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たどりびと ~記憶のかけらに触れる時~  作者: 和尚@二番目な僕と一番の彼女 1,2巻好評発売中
1章 出会いは春の訪れとともに

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1章7話 双子の少女と犬の行方


「この子は詩音、まだ決まったわけじゃねぇが、おそらくうちに住む事になる。二人とも同級生になんじゃねぇかな?」


「へぇ、そうなんだ、あのね、あたしは絵美」


「あたしは絵夢! よろしくね!」


 俺がまずはということで詩音を紹介すると、詩音がそれに合わせて挨拶をする前に興味津々といった二人が我先にと自己紹介をする。

 それを見て、コミュニケーション能力が高いやつは、子どもの時からそうだよなぁと詮無いことを考えながら見ていると、詩音がそれに少し圧されるようにしつつもおずおずと言った。


「えっと、久我山詩音です、よろしく」


「詩音ってなんかかっこいい名前だね。あ、あたし達の名字は犬村ね」


「二年生にもなったからきちんと落ち着いて名字も言うようにって言われるんだけど、ついつい忘れちゃうんだよね」


「あはは、絵美ちゃんに、絵夢ちゃん、うん、覚えた……で、さっき言ってたトラさんって?」


 詩音が同じように笑いながら言う二人に釣られるようにして笑いながら、俺と茜も気になっていたことを聞いてくれる。


「……トラさんって、確か、二人のお家で飼ってるあのワンちゃんだよね? いなくなったって?」


 そして、茜もそう言って改めて二人に問いかけた。

 俺も、それを聞いて脳裏に二人が散歩をしている様子を思い出す。

 確か最近、二人の家にやってきた犬だったはずだ。


「……トラさん? 犬なのにトラさん?」


 少しだけ命名に小声で疑問を覚えている詩音のつぶやきが聞こえるが、俺もそう思っていたりする。

 だが、今はそれよりも二人の話を聞くのが先決だった。


「あ、そうだった! 茜姉さん、キンキュージタイなんだよ!」


「そうそう大変なんだって!」


 興奮し始めた二人を少し落ち着かせながら話を聞くと、ここまでで想像はついていた通り、散歩の途中でトラさんが逃げてしまい、慌てて二人で後を追った結果ここまで来てしまったのだという。


「それでね飛び出して行っちゃった方向に二人で来て、聞いてたら犬がこっちに走っていったっていう人が何人もいてね……」


「でも、この辺からもう誰に聞いてもわからなくて…………どうしよう、車に引かれちゃったりしたら……うぅ」


 そして、必死で探していたから抑えられていたのか、それとも説明しながら改めて悪い想像をしてしまったからか、泣き出してしまう二人。


「あの……元気、出して?」


 詩音がそう慰めるも、優しい声をかけられることでますます泣き声が大きくなっていった。


「……もしかしたら、先に家に帰ってるとか無いかな? ほら、犬って帰巣本能あるっていうじゃん?」


「「……ほんと!?」」


 そんな二人に茜がフォローするようにそう言うと、二人がぱっと顔を上げて叫ぶように言う。

 だが、そんなに確証はわかるはずもなく、茜としても黙ってしまった。


「でも、闇雲に探してても仕方ないから、一度家に戻ってみるか……お前らは自転車か?」


 これで家に戻っていましたとなっても良くないし、不確定とはいっても家出した犬が戻ってきたという話もよく聞きはする。

 そう考えた俺が二人に聞くと、二人は首を振って答えた。


「ううん、お散歩の途中だったから、歩いてきたの……」


「じゃあ、チャイルドシートはないけど、安全運転で行くから私の車で行こうか……楽、詩音くん、いいかな?」


 茜がそう尋ねるのに、俺は頷く。 

 流石にこれで駄目とは言えないし、言う気もなかった。


「なぁ、詩音もいいよな?」


「…………え? あぁ、うん、もちろん」


 そして、詩音に問いかけると、どこか難しい顔をして考え込んでいた詩音は、ハッとしたようにして答える。


「どうかしたか?」


 その様子に俺がそう尋ねると、詩音は何かを言おうとして、でも静かに「ううん、何でもない」と言った。明らかに何でもなくないそれに、更に声を掛けるか迷っている俺に、茜達が振り向いて言う。


「楽? どうしたの? 早く車乗って行こ!」


「あぁ、わり。そうだな」


 そう言って俺が助手席に、子供三人は後部座席に乗り込んだのを確認すると、茜は車を発信させた。

 後部座席で詩音たちも話しているようだったが、それとは別に茜と俺は会話を交わす。


「一応、おばさんの連絡先は知ってるからメッセージは入れたんだけどさ、楽はどう思う?」


「今調べた感じだと、散歩中に逃げた犬が戻ってきたって話は結構転がってるんだな……ただ、正直なんとも。結構最近だったよな? あの犬」


「うん、二ヶ月経ってないくらい前だったかな?」


 俺はそれを聞いて、少しミラーで後ろの三人を見ながら、声のトーンを落として言った。


「そうなのか……俺は遠目で見たことくらいしかねぇな。犬は住み始めてどのくらいで家を家として覚えられるもんなのか……」


「二人に懐いてるいい子で、変に吠えたりもしない犬だったんだけどねぇ」


 そうして話をしている間に、少し大きめの道路から細い路地に入って、住宅が並ぶ通りを抜けて、二人の家が見えてくる。

 無事帰ってきていて、良かった良かったになると良いなと思いながら、俺はなんとなくそうはならない気がして、一つため息を吐いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] いや、犬だったw 猫はともかく、犬が一匹で歩いていたらすぐに保健所に回収されそうですから… 果たして見つかるでしょうかね。
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