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ヤンデレ婚約者ルーフォン



「キル!キルキル!どこだ!」

応接間の外で騒がしい声が聞こえできた。


「あなたを呼んでるみたいですよ?」

そう言ってのんびりと紅茶を啜る相手をじっと見た

凛々しい顔立ちに整えられた顎鬚

体つきもたくましくその体を包むのは漆黒の鎧その所々にワシをモチーフにした王国の紋章

騎士団…それもその頂点に君臨する騎士団長を務めるサライという男である。


「どうせ、くだらないことだろうゴリラはいちいち大袈裟だからな」

俺はそういうとサライと同じように目の前の紅茶を一口飲む


「そうですか、では話を進めても?」

「あぁ。」

「わかりました。今後のことですが、

私たちはあなたの号令がかかれぼいつでも作戦は遂行することができます。」


サライはそういうとテーブルに広げられた王宮の地図を指差しながら話出す


「まずは正面から7割、その混乱に乗じて下働き入口から2割、上空から1割の部隊を王宮に攻めさせ、最後は王家を全て捉える。

そして、バルコニーから宣言してもらいます。」


「…宣言は本当に必要なのか?」


今後この国をまとめるためには必要です。


「…はぁ、わかった。」


「そのためにきっちりと見た目を整えたのではありませんか。かっこいいですよ」


「うるさい。」


ニヤリと笑うサライを睨みつける。


「ふふふっ…さて、あと決めないといけないのはあなたをどの部隊に入れるかです。」


「…どこが無難だ?」


「そうですね…あなたでしたらどこでも生きていけると確信してますが部隊の士気をら考えると正面の部隊がいいと私は思います。」


「…わかった。そうしよう」


ふざけた態度を取られるが全体を見通せるその視野の広さは俺にはないところである。

だからうなづいて意見をのんだ


その時


バン!!

「キルやべーぞ!!アマネが!!………あっ間違えた…」


いきなり応接間の扉が開いたかと思うとゴリラがそう叫んで入ってきた。

だが俺らと目が合うとすぐに踵を返して扉からでようとした。


「待てゴリラ!!」

そんなゴリラを俺はすぐに呼び止める


「ひっ!すいやせん!!お偉いさんの会合だとは知らずに……って、この声は…」


ゴリラはあわてて頭を下げるが声を聞いてゆっくり顔を上げた。


「….キル?お前その姿…」


「そんなことより!アマネがどうした!?」

嫌な予感しかしない。

先日の王宮での出来事

そして最近増えている栗色の髪の女性ばかりを狙う人攫い…


「あっ!そうなんだよ!キル!アマネがいなくなったんだ!マリーがいうには自分を逃すために男と戦闘になってらそれから全然姿を見せないって!アマネになにかあったにちげーね!!」


「っ!?」

頭に血が昇る

あれだけアマネから離れるなとゴリラたちに伝えていたのに目を離したこいつらにはもちろん、あの時大丈夫だろうと王宮での仕事をさせてしまった自分自身に腹が立つ


ぽん…

「今怒ってもなにも変わりませんよ?すぐに取り戻しましょう。」

「…そう…….そうだな」

サライが俺の肩を軽くたたいた

そのおかげで少しは冷静になった。


「ゴリラ」

「おっおう…」


「お前は警備隊とともに下層部の入口で待機をしておけ、あとで騎士団が向かうからその指示に従うんだ……今夜は死ぬまで働いてもらう」


「いっ…イエッサ……」

ゴリラはビクビクしながらそういうと仲間たちのいる場所に向かって走り出した。


「では王弟殿下…所属部隊を変更いたしましょう」

サライはそういうとテーブルの地図を指差す


「あなたは最短で侵入できる上空部隊です。」


その言葉に俺は黙ってうなづいた。



************


「君の本当の名前はアマリネスだよ。」


「…いいえ、私はアマネです。アマリネスという人ではありません。人違いです。」


目の前に暖かな紅茶が置かれているがお互い一口も飲まない。


「そんなことはない、僕が君を見間違えるわけないのだから」


そういうとルーフォンは優しげにアマネに微笑んだ。


あのあと、アマネはどうしたらここから出ることができるか考え、他人のフリをすることを考えた。


3年も会っていない相手、それに前より髪を短くし、髪色だって違う。

言葉遣いや仕草だってほとんど下層部に馴染み公爵家の娘だったころとは別人だ。

否定をし続ければ、ルーフォンも間違いだと思い解放…いやどこかで隙を作るのではないかと思った。


「…何度も言わせないでくれません?あなたが探してるアマリネス?そんなお嬢さんじゃありませんよ?」


「記憶をなくしてるだけだよ。大丈夫、僕と一緒に過ごせばすぐに思い出すことができるからね」


だがルーフォンはただ嬉しそうにアマネを見つめる、アマリネスであることを確信し、さらに一切目を逸らさないので扉から逃げ出すことはできなかった。


「……」

「さぁ、今はゆっくり2人の時間を過ごそう。…しかし…髪すごく短くなっちゃったね。女の子なんだからこれからは前と同じぐらい伸ばさなくちゃね。」


そういうとルーフォンはゆっくり手を伸ばしアマネの髪に触れようとした。


「っ!」

バシッ…

アマネは反射的にその手を払った。

「アマリネス…」

先程まで嬉しそうに微笑んでいたルーフォンが無表情になりアマリネスの名前を呼ぶ。


「…知らない男性が….軽々しく私に触れないでくれませんか?」

怖いけれどもここで引き下がることはできない。


「…君は…….君が僕を否定するというのかい…?」

ガタン…

そういうとルーフォンはゆっくりと椅子から立ち上がった

その拍子に座っていた椅子が床に倒れる


「っ!」

ガタガタ

アマネもすぐさま椅子から立ち上がりルーフォンから距離をとる


「アマリネス!アマリネス!アマリネス!」

ギラギラした目で真っ直ぐアマネを見つめながらこちらにやってくるルーフォン


「くるな!」

アマネはそう叫びながら後退りをする

喉が震えるのを抑えルーフォンを睨みつける


「君は僕のアマリネスだろ?いやアマリネスなんだ!」

そういって壁際にアマネを追い込んでいく


ドン!

「いい子だからね?」

アマネは壁とルーフォンに挟まれる形になった。


「君を失ってどれだけ僕が絶望したか…わかるだろう?」

そしてアマネを見下ろす。

無表情ではあるがその頬を静かに涙が流れていた。

美しい顔立ちから流す涙はまるで一枚の絵のような神秘的な印象をもつ、ほとんどの人がはこのルーフォンの姿を見れば息を吐くのも忘れ見惚れることだろう


だが、

「いやっ!!」

ドン!

っ!

アマネはそんなルーフォンの肩を突き飛ばすと、ルーフォンは床に尻餅をついた。


その隙に素早く部屋を横断し、アマネは急いで扉に向かった。

逃げ出すチャンスだ取っ手に手をかけた


だが……

ガチャ…ガチャガチャガチャ

「なっなんで!?」


扉は開かない。

「誰か!誰かぁ!!」


ドンドンドンドン!!

うち側から必死に扉をたたいて助けを呼んでいるが誰もやってこない


「アマリネス!!」

「いやぁ!!」


ルーフォンがそんなアマネの腕を強く掴んだ

腕を振り払おうとするが流石に力の差はあり解けない


「なんでなんで!!」

どさっ


そしてルーフォンはアマネを寝具に投げ捨てると上からのしかかった。


その目から涙が流れて続けてはいるが、アマネから一切目を逸らさない


「いやっいやっ!いやっ!!」

アマネは必死にルーフォンの下で足掻くが全く動くことができない


「なんでわからないんだ!!」

「っつ…!」

ルーフォンの伸びた手がアマネの首に手をかけた

そして泣きながら叫ぶ


「こんなに愛してるのに!アマリネス!どうしようもない僕を君だけは受け止めてくれたのだろう?それは嘘だったのか!!」


「うっ…」

ルーフォンに首を絞められたアマネはうめきなんとかこの手を解かせようと手を引っ掻いていた


「君が君が君が僕を否定するなんて許さない!さあさあさあ!首を縦に振るんだ!…いい子だからね?」


手は緩めないのに表情は優しく微笑んでみせるルーフォン

なんて…自分勝手なんだろう、恐怖心より怒りの方が上回った。


ここでルーフォンに屈するなんで絶対に嫌だと思いアマネはルーフォンを睨みつけ首を横に振った


「なんで…なんでだよ….アマリネス!アマリネス!アマリネス!!」


ギリっ…

ルーフォンはさらに力をいれる


遠のきそうな意識のなかでアマリネスは涙を浮かべた。


自由だった日々を思い出す

自分の意思で好きなことをやり

好きなものを食べて飲んで

仲間たちと笑い合って…


ふっと頭に浮かんだのは好きなことをなんでも許してくれるたった1人の男の顔だった。


あぁ…もう戻れないのだ…

そう思ったら抵抗する力が失っていった。






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