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たどりびと ~記憶のかけらに触れる時~  作者: 和尚@二番目な僕と一番の彼女 1,2巻好評発売中
1章 出会いは春の訪れとともに

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1章8話 いなくなったのは何故?


「トラさーん!」「お願い、帰ってきててー!」


 車を脇に停めて降りた俺と茜が後部座席の扉を俺が開けると、絵美と絵夢が我先にと家の中に入っていった。

 俺はそれを見送りながら、続いて詩音が降りてきた後の車の扉を閉めながら、視線を建物にやる。塀でぐるりと囲まれた山田家は、この辺でも少し古い家だがその分大きくどこか積み重ねた圧を感じる家だ。


「大きい家……」


「あぁ、結構広いよな。まぁこの辺は昔ながらの家も多いから、広い家が多いけどな……そういや詩音、お前と姉貴は元々どこに住んでたんだ?」


 そう呟く詩音の言葉を聞いて、俺はそう尋ねる。


「東京のアパートに住んでたから、楽さんの家もそうだけど、広くてびっくりする」


「ちなみに詩音、うちやここよりも、茜の家のほうが相当でかいからな」


 これまで東京に姉貴はいたのか、そう思いながら俺が言うと、茜も俺達の会話が聞こえていたようで、詩音の東京という言葉に反応した。


「へえ、そうなんだ? 私もね、東京に従妹がいるんだよ。とは言っても実際に行ったことは無いから全然わかんないんだけどね」


 俺は会うことは無かったが、冬に一度茜の祖母が危なかった時期に家に従姉妹が訪れていたらしいことは聞いていた。


「うん、でも東京って言っても、ビルとかがたくさんあるところじゃないけど――――あ、絵美ちゃん、絵夢ちゃん……いな、かったんだね」


 そんな茜の言葉に詩音が頷いて説明している途中で、門から再び出てきた二人を見て、そしてその様子に結果を察したように声を掛ける。

 確かに詩音の言う通り、明らかにしょんぼりとした表情で二人がうつむくようにしていた。


「駄目だった、帰ってきてなかった……」「あたし達のこと嫌いになっちゃったのかな?」


 そう言って、きゅっと拳を握るようにして、また二人がしゃがみこんで泣き始めてしまう。


「あぁ、絵美ちゃん、絵夢ちゃん。泣かないで、お姉ちゃんたちも一緒に探すから……それにあんなに仲良く散歩してたんだしさ、嫌いになったわけじゃないよきっと! ねぇ楽?」


 それに慌てたように駆け寄って二人を抱きしめながら、茜が俺にも同意を求めて振り返った。


「お、おお。きっとそうだな……」


 俺もまた、どう言えばいいのかわからないながらに頷く。何度か散歩中の二人を見たことがあるが、吠えたりもせず、大人しそうな犬に見えていたし、茜の言う通り二人にも懐いていたように見えていた。

 そのため、少し疑問に思い、俺は状況を尋ねる。


「そう言えばどういう状態で逃げちまったんだ? ちゃんとは聞いてなかったが、散歩中だったんだろ?」


「ひく……えっとね……今日はいつもの道が工事してたから、遠回りしたんだけど」


「それまで大人しかったのに、急にトラさん走り出しちゃって……ちゃんと掴んでなきゃいけなかったのに、絵夢のせいで」


「絵夢ちゃんのせいじゃないよ! きっと、あたしが撫ですぎちゃったから怒っちゃったんだよ……」


 俺に答えながら、二人がそれぞれ自分のせいだと言って、それぞれみるみるうちに瞳に涙が溜まってこぼれていくのに俺はまた慌てるように頭をかいた。


「あぁ、泣くなって……こういう時はどうすりゃいいんだ? 警察に電話か?」


「どうだろ……迷子の犬の張り紙とかは見かけるけれど」


 ひとまず帰ってきているのじゃないかと甘い考えでいたが、いざ帰っても来ていないとなるとどう探したものか全く思い浮かばない。

 そして、弱ったように茜を見るが、流石に茜も困った顔をしていて。


 そんな俺と茜の様子を見て、ますます絶望的な顔をして二人が泣くというどうしようもない状態を救ったのは、どこか逡巡していた詩音だった。

 詩音が、二人に向けておずおずと尋ねる。


「あのさ……二人共、トラさんは普段はどこにいたの? 見せてもらっても良い?」


「え? それはトラさんのおうちだけど……」「庭にお父さんが作ったお家があるの。どうして?」


 詩音の質問に、二人が顔を上げて首を傾げた。


「信じてくれなくてもいいんだけど、もしかしたら……僕ならトラさんがどこに行ったのかわかるかもしれないから」


「「ほんとう!?」」


 その言葉に、二人は涙を止めて飛び上がるようにして立ち上がる。


「……詩音?」


 慰めるためとは言っても、出来ないことを言うとまた二人が泣いてしまう。俺はそう言おうとしたが、詩音の顔を見て、その先の言葉を出すのを止めた。


 先程まで、何かに悩んで迷っていたらしき詩音の表情は、今はその何かを決めたようにしていて。

 目の前の、突然現れた甥っ子は、短い付き合いの中でも嘘を付くような子供には見えなかったから。


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