第2楽章その4 山頂での一戦
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
「イッテー、ッテ地面ジャン。水ジャナイジャン。ア、デモカメ背負ッテタワ。ッテ、イキナリ魔法使イカヨ。マ、捕マエラレルモンナラ、捕マエテミロッテンダ。ベー。」
ああ、これは面倒くさい。喋れるタイプの悪魔が来た。
「なんて生意気な奴。あたしが滅してやるわ。」
「キャー、逃ゲロー。」
アマリリスの癪に触ったらしい。フレイム・ソードを召喚して臨戦体制だ。
「魚っぽい見た目だな。ウオライダーってかんじか。おそらく水属性だろうな。見たとこ子悪魔族角悪魔だろう。耐性は、うーん、わかんないけど、火の可能性があるな。あんまりムリするなよ。」
「わかったわ。とりあえず援護お願い。スピード系で。」
「了解。」
強化魔法、ピエ・ラピド。(足を早く)
「ツイテコラレルモノナラツイテキテミロヨ。オシリペンペンッテオシリナカッタ。水ヲカケテット、ジャア、ヨーイドン。」
カインによってウオライダーと名付けられた魚のようなその悪魔は、しっぽを振り回して逆さになって浮遊した。水瓶を逆さに背負い、かなりのスピードで逃げている。こう見るとなかなかにかわいいものだ。ま、私が手を出すほどではないだろう。
「あいつ、意外と早いな。」
「あたし一人じゃムリだ。応援呼んでくれる。」
「わかった。」
特殊魔法、ソル・ボス。(光の声)
水属性の悪魔と交戦中。応援求む。
特殊魔法、ルガル・デ・エンクエントロ。(集合場所)
仲間に合図を送るカイン。悪魔から目を逸らさないアマリリス。うん、いい連携だ。私は少し太めのしっかりした枝に座って静観することにした。
しばらくすると、イアンとカンナが到着。4人で応戦する。
「水っつってたな。耐性は火か。」
「おそらくは。」
「走り回る系か、うざってーな。カンナ、一瞬でいい。動き止められるか。」
「了解。」
攻撃魔法、ピミエンタ・ボテリャ。(胡椒の瓶)
「ゲホゲホゲホ。ゲホゲホゲホ。ナン、ナン、ダ、コレ、ハ。」
「よし、もらったー。」
抑制魔法、ピエ・ブロケオ。(足を施錠)
イアンがウオライダーの体を地面に固定する。降り続ける胡椒の雨にあたりながら、動こうともがく悪魔。
「で、この後どうするよ。」
「作戦なかったのかよ。」
「司令塔も呼ぶ?」
「リリーは悪魔から目を離さないで。」
「ごめん。」
ちゃんとした策はなかったようで、動きを止めたところで右往左往する。その様子を鼻で笑いながら見ていると、何かが横に降り立った。
「昼間は人間の姿に戻っていいんだろう。もし子供たちが気付いたとしたら、その姿だと驚くぞ、きっと。」
「えー、この姿じゃだめ?」
「おかしいだろう。コウモリが人間のようにしゃべるのは。」
「あーそう。じゃあ、戻るよ。」
隣同士でやっと聞こえるくらいの声で会話する。目玉をチラッと横に向けて、コウモリが人間に戻るのを確認する。
「あれはお前の部下なのか。」
「あれ?ううん、関係ないし、知らない。」
見ると、アマリリスの魔法によって、背負っていた水瓶を没収されていた。
抑制魔法、グアルダル。(預かる)
「アアーッ!オレノカメ!返セヨ!」
ウオライダーが必死にその短い腕を伸ばすが、届きそうだった手はカンナの魔法に阻まれてしまった。
防衛魔法、パペル・アセルビエント。(紙に風が吹く)
「うわぁ、変な感じした。」
「リリーに魔法かけたからね。」
アマリリスが目を離した一瞬のすきに、ウオライダーが口から棘を吐き出す。それがカインに直撃し、驚きで女子二人が悲鳴を上げる。
「キャー!」
が、当たった張本人はポカン。
「ん、何が起きたんだ。別に痛くはなかったけど。」
「本当かよ。俺、流れ弾当たったけど、ちょっとチクチクしたぞ。」
「え、そうなのか。大丈夫か?」
「けば立ったセーターよりはマシ。」
防衛魔法、エスペホ・コルティナ。(鏡のカーテン)
「カイン、イアン、無事なら今のうちに。カンナが動きを止めてくれてるから。」
「カイン、止め頼むぞ。」
「了解。」
攻撃魔法、ソル・マルティーヨ。(光の鉄槌)
「ギヤーッス。」
光属性の対悪魔用の技。簡単そうに見えるが、技の難易度としては高めである。一撃に込める魔法量が多いからだ。とはいえそこは特待科、軽々とやって見せる。だが、問題はそこではなく。
「今の二人の反応、実に面白いな。」
「でも、普通の人間の魔法使いに耐性は無いんでしょ。」
「ああ、我々に耐性という概念はない。ま、今度確認してみるか。」
「それにしても、今回は面白いメンバーが揃ったよね。いいね。それじゃあ、またね。」
こちらのサヨナラも聞かずに、森の木々の中に消えてゆく少女。少しの間、風に吹かれているとすべての魔法陣のなくなる感覚がした。潮時か、と私は訓練場に戻る。子供たちも順番に帰ってくる。
「今日はよくやったな。お前たちには本当に感心させられる。今日の講義はこれで終了だ。次回はまた地下で魔法陣の講義をする。時間には遅れるなよ。以上。」
ありがとうございました。
皆が帰っていく中、カインに近づく。
「カイン。」
「はい。何でしょう。」
「何でしょうも何もないだろう。本当にけがはないのか。痛むところは。」
「ご心配いただきありがとうございます。でも、どこも痛くないですね、やっぱり。」
「そうか・・。よし、ならば明日の放課後、校長室まで来い。覚悟の上でな。」
「わ、わかりました。」
身構えるカインと、様子をうかがっていたほかの生徒たちを残し、外のグラウンドまで出る。
特殊魔法、イロ・エストレジャ。(糸星)
「学校まで帰るか。明日の準備もあるしな。」
私は校長室の開けておいた窓まで糸のルートを張り、どこにも寄らずに一直線に帰る。
「一般的には、死を懇願することなど無いのだがな。」
暗くなり始めた紺色の空にはすでに煌びやかな星が散り始めている。その空の中でも一際丸く大きな月の中ではウサギが餅をつき、この世界の外側の飢餓に備えているかのようだ。
「今夜は満月か。」
ウサギは餅をつくことを止めない。
ページの最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでもおもしろいと思ったら、評価や感想を残して頂ければ嬉しいです。これからもマイペースに投稿していきますので、続きが気になった方はブックマークをしていただければと思います。