第11楽章その2 笑顔凍る会議室
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
カンナとカミルレが隣同士でこそこそ話。
「討伐初参加の時以来だね、ルーちゃん。」
「そうね。でも、同じ椅子に座っていても、あの時とは全然気持ちが違う。」
「だね。必ず、平和にしよう。」
「うん。」
黒板前の司会者席にマーティー校長とマリアが座る。ざわめきが、水を打ったように静かになる。
「さて。」
マーティーが口を開いた瞬間、空気が変わった気がした。
「まず、マリアからガニメデのもともとの計画を話してもらいます。」
名前を呼ばれたマリアが、ガタンと勢いよくイスから立った。みんなが注目する中、マリアが喋り出す。
「ガニメデさんの元の計画っていうのは、『ヒト悪魔化計画』って言ってたの。その実験台としてクレアさんに選ばれたのがフクシア・ビクトリーヌだったの。」
突然名指しされ、思わずフクシアがそっぽを向く。
「何か知っているなら話してくれないかしら。別に怒りはしないわ。今は、少しでも情報が欲しい。」
マーティーがそう言うと、渋々といった感じでフクシアが口を開いた。そして、ため息を一つ吐いて気持ちを落ち着けてから、あの事件の真相を話し出す。
「最初、爪、盗んだ。簡単、報酬、いっぱい。」
「爪・・って、もしかしてあの?」
”爪”という単語に、アマリリスがすぐに反応する。
「うん。博物館。あれ、ガニメデ、爪。研究、困る。」
フクシアによると、あの爪にはガニメデの数十年分のエネルギーが蓄えられていて、あの赤のパラサントを送らせた後、失くしたと思っていたのだという。それを、ひょんなことから博物館にあることを知ったガニメデがフクシアに盗ませたのだという。なお、紫色の血液は、ガニメデのものではなく、赤のパラサントのものであったそうだ。
あの爪の強盗事件をきっかけにいくつもの罪を犯していたフクシア。しかもそれらはすべて、ガニメデの命を受けたクレアの口添えでのことだったという。
「結局、クレアは成仏したの。フクシア・ビクトリーヌも断罪者にはならなかったの。あたしはセレナと逃げてこれたの。セレナはもういないけど、あたしたちは縁を切ったの。だから、『ヒト悪魔化計画』は失敗に終わったはずなの。」
みんなブツブツと情報を確認し合っている。
「悪魔化ってことは”断罪者”ってことよね。」
「そうなるな。」
「大魔界で何があったってんだよ。」
カミルレとレツの横で、カインがイラついている。
「マリアちゃん、ほかに何か知っていないかい。」
マーベラス隊長が話しかけると、マリアは顎に手をあてて何かを思い出そうとする。
「えーっと、多分、悪魔個体数の減少、それが原因なの。」
「悪魔個体数の減少・・。」
コスモスが復唱する。
「それと、分裂なの。」
「分裂?」
カンナが首を傾げる。
「うん。ガニメデさんを支持する人と支持しない人で大魔界は真っ二つなの。だから、ガニメデさんは何とかして支持してくれる人を増やそうとしているの。」
「そうだったのか。」
アスカが相槌を打つ。
「ということは、今がチャンスだな。」
隊長の言葉に、空気が一瞬にしてまた張り詰める。
「ガニメデは、僕らの想像を優に超えるほどの巨大な力でもって、僕らに容赦なく襲いかかってくるだろう。だが、逆に言えば、そんな調子に乗っているスキだらけの大魔王を倒すには今が好機。」
「確かに。内部分裂が起きているのなら、ガニメデを討伐することにより、今の大魔界の構造を一気に崩すことが叶うかもしれませんわね。」
マーベラスが、コスモスが、予測を立てると、一つ咳ばらいをしたマーティーが口を開いた。
「国王陛下より、先の出来事を踏まえ、フィモス・クシラシア州の東側の4つの地域、すなわち、エピデスモス・アンドラス、イエロス・フィザニ、プテリガ・スパシー、ラーディ・テリマの各まちに避難指示を出した、と報告を受けた。何か策を立てるなら、その辺りで戦闘になるようにしなさい。」
「了解。」
マーティーからの指示を受け、3年生らが地図を広げだす。
「ねぇ、マリアちゃん。」
ガニメデ討伐に向けて早速意見を出し合う3年生の横で、カンナがマリアに声を掛ける。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど。」
「聞きたいこと?」
作戦を練り始めた3年生の方に首を突っ込んだマーティーと離れ、一人になったマリアが首を傾げる。
「ああ。調査書に書いてあったんだが、イオがクレアの先祖にあたるって言うのは本当なのか。」
アスカが調査書の該当ページを開く。そこには確かに、見開き1ページいっぱいにその証拠となりそうなものが挙げられ、最後の文には堂々と『クレア本人もイオの子孫だと認めている』とある。
それを読んだマリアは、あっと驚いた表情を一瞬見せた後、凍るような笑顔を作った。
「本当だよ。」
その一言で1年生たちの周りの空気の温度が一気に下がった。
「クレア本人から聞いたもの。イオの子孫だってわかっちゃったから、こっちを追放されたらしいの。」
「・・ちょっと待って。この情報が正しかったとすると、イオがドラゴンということなら、クレアもドラゴンだったってこと?」
カミルレが突っ込む。
「そうなるの。ただし、イオほどドラゴン体を操れるわけじゃないから、発作的に変形しちゃってたようなの。あともう少し成仏が遅れてたら、危なかったの。」
カインは思わず手のひらを見る。そこにはクレアと戦った時の残像が映っている。襲いかかってくるクレア。その幻想のクレアがドラゴンに変わり、思わず息を飲んだ次の瞬間、そのドラゴンがこちらに向かって吠えた気がして、反射的に手のひらを握りしめた。
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