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たどりびと ~記憶のかけらに触れる時~  作者: 和尚@二番目な僕と一番の彼女 1,2巻好評発売中
3章 わがままな勇気が結ぶもの

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3章12話 手繰り寄せた糸


「あれ……え? 千夏ちゃん!? 何で?」


 私がどこか聞き覚えがある声に振り向くと、そこには去年の冬に会って以来の従妹の姿があった。


「……茜の知り合いか?」


「うん、南野千夏(ちなつ)ちゃん、私の従妹だね。ほら、年末にちらっと話したじゃん?」


「あぁ、雪まつりで抱き合ってたって羨ましがってた……」


 私がそう紹介すると、楽は思い出したというようにそう呟く。それを聞いた千夏ちゃんは一瞬照れた顔をして、ペコリと頭を下げて言った。


「あ、こんにちは、茜さんの従妹の千夏と言います。というか、茜さんそんなことまで話してるの? もう、恥ずかしいなぁ」


「え? いやいや、それだけ衝撃だったと言いますか……えっと、千夏ちゃんはどうしてここに? どこか悪いの?」


「ううん、今お母さんの検診に付き合いで来てて待ち時間だったんだけど。まさか茜さんにこんなところで出会うとは……そしてそっちの人は、彼氏さん? そっちのお子さんは?」


 私と千夏ちゃんがお互いに首を傾げ合いながら話していると。


「あー、俺は茜の幼馴染で久我山楽。こっちは甥の詩音……その、茜にはいつもお世話になってるな。なるほど、言われてみれば茜に似てるか。ほら、詩音も挨拶しな」


 楽が私達を見比べてそう言って、何かに気を取られていた詩音くんもハッとしたように頭を下げた。


「こんにちは、久我山詩音です。二年生です」


「そっかそっか、こんにちは。えっと、久我山さんに、詩音くんね」


 千夏ちゃんがそう言って、そして私の方に来て少しだけ小声で囁くように告げる。


「……ねぇねぇ茜さんいつの間に彼氏でできたの? 年末の時はいないっていってたのに」


「いやいや、彼氏じゃないから。幼馴染だから」


 それに、私もまた小声で否定すると、千夏ちゃんは少し首を傾げるようにして、少しだけいたずらっぽい表情で続けた。


「ふうん。ところで幼馴染と言えば、うちの友人の幼馴染は一度付き合ってたのが別れて友達になって、別れた後でまた付き合い始めたんだけど」


「…………何その話、詳しく聞かせてくれない?」


 完全に釣られてしまった。でも気になる。


「あの……?」


 だが、そんな風に、私と千夏ちゃんが話していると、おずおずと、というように詩音くんが問いかけてきて。


「その……お姉さんの紙袋って、どこのですか?」


 そして、千夏ちゃんが持っている紙袋を指さして、そう告げたのだった。



 ◇◆



「ふーん、なるほど、事情は深くは聞くつもりはないけれど、詩音くんのお母さんを探してて、そのお母さんがこの袋を最近持っているのを見たと」


「はい、僕あまり見たことないなと思って、それで」


 茜の従妹の千夏が、詩音の質問にうんうんと答えてくれる。

 能力のことをぼかしながらで、詩音の説明の割に随分とたどたどしいが、だからこそ逆に違和感なく、親切に応対してくれていた。


「ひとまずこれは、うちがバイトしているケーキ屋さんの紙袋、すぐそこに本店があるんだよね…………あれ? でも久我山? えっと、もしかしたら普通のことだと思うかもだけど質問。詩音くんのお母さんも久我山だよね?」


「え……? うん、そうだけど」


 その中での千夏の質問に、詩音が不思議そうに答えると。


「うーん、似てるかどうかまでは覚えてないな…………お母さんってもしかして髪の長い美人さん?」


「え? もしかして千夏ちゃん知ってるの?」


 そして、そんな風に続けた千夏に俺がまさかと思っていると、茜も同様だったようで質問を口にした。


「うーん、知ってるというか知らないというか。さっきお母さんとここに来るまでに歩いてきたんだけどさ、そのケーキ屋さんのクッキーが凄い美味しいから買ってきたのね……で、そこの店員さんの名札が平仮名で"くがやま"だったような」


 そう呟く千夏に、俺と茜、詩音は顔を見合わせる。


「えっと、そのお店の場所は?」


「病院の前の大きな道の向かい側。信号を越えてまっすぐだよ……そうだよね、行ってみるのが一番。会えるといいね」


 俺達の様子を見て、千夏はそう微笑むようにして言った。

 それに礼を言うと、俺と詩音、茜は病院の外に出る。説明された場所は、本当に病院から歩いてすぐの場所で、逸る心を押さえながら、俺達はその店に入って――。


 ぱっと見渡しても、店の中に、それらしき女性はいなかった。

 だが、恐る恐る久我山奏音はいますかと尋ねると。


「あら、久我山さんのお知り合いですか? 彼女ならちょうど今上がったところで、自転車を取りに裏手に行っているかと――――」


「詩音!?」


 それを聞いて、店の外へと走り出す詩音を俺は追いかける。


「すみません! ありがとうございました!」


 茜の声が後ろから聞こえて、ちょうど角を曲がったところで、詩音が立ちすくんでいるのが見えた。


「…………お母さん」


 そして、その言葉の先にいたのは、確かに面影のある、紛れもない俺の姉の奏音だった。


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