逃さぬぞ
おはようございました。ケンタローです。
一晩中ミユシスの相手をしたので、さすがの俺もちょっとへとへとです。
あぁ大丈夫。安心してください!まだ童貞ですよ!
こんなクソ薄い壁しかない家で子作りなんぞ出来るかぁ!俺は文明人なの!野蛮ちがうの!…はぁ、クッソ眠い。
「んむ…くぁぁぁ…」
「…おはようミユシス」
着物が乱れて眠そうな目を擦りながら、大きなあくびをして俺の隣でミユシスが体を起こす。
端から見たらどうみても事後。しかし事後ではない。
「む…起きておったか、この馬鹿者め」
「バカとはなんだよぉ。精一杯ご奉仕しただろうが」
「うるさい大馬鹿者ぉ!あんな、あんなにじゃなぁ…///わしの尻尾を好き放題甚振りおって!!」
「あぁすっげー気持ちよさそうにしてたな?」
「たーわーけ!!途中何度気を失いそうになったか…あれ、あたま真っ白になるんじゃぞ!ばーか!///」
再確認したんですが、どうも彼女達は尻尾を撫で回されるとその…大変エッチな気分になっちゃうようです。
多分ご満足いただけたと思うのですが、ご不満の様子。
「…このたわけ!ふん!」
理解ってます。子作りしたかったんだよね。はい、俺もです。
とはいってもこの家でおっぱじめるには躊躇する。
俺の倫理観と彼女達の常識は噛み合わないかも知れないが…細かい事気にせずもっと本能に従って生きたほうが楽だろうか?
仮にそうだとしてもね?恥ずかしいもんは恥ずかしいの!いやじゃいやじゃ、子作り生放送なんぞしとうない。
「……今晩はするんじゃからな」
「あ、俺今夜用事が…あれとかこれとかぁ」
「ええい、今日という今日は逃さぬぞ!!覚悟しておれ!」
「はい…」
今晩も寝れそうにないなぁ…
・・・
さて。本日のタスクはミャーオ族との交流だ。
思えばずっとミャーオ族の娘達とは中々話す機会が無かった。
ミユシスの家に集まってもらった村人の総数は12名。様々な柄の猫耳と尻尾が一同に並ぶ。
そんな中で一人。白い毛並みの娘が目立った。
「んぐるみゃぁぁ……なぁぅ…」
「やぁ、今日は来てくれてありがとう。ええと、君のお名前は?」
「んぁぅ…んなぁあ~~~おぅ、みゃぁーお」
「……なんて?」
代表の白い猫耳娘は俺に語りかけてくる…。だが何を言ってるのかさっぱり判らない。
「おい、サンパチ…今度こそコミュ完全にぶっ壊れたぞ」
<<未知の言語を検知。村の言語と一致しません>>
またかよぉ!どうするやっちゃう?古来より船乗りに伝わりしジェスチャー大会開催する!?
「あぁ、ケンはミャーオ族の言葉はわからぬのじゃな。無理もない、キナコはわしらの言葉は喋れんからの」
じゃあ他の喋れる奴に代表任せてくれよ…
だが詳しく聞いてみると、ミャーオ族を取りまとめられる存在はキナコだけなのだという。
理由はなんと、御年驚きの485歳。圧倒的御長寿、そりゃ他の娘には荷が重い。
ぱっと見485歳とは思えないし、肌も全然老化してない。ケモミミ脅威の美肌力。ただ毛並みは…少し荒れていると感じる。
「485歳…!?す、すごいご高齢だな…」
「そうじゃな、キナコは里の中でも一番年老いておる。走り回ったりは出来ぬが、それでもまだまだ元気じゃよ」
「むにゃぁ」
とりあえず言葉がわからんのはどうしようも無いので、ミユシスに通訳をしてもらう。
キナコが言うには、かつて山を超えた先にカルカーン王国なるミャーオ族の大きな国があったこと。
そして国では農耕も行っており、それどころか金属加工にまで手を出していたという。俺が想定していたより遥かに文明が進んでいた国だった。
「みゃぅ。んなぁぁ……みゃーお、んぐるぅ…うにゃむにゃ」
「ふむふむ、王がおった頃はすごい賑いじゃったと言っておるぞ」
「なるほど…しかしどうしてそんな先進的な国が滅んだんだ?男子が生まれにくいにしても、国の維持はここと同じで出来ん事は無いだろ」
「んみゃぅ…」
俺の意見をミユシスに通訳してもらうと。なんとも辛い過去が浮き彫りになった。
カルカーン王国は大陸一の栄華を極め、出生率の問題こそあれども長寿命な多数の住民達が居るおかげで…しばらくは安泰なはずだった。
しかしある日、それはそれは大きな…想像を絶する巨大な獣が、突然街の中心にやってきて暴れ狂ったのだという。
人は直接襲われなかったものの、建物は崩壊し畑は掘り起こされ甚大な被害がでてしまったらしい。国が滅ぶ程の災害だ。
その災害級の怪物。名前はシマナガス。
「なんだその化け物は!?どんだけデカいんだよ…」
「シマナガス…わしも言い伝えを聞いたことがあるのぅ。なんでも海からひとたび飛び上がれば波で島が沈み、陸に上がれば山を喰らい尽くしてしまうのじゃとか」
「おいおい、そんなのに出くわしたらここも危ないぞ。…サンパチ、ドローン映像に近しい生き物は写ってたか?」
<<アーカイブ検索中。………該当なし。カルビーを超える大きさの土着生物はまだ観測されていません>>
「話を聞く限り、宇宙船よりデカそうだぞ…そんなもん居たら一発でわかりそうなもんだが」
<<近しい生物を発見した場合はまたご報告します>>
「頼む。あぁそれとライムに通信を中継してくれ。…ライム、今いいか?」
『はい、大丈夫です(ドーン)どうされましたか?(ギャー!ワンワーン!)』
「…何か後ろが騒がしいな。狩りの途中なんだよな?かけなおすか?」
ライムは今、キキルパ達についていって狩りの勉強をしている。ついでになんか食えそうな野菜っぽいのあったら持って帰るミッション。
『大丈夫、通信くらい平気ですので(ドゴォンッ!!)キキルパさーん、こっち終わりましたよー』
「あ、あぁ…それでだな。村人にシマナガスとかいうでっかい生き物を知ってる子が居たら詳細聞いといてくれ」
『かしこまりました。ではすぐに…どうしましたキキルパさん。えっ、これ食べれない?ミンチより酷い…?』
…何やってんだろうあの子。怖くて現場は確認したくない。嘘だといってよライム。
「……うん、報告は後でいいから。そっちも程々にな?」
『はい…では後ほど。うぅ、失敗しちゃった…』
ライムとの通信を終える。
シマナガスとやらのインパクトがデカすぎてすぐにでも動きたいが…今は出来ることが少ない。
とりあえず当初の目的通り情報収集に徹しよう。
「ケンよ、他にミャーオ族の者達に聞きたい事はあるかの?」
「えーと、そうだな……あ、農具作ってたんだよな?それってどういう…」
俺は引き続き情報を集めるべく、聞き取りを続けた。
・・・
今日一日で集めた情報を纏めてみる。
ミャーオ族には期待してた通り原始的な農業知識を持った子が数人いた。
特にキナコは博識で、カルカーン王国で行われていた種まきや収穫の様子などを細かく教えてくれた。他にも金属を使った農具まで作っていたらしい。
サンパチにビッグデータと比較検証を頼んでみた所、かなり地球で行われていたものに近いそうだ。
これなら種さえ見つければ穀物栽培とかも出来そう。久々にパンが食えるかな?
他にも農業ではないが、食べられる植物に詳しい子もいるようだ。今度彼女と一緒にライムを同行させて植物調査も行おう。
…あとは頭が痛いのがシマナガスとかいう災害級の巨大生物の存在。まだまだ未確定情報しかないが、存在するのは確か。
都市規模の集落を破壊するような危険生物を放っておくわけにはいかない。いずれ対処せねばならず、まだまだ悩みの種は尽きなさそうだ…。
「なんじゃケン、まだやっておるのか」
「…いや、もう終わる所だよ」
俺は船から持ってきたスマート端末にメモを書き終える。
仕事も大事だが、日も落ちて外も暗くなったし…良い加減、船に戻って休むか。
「ぐっ、う~!肩こっちまった」
「おつかれさまじゃの。ほれ、疲れた時はこれを飲むとよい」
「…何だこれ?」
ミユシスに手渡されたのは緑がかったお湯の入った湯呑み。
匂いはあまりしない…
「里の近くで取れた香りの高い若木を煮出したものじゃよ。気分が落ち着くぞ?」
「へぇ…ずずっ、あ。これグリーンティーだ」
「ほう?そなたの故郷にも似たようなものが?」
「あぁ、母ちゃんが好きでよく飲んでたな……ん、うまい」
「あんまり採れるものでも無くてのぅ。今日ライムに頼んで探してきてもらったのじゃ」
へー、ミッションコンプリートしてんじゃん。
後で報告を聞くつもりだったが、これだけでも評価A+だね。
「あとはこれなんかもオススメじゃぞ」
そう言って小さなお盆に乗せて出されたのは、ひとくちサイズの紫色をした果実。
「これは?」
「うむ、これは皮なめしに使う果実を壺に入れて寝かせた物なんじゃが…食べると気分が高揚して元気が湧くのじゃ。」
「へー、いただきます」
ぱくっ。
……んん?ジューシーだけどなんか渋い…いや。いや!?
これ、ワインだ!!
「うっっっま!なんだよこれすげー美味いじゃんか!」
「あんまり幼子は食べんがの。腹持ちは悪いが、好きな者はいくらでも食べおる」
「俺これ好き!おかわり!」
「お、いける口か?今日ケンは頑張っておった、好きなだけ食べるがよいぞ~」
「なんだよ、こんな良いもんあるなんて知らなかったな…ぱくぱく」
「…どんどん食うのじゃ。おかわりもあるぞ…」
「もぐもぐ…あぁ~~~テンション上がってきた!うぇーい!」
「………まぁ、食べ過ぎると…あれじゃがの?くふふ…」
・ ・ ・
「……ぐぉ?」
いかん。何時の間にか寝ていたぞ。
窓からは朝特有のひんやりした空気と、柔らかな日差しが差し込む。
やっちまった、ライムとサンパチに何の連絡も無しに外泊を……ふぁぁ、顔洗ったら連絡するか。
「ん、ぅぅ…」
毛皮を敷き詰めた同じ布団。隣でミユシスが寝ている。
しかし何故か。裸で。
「…?」
そして何故。俺まで裸なんだ……
着ていた宇宙服とインナーは雑に脱ぎ捨てられていた。猛烈に嫌な予感がする。
「……ん、ぅ…今日もそなたが先に目覚めておったか。くぁぁ、早起きじゃのぉ…」
「お、おは、おはよう。いいい良い朝だ」
「うむ、でもまだちょっと寒いのじゃ…」
ミユシスが俺に手を回して、寄り添う。
ぷにゅ、と感じるこの控えめな膨らみの感触と温もりは…完全に素肌同士の密着。
掛布団代わりに使っていた毛皮がはらりと落ち、ミユシスの胸やらなんやらが顕になる。
なんだってこんな状態なんだ。まるでこれでは俺とミユシスが
「ってなんじゃこりゃあああ!!」
「ッ!?なんじゃいきなり!朝っぱらから大声出すでない!びっくりしたではないかぁ」
「ばっ、おまっ…なんだこれ!どういうこった!!」
「どうって…そなた何も覚えておらんのか?」
「記憶にございません!!ナニがあったんですかぁ!?」
「そうさなぁ…昨夜のそなたは激しかったぞぉ?あんなにも必死に求められては、わしも…きゃー」
ミユシスは頬を染めながら、尻尾をふりふりと振る。
あ、あ、あぁぁ…
やっちまったああああああ!!
違うんですおまわりさん!俺は無実です!!
「いやー、あれは絶対孕んだのぉー。あんなに何度も何度も注がれては、間違いないじゃろなぁ」
ミユシスの口から出る状況証拠がグサグサと俺に刺さる。
俺は昨晩の記憶なんて全然……もしかして?
「ミユシス、お前~!あれか!?昨日のワインの味するやつか!?あれのせいか!?」
「わしは言ったぞ?もうそのへんにしておけと」
「それも記憶にございません」
「まぁ、飽きもせずぱくぱくと…その後はもう、ガオパルドンの如きじゃったなぁ。食われるかと思ったわい」
…もう否定のしようもない。卒業しちゃったみたいです。ていうかガオパルドンってなんだよ…。
「はぁ……やっちまったもんは仕方ない。ミユシス、お前一度船に来いよ。あちこち心配だ、検査させてくれ」
「なんじゃ、もう褥から出るのか?もうちょっと…このままで、な?」
「うぐっ……ちょっとだけだぞ!!」
「なんじゃ今更照れおって……くふふふ」
そう言うミユシスも少し恥ずかしそうな表情で笑う。なんだかいつもの5割増しで可愛く見える。
…あー、とうとうやっちまった。手を出しちまった。おまわりさん、俺がやりました…。
まだ村人達は寝ているのか、静かな空気の部屋で二人身を寄せ合う。
俺は今まで味わったことのない幸福感を肌で感じていた。