side story ジャン編 その6 愉快な劇と、おいしいおいしい日
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
体育館を劇場に、カインたちの名演が続いている。いよいよ舞台は佳境に入る。
大蛇からの猛攻を王子が必死にかわしている。
『はっはっは。その小さな体で何が出来るというのだ。』
『それでも、お前を倒す!』
大蛇の脅しに、王子が宣誓し、剣を握り直す。その様子に皆が固唾をのんでいると、どこかから老紳士の声が聞こえてくる。
『やあやあ、そこの勇敢なお方よ。』
声のした方から、鳥に扮したジャンが出てくる。こんな声も出せるらしい。本日何度目かわからないジャンの登場だが、シーンのシリアスさも相まって、その出番の多さにツッコむ人はもういない。
『声を掛けてくれたのはきみか。』
『いかにも。』
『危ないから、下がっていた方がいい。』
『あやつの弱きは、水の中の尻尾。その先の色の違う部分だ。』
『尻尾の先の、色の違う部分?』
『ああ。見ておれ。』
そして鳥が大きく羽を動かすと、大きな水しぶきが上がり、泉が割れ、中から朱色に燃える大蛇の尻尾が現る。
攻撃魔法、フロル・レクト。(花をまっすぐ)
防衛魔法、カスカーダ・カルパ。(滝のテント)
抑制魔法、スアベ・フエゴ。(柔らかい火)
裏にいるアマリリスとカミルレが、タイミングを見てそれぞれ展開する。練習で何度もタイミングを確認したところだ。息はバッチリ、壮大な演出で歓声が上がる。
「リリー、ルー、ナイス。」
ステージの展開タイミングを計っていたフクシアが笑顔を見せると、コントロールに集中しているリリーが魔法を弱めるタイミングを確認する。
「そろそろいいかな。」
「いや、もうちょっと光らせておこうか。」
会場の様子を見ていたレツがそう言うと、次のセリフを言おうとしていたイアンの口が、開いたままピタリと止まった。
「あと3秒。・・2、1。よし、リリー弱くしていいぞ。」
「了解。」
アマリリスが展開していた火の魔法が少し弱まったのを確認してから、イアンが次のセリフを声に出した。
『おのれー!貴様!』
そんな鳥を大蛇の頭の一つがぐるぐる巻きにしてしまう。
『うわあっ!』
『くっ、そいつを離せ!』
「がんばれー!」
「まけるな、おうじー!」
子供たちの応援の声が次第に大きくなる。
「オレもダメだな。」
出番だからと出て行こうとしたカミルレが、アスカの声で立ち止まる。
「穏やかな魔法利用も出来るはずなのに、こういうのがあるから、悪魔退治に利用してしまう。」
こちらの袖にいるみんなの動きが止まっている。
「何がいけないの?平和の作り方が違うだけじゃん。」
カミルレは毅然とした態度でそれだけ言い放つと、悪の女王の役を入れてまたステージに出ていく。
「アスカさん。」
ふとアルメリアが声をかける。ステージ上では、鳥を助けようと振りかざした王子の剣を、女王が鞭で止めていた。
「どれだけ心を救っても、環境が整っていなければ、その安寧は保たれませんよ。」
そう言ったアルメリアがステージへと視線を向けると、大蛇の弱点に大技を叩き込んだ王子により、大蛇が霧散していた。
「そうだな。」
優しく微笑んだアスカに、姫役のカンナが淡い桜色のドレスを引きずりながら、笑顔を見せる。
「やり方や考え方が違っても、目指す方向が同じなら、私たちは仲間です。それに、悪魔退治の時と同じ魔法でみんなを笑わせることも出来るなんて、素敵なことじゃないですか。」
「同じ魔法?」
アスカが首を傾げていると、無事にすべての出番を終えたジャンが戻ってきて開口一番。
「トルナドー・マニプラーって、面白い魔法だよね。レツのリオ・ディレクトルもそうだけどさ、攻撃魔法をあんな風に使うなんて、ボクなら思いつかなかったよ。」
「そう?あたしは、ハポネス・アサルを利用することを提案したけどね。まあ、いろいろあって却下になったけど。」
「姿が変わってしまうのはダメだろ。あと、確かあれは攻撃魔法じゃなくて、特殊魔法じゃなかったか。」
「あ。」
アマリリスの提案を、出番を終えたレツがやっぱり却下する。
そこで、ひときわ大きな拍手が。どうやら、舞台が終わったようだ。
「ま、終わり良ければ総て良しだ。さ、カーテンコールの時間だ。みんなで出ていくんだろ。」
いつの間にかいつもの調子に戻っていたイアンがみんなを促し、10人でステージに上がる。このために、裏方もまともな衣装を着ていたのだ。
センターに立った姫が語り掛ける。
『今日は私たちの舞台を見ていただき、ありがとうございました。楽しんで頂けましたか。』
大きな拍手とともに、たのしかったーという無邪気な子供たちの声も聞こえてくる。
『皆の明るい未来を守るため、私たちも悪と戦い続ける。だから、困ったことがあれば、いつでも私たちに声を掛けてほしい。きっと皆の力になってみせよう。』
王子の力強い言葉に、盛大な拍手が送られる。
『この後は、森の美味しい食材を使ったご飯の時間だ。美味しいご飯をみんなでおなかいっぱいに食べようじゃないか。』
両腕にはめた鳥の羽の型紙をパタパタと大きく動かしながらジャンが言うと、やったー!と子供たちの声が響く。
『仕方ないわねぇ。今回だけは息子の顔を立てて、あなたたちの贅沢を許してあげる。好きなだけ食べるといいわ。』
女王様が腰に手を当てながらそう言うと、後ろの保護者席の方からも拍手が聞こえてきた。
これにて舞台は無事閉幕。子供学校の先生たちの働きかけで、みんなで食事の準備が始まる。
おいしいご飯を食べて、大事な人と笑い合う。それが一番大事だし、元気なら、また立ち上がれる。希望があるなら頑張れる。元気だったら、多分、この先も大丈夫。
=side story ジャン編 Fin=
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