史。ようやく送ってやれそうだ。


『あー、やっと繋がったんだ。待ってたよ』


「ようシイタケ。お前は優雅にアニメ見てただけだろうが~!こっちは忙しいってのによー」


『よく言うよ、暇さえあれば通話で文句言ってきた癖に。やぁライム、調子はどうだい』


「はい!元気です!シイタケさんはお変わりないですか」


『無いんだなぁそれが。僕も背とか伸びないかなー』


あれ以上デカくなったらドア開けても部屋から出れなさそうだな…


「あぁそうだ…通信テストついでで何だけど、お前自前の船ないの?」


『何さ藪から棒に。当然あるよ』


「それならよぉ、軌道上から全球のスペクトラムスキャンとか出来ないか?ドローンだけだと生物系の探査難しくてさ」


別にドローンでも地表にいる動物の撮影くらいなら問題はない。

ただ大気圏内の飛行を続けてるもんで、どうしても雲とか密林があると探しにくい。

その点、スペクトラムスキャナーならそういうのお構いなし。

動物だけに絞って撮影すれば真上から丸見え。入浴中の温泉の撮影?それは頼んでません。


『あるよ、確か~…えーと、どの船に持たせてたっけ』


「そんなに船持ってんの!?かーっ!これだから金持ちは!」


『うーん、忘れちゃった。まぁ見つけたらやっとくよ。んで何探してるの?』


「なんか山みたいにデカい巨大生物らしいぞ」


『山だって?あははは!そんなの居るわけじゃん!』


「俺もそう思うんだけどな?まぁ頼むわ」


『ふーん。そんなの放った覚えないけどなぁ。じゃあ調べとくねー』


「おう頼む」


「シイタケさん、私もお願いしたい事が」


『なんだい?』


「子作りの参考に別のエロ同人「言わせねーよ!?送るなよ!!絶対に送るなよ!?」


『はいはい、それはすぐ用意するよ。じゃねー』


「送らんでいいって!おい!」


「…ミキュッ ムキュゥ」


「…消しなさい」


<<タキオンアンテナの効果は実証されましたね。墜落船にデータ送信開始>>


「最初の通信がエロ同人はダメだろ…」


・・・


とりあえずこれでシマナガスとやらが見つかれば良いんだが。

さて、今日の次のタスクは…


「とーちゃ!」「ちゃ!」


「おぉ?ソラにタウ。勝手に外出歩いて良いのか~?母ちゃんに叱られるぞぉ」


村に戻ると、マルチルに連れられてソラシスとケンタウリが村の広場で遊んでいた。

自分で名付けといてなんだが、俺の名前とケンタウリの名前が被りまくって大変ややこしい。

俺が名前を安直に決めちまうのは反省してるが、今更言ってもしょうがない。

なので最近はタウと短く呼ぶことにしている。ソラシスはソラな。


「ケン!おかえり」


「マルチル。ミユシスは何処に?」


「族長は疲れちゃって寝てるの。邪魔にならないように、ね?」


「あぁ。なるほどな」


二人の赤ん坊はもう歩ける。つい先日立ったばかりなのに。

しかも俺が親なのも認識してるし、とんでもない成長速度だ。


「りゃーむ!」「あうあー」


「ふふっ、可愛い…双子ちゃん今日も元気いっぱいですね」


ライムの事もちゃんと理解ってる。さすがにまだオムツは取れないがこの調子ならすぐ会話すら出来そうだ。

まだ0歳だぜ?神童だろホント……あ、ライムも0歳だったわ。こっちはガチ。


「ミユシスが寝てるとなると報告は後だな…毛糸作りのほうはどうなってるだろ」


「それならさっきキナコが来てたよ?材料無くなりそうって」


「あ、あの山盛りがもう……まぁすぐ集まるからいいか」


ミャーオ族の村人達はどうもモノ作りが好きらしい。

キナコはすぐに毛糸作りも覚えたし、かぎ針を渡して布編みもしている。

ライムが試しに試作品を編んだのだが、すぐに覚えて出来るようになった。

草から布作りするよりよっぽど順調だ。

もうだいぶ俺が考えていた初期の施策は進んだな…


「あとは畑くらいかな…種子さえどうにかなればもっと試せる事増えるんだが」


「ですね…村の近くの森には自生している麦のような植物はありませんでした。もう少し草原に近いエリアを探さないと」


「あの亜麻みたいな草も思ったよりないもんなぁ。群生してる場所探さなきゃな?」


「ドローンの撮影で大陸の地図データは完成してますから、それっぽい所に行きたいですね」


「だな。だがそうなると、数日は村を空けなきゃならんのだが……」


マルチルと双子が遊んでいる。

本当に今、俺がこの村を離れて大丈夫だろうか。もう少し様子見したほうが良いような気はする。

いや、子供もそうだけどミユシスが心配なんだ。

夜泣きも減ったとはいえ、夜の間彼女だけに任せるのは…


「……もう少し季節が進んだほうが特徴的にも見つかりやすいんだよな?」


「そうですね。麦は穂が垂れますし、麻も花が咲く時期以外は枯れたほうが目立つと思います」


「では探索はもう少しだけ延期しよう。冬とやらが来るまでに行ければいいさ」


「はい、艦長」


「とーちゃ!」「きゃぷー」


「んー?そうだ父ちゃんは艦長なんだぞ!船にのってビューンだ!」


「きゃっきゃ!」「きゃー」


…単におれが子供達と離れたくないだけかもな。親バカになっちまったもんだ。



・ ・ ・



畑仕事を終えて一休み。

最初は実験的な家庭菜園のような小さな畑だったんだけど、今はひと目見ただけで畑だと理解るくらいに開墾出来た。

ただ、今の道具だとこれ以上は広げるのは厳しいと感じる。

やはり鉄製の農機具くらいは欲しい。欲を言えば重機…は、無理か。

サンパチのぶっ壊れたパーツをかき集めた金属片を再加工して、スコップくらいは用意した。


しかしこの道具はケモミミ達が自力で作ったものではなく俺の持ち出しだ。

ミャーオ族の娘達も構造は理解してくれたが、鉱石から金属を取り出して加工する施設が村にはまだない。

さすがに鉱山開発するとかそんな大げさな事はいわないが、露天の鉱石採取出来る場所すらまだ目星を付けてないのだ。

仮に加工が用意な銅を見つけれたとして。銅冶金術なんぞ村人が理解出来るもんだろうか?

でもケモミミ達がアクセサリーで付けてるマラカイトなんかは叩いたらそれっぽい形になるのを理解してるし………


あー、ダメダメだ。こんなのグルグル考えたって頭が重くなってくる。

もっと単純に考えなきゃダメだ。畑!耕す!これ便利!くらいの技術が必要だ…

はぁー、地球の古代人はなんかもっと便利なの思いつかなかったわけ?

ミャーオ族よりは先進的で、なんかこう……


「サンパチよぉ。畑一瞬で耕せて雑草だけぶっ飛ぶ魔法みたいなの無い?作物モッサモッサ出来るの」


<<該当無し>>


「ワオ、辛辣。せめて検索くらいしてから言えよ」


<<少人数でブレイクスルーを起こすには機械農業の導入以外ありえません>>


「結局そこに戻るのね。麻布作りと言い、俺は高望みしすぎか?」


<<艦長の理想は気高い物です。しかし人類は全ての理想を実現出来る能力をまだ獲得していません>>


「うへ、今度は哲学かよ…俺の一番苦手なやつだぞ」


<<彼女達の教導は一朝一夕では完了しないでしょう。もっと根源から始められては如何でしょうか>>


「根源、とは?」


<<人間の根源は欲です。彼女達がまず何を望むか調査してから順に実行すべきかと思われます>>


「………そりゃ一番難しい課題かもな」


村人達の望みは何だろう。

綺麗な服が欲しい。子供が欲しい。それは知ってる、もう聞いた。


もし、たった一つだけ望みが叶うなら?皆は何を望むだろうか。


ミユシスはもっと側に居て欲しいという。

マルチルは最近本気で子供欲しいとか言うんだよなぁ…。

ライムもそうだっけか?まったく簡単に言ってくれるぜ。

キキルパは?彼女は自然に自分の欲望を叶えている気が…あれ?キキルパも番だったっけ?

他の皆は?まだ聞いたこと無い彼女達は何を願うのだろう…。


"ケンは全能の神ではない"


…そうだな、ミユシス。俺は神じゃない。人間だ。

俺が幸せにならねば意味がないとも言ってたか。

てことは俺の欲は皆の幸せってこと?


なーんか違うんだよなぁ。

俺ただの貨物船の艦長なんだから、そんなハーレムなんぞ作って王様みたいなの身の丈にあってねーよ。

……いっそ冒険家にでもなっちゃうか。面白そうだし。


◯スペースダクトテープ


一度くっついたらもう二度と剥がれない最強のテープ。

専用のレーザーカッターでしか切断できず、これまた専用の溶剤がないと絶対に剥がれない為、扱いには注意を要する。

よく貼り付け作業時に手袋の指先がくっついてしまい、作業員が途方に暮れる事例が多い。



◯スペクトラムスキャナー


探査船が用いる惑星観測装置の一種。

高エネルギーフォトンビームを用いる事でカメラによる光学ズームよりも広範囲かつ精細な画像を得られる。

重量と大きさの嵩張る既存のカメラレンズよりも保守運用が容易く、軌道上からの調査を行う場合は大変有用な装備である。

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