第11楽章その3 ノリノリの大魔王
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
クレアの正体について今更ながら理解し恐怖にたじろいでいると、ガラリと音がして扉が開いた。
「失礼します。アルメリア・ウィーナ、戻りました。」
心なしか細くなった気もするが、声はしっかり出ているようだ。
「検査入院ご苦労様。結果は?」
「脳機能の一部封印に踏み切りました。それによって私の魔法に関する能力は一段階劣りますが、発作の危険性はゼロになりました。封印後の脳波に特に異常は見られず、安定しています。」
「そう、良かったわ。」
マーティー校長はホッと胸を撫でおろすと、表情を硬くし、きっぱりと言い放った。
「今の状況は把握できましたか。これで会議は閉じます。今一度、情報の整理と、疑問点・課題点の洗い出しをしておいてください。マーベラスの言った通り、ガニメデを討伐する大チャンスです。全員、覚悟をしておきなさい。」
「了解。」
という人間界の会議を露知らず、大魔界では大魔王ガニメデが新たな策をイオに託していた。
「いいか、よく聞け。今、私の信者は減りつつある。だから、なんとしてもこの作戦を成功させて私の凄さを知らしめてやるのだ。もしうまくいったら、キミを妃にしてやろう。」
ニヤリとするガニメデ。その一瞬の隙に人間態に戻り、ガニメデの頭を一発。うわぁ、大きなコブシ。
ズガッ
重く鈍い音が響く。
「痛ってーなー。」
「俺は女じゃねーよ。男でもねーけどな。そんなキョーミねーもんちらつかせられても別に考えが変わるわけじゃねーしタダのムダだ。バカな揺さぶりはやめとけ。見苦しい。」
「う、そこまで言われなくてもわかってるよぉ。」
イオは言い捨てると、背を向けて歩き出す。後には頭に大きなたんこぶを作った大魔王が、しょんぼりと肩を落とすだけだった。
「ま、それはジョーダンとして。成功させるために、ここはひとつ、キミの心臓を私に預けてくれないか。」
かけられた言葉に少しだけ思案した後、右手の指を1本だけ上げ、1回だけだぞ、と言い残して部屋を後にした。
「イヤッフー!許可下りたぜ。そんじゃ、ちょーっと危険な策でも考えますか。」
ウサギのようにピョンピョン飛び跳ねて喜んでいるが、どうやら無計画だったらしい。大丈夫か、こんなんで、と一部始終を見ていた窓際の花瓶に刺さった真っ赤なオダマキが、1度だけ揺れた。
「おっと、そういえば、こういう時のための何かいいものがあったよーな。」
急に机周りの荷物を漁り出す。ポイポイと散らかしながら、何かを探す。太陽の形の懐中電灯のようなものや、チェスのポーンの形の水筒のようなものや、蛇の形の縄跳びのようなものを、邪魔だと投げた後、ビルのように積まれた紙のタワーをバラバラに崩して、最終的に少しくしゃついた白い紙の束を見つけ出した。
「お、あったあった。」
ついた皺をのばすと、1枚目の1番上に太字で書かれた『攻撃は計画的にねシート』の文字が読み取れた。これこそが元側近の二人が残してくれた唯一の資料だ。それ以外の資料は、元々あったものはそのままに、自分たちが関わっていた直近数百年分をそっくり二人が持って行ってしまっていたのだ。先ほど散らかした資料は、年季が入っていてかなり黄ばんでいる。その黄ばんでしまった資料たちを全部床にぶちまけて机の上を片付ける?と、コウモリの羽が1枚付いたペンを持ち、椅子にしっかり座ってそのシートに書き込み始める。
「えっと、まず、目的は、『人間の大量破壊による圧力で、人間と反信者を支配すること』っと。こんな感じでいいか。」
ニヤニヤしながら、まるでいたずらを考える子供のように、楽しそうに書き込んでいく。目的や進め方のほか、用意するものや考えられる未来など、書くべき項目は細かいモノも数えると数十もあり、結構なボリューム感だ。
「♪うーまくーいけー、うーまくーいけー。わーたしーはこの世界の王ーなんだぞー。だーぁれもわーたしーを止ーめらーれないッ!」
鼻唄を歌いながらノリノリで書き進めていくガニメデ。
「はっ、ものすごいことを思いついた。少々派手な賭けにはなるが、私なら大丈夫か。フ、フフフ、フハハハハ。さァ、人間どもへの報復を始めよう。」
その怪しい笑いを、大魔界の蒼い月は見て見ぬフリをした。
会議からしばらく経ったある日の放課後、帰り支度を始めていたクラスメイト達に、アルメリアが突然爆弾を投下した。
「私、ガニメデに会ったことがあるのかもしれないんです。」
「それってどういうこと?」
「今までそんなの一言も・・。」
教室から出ようとしていたカミルレとカンナが、足を止めてすぐに聞き返す。
「私も混乱しているので、順を追って話をしますけど。」
アルメリアも戸惑っているようで、みんなが席に戻って話を聞く姿勢を整える。
「事故が起きた時、脳が破壊されないようにと展開した魔法が切れ始めたころから、少しずつ小さいころの記憶がよみがえってきました。そして先日、後遺症がこれ以上起きないようにと脳機能の一部を封印した時、封印の直前に脳の反抗なのか破壊が急に進んだ瞬間があったんです。その次の瞬間にはもう封印の魔法を展開したので大丈夫だったのですが、その時に小さいころの記憶がいっぱい溢れて来たんです。」
魔学病院での検査入院の際にそんなことがあったとは、とアスカが会議の時の資料の空きスペースにメモを書こうとペンを取るが、アルメリアの次の言葉にそのペンを落としかける。
「それらの記憶のされ方は、写真だったり動画だったり様々でしたが、その中に動画としてガニメデらしきものと会っているものがあったんです。」
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