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惑星ケモミミα  作者: 梅しそ ほろろ
1章 ケモミミの惑星
12/35

墜落船



墜落船、戦艦の内部。


砲塔内にあったタラップから下に降りてみると、通路には非常灯のような明かりがついている。

よく判らん怪電波を垂れ流してるくらいだからもしかして…と思っていたが。どうやら艦内の電源は生きてるらしい。

ますます警戒が高まる。古くても軍艦、必ず白兵戦用の防衛兵器くらいはあるはずだ…。


俺は壁沿いに手を付きながらゆっくり前進する。

時々立ち止まってしゃがんでは、通路の先の安全を確認。数歩進んでは止まりを繰り返しながら進んだ。

船内は気持ち悪いくらい綺麗だ。乗組員の白骨死体ひとつくらいは覚悟してたのに。


「…ライム、何かあるか?」


<<艦長、右前方のドアにご注意ください。不規則な信号が発生しています>>


通路にある無数のドア。沢山のドアが並ぶ中で1つだけ緑のランプが点っていた。


「ドア…あれか。よし、近づくぞ…」


俺がドアに近づくと、キーロックが勝手に反応する。

どうも数字を入力してロックを開けるタイプらしい。


<<すでにロックは解除されているようです>>


「なんで理解るんだ?」


<<OPEN、と表示されています>>


よく目を凝らすと、少し薄汚れたモニタの下に文字。

指でなぞってみるとハッキリとOPEN、と書いてあった。

緊張しすぎか…?言われるまで気が付けなかった。


「ふー…英語か?慣れ親しんだ言語見るとちょっと落ち着いたわ。にしてもなんでロックが解除されたんだろう」


<<そのドッグタグに反応して開いたみたいですね。おそらく船員の遺品なのでは?>>


「あぁ…。なるほどね」


思わぬ所でキキルパのお守りが役に立った。

ドアに手をかざすと、バシュッ!と音を立てて横にスライドする。

部屋の中は薄暗く、沢山のロッカーが並んでいた。

ここは倉庫か何かかな。


「……よし、脅威はないな?クリア」


<<生体反応もありませんね。無人のようです>>


俺は安堵の溜息を付く。まぁ当たり前に無人だよね、なんせ古代の軍艦だもの。

ドア開けた瞬間、かかったな阿呆がぁ!と腕を十字に組んだおっさんが突っ込んでくるとか、上から来るぞ気をつけろ!と下り階段でも出て来るかと思ったがそんな事は無かったぜ。

仮にそうだったとしたら、そんなクソゲー秒でやめるが。


「うわ、ホコリめっちゃ積もってるな…ん?」


入ってすぐ、ドアの隣。何か箱のようなものがある。ゴミ箱か…?

なんだろう、と手を伸ばしてホコリをはらうと。


グポーン…


何か猛烈に嫌な予感がする電子音がした。


<<艦長…不用意に設置物へ手を触れるのは危険ですよ?>>


「今それ言うの!?今更だよねぇ!?」


俺は急いで後退する。

箱があった方を振り返って今一度見ると、ウィウィウィ…と機械音を立てながら箱から"足"が複数生え始めた。

同時に中央部分がガキョッ!と開いて赤色のレーザー光が複数伸びだす。


<<警告、照準補正用の測距レーザーと推測>>


「そんなの見りゃ理解る!!!絶対やべー奴って、事くらい、は!!」


俺は一目散に部屋を出て駆け出した。

同時に後ろからガショガショガショ!とさっきの箱が追いかけてくるのを感じる。


通路の曲がり角を転がる勢いでターンすると、0.5秒前に居たであろう場所に弾丸が着弾した。


キュィィイッ ダラララッ!ズバババッ


「うおぁあああぶねええ!!」


いやいや警告無しかよ!なんとなくそんな気はしてたけど!

せめて!せめて一言くらい!あったってぇ!

お前を◯す…デデン!だとかぁ!

貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだパパパウアードドン、だとかぁ!!


今の一撃で諦めてくれるとは思わない。俺は一本道をひたすらにつっ走った。


<<旧文明の白兵戦闘ボットのようですね…後方注意>>


ドンッ!ドンドンッ!ガシャァン


「ほんっっっと野蛮だなぁ古代の連中は!実弾なんて!!今どき!!流行らねえんだよおお!!」


<<叫んでないで逃げてください艦長。追いつかれますよ>>


「言われ無くたってぇ!!」


・・・


ダラララッ!ダララララッ!バスバスバスッチュイーンッチュンッ

ドドンッ ドーンッ

ズドドド ブッピガァン


時間にして数分の逃避行。捕まればジ・エンド。相手は全く諦めてくれる様子はない。

俺達はどんどん船の奥へ追い込まれていく。


「ハァッ、ハァ、ああくそ!キリがねぇ、ライム何か対応策!」


<<ショックガンのパルスモードをお試しになりますか?>>


「効くのか!?あの物騒な箱に!!」


パルスモード。それはショックガンのモードのうちで唯一、物理的な効果がある射撃だ。

専用のデモリッションカートリッジを装填しておけば、故障したドアロックを焼き切る程度の荷電粒子ビームが放たれる。

ただ射程は短いし、宇宙船の構造材を焼けると言ってもあんな軍用の兵器に効くかどうかは…


<<最低でも足止め程度は出来るのではないでしょうか>>


「くっ…やるしかねぇ、か!」


ガションガションガション!と大きな音を立てて、戦闘ボットが近づいてくる。

これ以上闇雲に逃げてもこっちの体力が尽きるのが先だ。

覚悟を決めるしかねえ…!


<<照準はこちらでサポートします。合図したら艦長は引き金を引いてください>>


「そりゃご丁寧にどうもっ…!」


俺は曲がり角からやってくる戦闘ボットに、腕だけ出してショックガンの銃口を向ける。

人間だけでは闇雲にしか撃てないブラインドショットでも。

AIが銃越しに補正してくれるなら、話は別。


<<パルスモード。倫理機構による非生態への射撃を許可。セーフティ解除>>


ショックガンが変形して外装が開き、砲身が大きく露出する。


<<目標、脅威対象メインセンサー。粒子充填開始。チャンバー内加圧中、エナジーセル直結完了>>


さすがに通常使うような麻痺弾や目眩ましのフラッシュに比べて色々準備がある様子だが。

今は1分1秒を争う、敵はもう目前。


「まだか!?」


AIの補正で宇宙服がギュッと締まり、ピタリと狙いを定めて固まった。


<<フルボルテージ。撃てます>>


「…ッ! 当たれよ!!」


キュキュキュ、ビキューンッ


引き金を引くと、荷電された小さな粒子金属が砲口で縮退し。すぐに撃ち放たれる。

その輝く光の矢はまっすぐに戦闘ボットの中央を撃ち抜き。銃弾程度なら弾き返せそうな金属ボディを、いとも簡単に焼き溶かしながら貫通した。


ガショ、ガショ…キュゥゥウン…


<<目標、沈黙。セーフティロックします>>


使い終わったカートリッジをバコンッと音を立てて排出して、砲身から冷却ガスがプシューッと噴き出る。

ショックガンはすぐに元の形に戻った。


や、やったか…?もう平気?発狂モードとかにならないよね?

緊張していた糸が解れるとはこの事だろう。

俺はショックガンのグリップを握りしめたまま、壁にもたれかかってズルズルと座り込んだ。ちょっとだけ休憩だ…。


「はあぁぁ……会社の緊急対応訓練でもこんなおっかねぇの使った事無ぇよぉ……」


<<それは良い訓練になりましたね。少々ハードだったようですが>>


「実弾なんぞぶっぱなしてくる標的なんていてたまるか!…マジで恐れ入ったぜ」


<<艦長の勇姿はしっかり保存しておきますね>>


今どきの宇宙戦争、いや海賊だって実弾銃なんてまず使わない。そんなのAIのライムだって想定外だっただろう。

そりゃ兵器の中でも全部が全部エネルギー兵器って訳じゃなくて、中には炸薬弾頭の対ドロイドミサイルとかもあるよ?

だとしても人間相手にそんなもん使わねぇし、弾の無駄。何より重いし嵩張るしコスパも悪すぎて補給とか大変だろ。


俺は軍隊なんて入った事もないし、入りたくもないけどさー。

人間相手に実弾なんぞバカスカ撃ってくる野蛮な敵と前線で戦えとか言われたら…我先に敵前逃亡するね。命大事。


「…あんな鉛弾なんかで死にたくねぇや」


<<死ぬなんて大げさな。あの程度の質量弾では宇宙服は貫通出来ませんよ?艦長は痛いでしょうけど>>


「そりゃねぇ~?仮に死ななくても、お れ は すっげー痛いよね~?」


たしかにデブリ対策済みのスーツを貫通は出来んだろうな。でもキキルパに噛まれて防御機構がフル稼働した前例あるんだわ。

マジで痛いんだぞあれ。あんなの連続で食らえるか。


<<そうならなくて良かったです>>


「まったくだ…よくやった、ライム」


<<弊社製品をご愛顧頂き、ありがとうございます>>



・ ・ ・ 



闇雲に走ったせいで、現在地はさっぱりわからない。

通ってきた道はライムがマッピングしてるので帰りは大丈夫だ。探索を続けよう。

俺達は船のメイン中枢へ行ってみることにした。何かしら情報があるかもしれない。

しかしまたさっきみたいな戦闘ロボが現れても困るので。ライムに索敵して貰いつつ今度こそ慎重に進む。

もう余計なもんは触りません。まったくこの星に来てからというもの、命いくつあっても足りん。


しばらく進むと分かれ道。ご丁寧に行き先案内のプレートが掲げられている。


<<この案内板の表記通りなら右側は医療ルームのようですが…>>


「あー。なにか使えそうな医薬品とかあるかな?腐って無ければだが」


<<道具類を持ち帰れば村で有効活用出来るかもしれませんね>>


「そうだな…よし、確認してみるか」


俺達は入り口の周囲を注意深く見渡す。

どうやら医療ルームのドアも施錠されていないようだ。


「開けるぞ」


<<了解>>


プシュッ、と医療ルームのドアが開いて中を覗く。

一見して部屋にあるのは…負傷者用のベッドだろうか。それに机と。

あとは…



<<…艦長、止まってください。生体反応があります>>


「…何だって?」


<<その奥の部屋からです。生体熱源を2つ感知>>


生き残りが居る?馬鹿な。

こんな古い船にそんなのが居るわけがない。

なら、何だ。


ガタッ、ゴソ…


物音がする。確かに居る。


「…野生動物か?」


<<ひとつはかなり大型です。細心の注意を>>


「理解ってる」


俺達は小声で話ながら、ゆっくり奥の部屋に近づく。

壁越しにショックガンを構えて、もう少し様子を伺うと。


モキュ……ミキャ…キュキュ…


なんだ…?この音…聞き覚えがあるな。

なんだったか……


俺はこっそりと顔を出して中を確認してみる。

そこには体長2mくらいはある、とても大きな。


もぞもぞ蠢く、キノコが居た。



「…モキュ!モキュキュァ…ミキュムキュ」


「……キノコ、星人?」


キノコ星人。それはステラノームの一員にして、宇宙において最も古いと言われる種族の1つ。

見た目はまんまキノコ。でもキノコではない。こんな見た目でも立派な知的生命体。

モキュモキュ言ってるが、これも実は喋ってるわけではない。そもそもコイツらは発音器官が無いから喋れない。

単に触手が動く時、独特の音が出るだけ。そこが可愛いっていう奴もいるが…。俺はあの触手がちょっと苦手だ。


<<コミュニケータ、起動>>


モキュァ~キュキュ ミキュゥ

『これは驚いた!君地球人かい?』


相対するキノコ星人のテレパス会話を、コミュニケータが自動翻訳する。

久々にまともな会話出来る相手に出会ったもんだ。俺はショックガンをゆっくり降ろしてホルスターに入れた。


「……なんでこんな所にキノコ星人なんているんだ」


ミキュキュモキュー モッキュキュ

『それはこちらの台詞だね。ここはギャラクシーマップに載っていないプライベート惑星のはずだよ?』


「この惑星私有地なのかよ…まぁ話せば長くなるんだが。それよりあんた、こんな所で何をしてる?」


キュッキュキュミキュッ モキュキュ

『それこそ長くなるんだけどね?興味あるかい』


「あぁ、大いにあるね。俺はケン。あんた名前は?」


キュモーキュ

『じゃあシイタケって呼んでよ。この船のクルーがニックネーム付けてくれたんだよね』


「シイ、タケ………?」


どう見ても椎茸ではない。

真っ赤な笠にクリーム色の毛並み。

……とても食えそうには見えない。たぶん食ったら死ぬやつ。


ミキュゥモキュモキャ

『中々良い名前だろ?とても気に入ってるんだ~』


「そうか…いや、あんたがそれでいいなら…」



・ ・ ・

◯地球統合軍の戦闘ボット


ゴミ箱サイズの円柱に6本の足が生えた旧式の戦闘用ドローン。

稼働時の全高は1.2m 重量250kg


複数のセンサーで警戒可能であり、段差などがあっても乗り越えて動作する。ただし然程移動は速くない。

非アクティブ時は足を格納可能で、省スペースに配置出来る。

墜落船に搭載されていたものは機関銃とグレネードが内蔵されていた。


◯ショックガン


人類標準歴2240年現在で軍から民間まで広く普及している護身用携帯火器。

セレクターを切り替える事で、目眩まし用のフラッシュや電気ショックで痺れさせたり出来る。有効射程は5mくらい。

最大充電で24回射撃可能で、バッテリーを交換すれば連続使用出来る。


パルスモードに設定すると、構造物を破壊可能な荷電粒子ビームを発射可能。

ただし電力消費と砲身加熱が大きいので、最大発射数は2発に制限される。また専用のデモリッションカートリッジが必要。

主な用途は緊急時の障害物排除であり、パルスモードでの射撃は生体への使用を原則禁じられている。射線の安全確保が出来ない場合はロックされる。

民間用のショックガンでも使用することは可能であるが、このモードを使う時は余程の事態である。


あくまで護身用なので大きさは現代の大型拳銃くらい。サイコパスのドミネーターを参考にしますた。


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