side story ジャン編 その4 双子の姉と、家庭事情
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
「王子様用の剣ってもう出来てますか。」
マネキンと化しているカインを眺めていたカミルレが突然声を上げた。
「まだだよ。フクシアちゃん、後ろの押し入れの中にレノレノの木の丸太のカットしたやつがあるから、それで作ってくれるかな。」
「はい。でも、なぜ、レノレノの木?」
シオンから指名を受けたフクシアが首を傾げる。もっと加工しやすそうな素材がそこらに転がっているというのに。
「硬いのに加工しやすくて、とんがらせても芯が柔らかいから危なくないのよ。」
「なるほど。」
同じ土属性の魔法使いであるシオンから、いろいろと教えてもらいながらフクシアが剣を作っていると、突然シクラメンが笑いだす。
「ふふふ。」
「どうしたんですか。」
「昔ね、二人で大喧嘩したときに、よくシオンが武器にしてたなぁって思って。」
「え、武器を使うほどの大喧嘩してたんですか。」
「何回かね。それこそ家の中で竜巻吹いてたから。ジャンはよく”家出”してたんだよ。」
「”家出”じゃないもん。”避難”だもん。」
アマリリスの疑問にシオンがニヤリとしながら答えると、ジャンが顔をぷくっと膨らませて抗議する。
「お父さんについていくようにお母さんもいっちゃったからね。家事の分担で相当揉めて。」
「だってシクが料理すると、風魔法が暴発して火事になりそうになるんだもん。」
「仕方ないでしょ。料理苦手なんだし。野菜切れないとイライラするのよ。」
「だからシクが洗濯係がいいのよ。それなのに今だって時々キッチンに立とうとするし。」
口論を始める二人を前に、ジャンが溜め息をつく。
「あの、いっちゃったって、どういうこと?」
「出稼ぎだよ。今ウチ両親ともいないんだ。だからお姉ちゃんたちと3人暮らし。」
カンナの疑問にジャンが渋々答える。
「そうだったのか。」
なんだか空気が重くなったところで、ジャンが口論を終わらせる。
「はい、そこまで。」
抑制魔法、スアベ・フエゴ。(柔らかい火)
怒りで暴発しそうだった二人の魔法を、抑制魔法で相殺する。
「はっ、あたしはまた・・。」
「私も、なんかごめん。」
きっといつものことなのだろう、とみんなが思っていると、シオンがパンと一つ手を叩いて無理やり笑顔を作る。
「みんな、なんかごめんね。お詫びにご飯食べて行ってよ。ね、みんな食べて行くでしょ。」
「いいんですか。」
「全然!むしろ食べていって!」
シクラメンも手を合わせて謝っているので、みんなが顔を見合わせる。
「そういうことであれば。」
レツがそう判断したので、カンナとアマリリスが口をそろえてお礼を言う。
「ご馳走になります。」
「じゃあ、用意してくる。」
立ち上がったシオンを追うように、アルメリアとアマリリスも立ち上がる。
「あたしたちもお手伝いします。」
「ありがとう。台所はこっちよ。」
「はい。」
コトコトと鍋の蓋が踊り、まな板の上の包丁が一定のリズムで材料を切っていく。
「大勢いるからシチューとかどうかな。昨日ちょうどロールパン作ったところだし。」
「え、パン手作りなんですか。」
アマリリスが食いつく。
「フッフッフ。何年料理担当していると?」
シオンがドヤ顔をして見せる。
「ということで、今日の夕飯はアパタ草のクリームシチューと、マゴメ豆のサラダを作ります。」
というのが少し前の会話。今はそれぞれの担当過程を手際よく進めている。
「そういえば、お三方のご両親は出稼ぎということでしたが、どちらまで行っているのですか。」
ふと、包丁の手を止めたアルメリアが問いかける。
「ここからずっと東側の国、カロメニ・パラエイアよ。海沿いの国で、魚料理がおいしい、陽気な国よ。」
「えっ、行ったことあるんですか。」
アマリリスが鍋をかき回す手を止めて、会話に割り込んでくる。
「ないわよ。1年に1回か2回だけ帰ってくる両親からの情報。」
「なーんだ。つまんない。」
「どういうことですか、リリーさん。」
ふくれるアマリリスをアルメリアがとがめると。
「楽しい世界旅行したことあるんなら、ジャンから聞き出してやろうと思ったのに。ざーんねん。」
「あはは。でも、特別な理由でも無ければ国を出るなんてことないからね。」
シオンが苦笑いする。
「そうそう。エブリア・ペディアーダより外の情報って、なかなか手に入りづらいですよね。」
「まあ、この国より大きい国はないと言われていますからね。」
アマリリスの嘆きに、アルメリアも頷く。
「カロメニ・パラエイア、水資源豊か、食べ物、美味しい。」
「え、フクシアちゃん行ったことあるの?」
フクシアの発言に、カンナが質問をすると、なぜか首を横に振った。
「両親、行ったことあった。配達、荷物、よく取りに行ってたらしい。小さいころ、話聞いた。」
「行ったわけじゃないのか。えー、誰か行ったことある人いないの?」
カミルレが投げかけるが、みんな首を横に振る。そんな中、あ、とカインが何かを思いつきレツを見る。レツは一つ溜め息を吐いてから口を開いた。
「あるよ。でも、観光目的じゃなくて、各霊宅への挨拶周りだったから、食事どころか景色もあんまり見れてない。」
「そうだったのか。」
「ん?れいたく?」
「あぁいえ、なんでもないですよ。」
普通科のシクラメンには、レツが精霊様の使いであることは内緒だ。
「あ、そういえば、世界のどこかには子供たちが満足にご飯も食べれないほどの国があるってマー兄に聞いたことあるな。だから残さず食べなよって。」
話題を変えるかのようにアマリリスがご飯の話をし出すと、台本から顔を上げたカミルレが会話に混ざる。
「あーそれね。舞台の巡回中に聞いた噂だと、西側諸国そういう民が多いらしいよ。東側には川や森があるけど、西側には水すら無い場所もあるからって。」
「そうなのか。」
そんな特待科の話を聞いていたシクラメンが呟く。
「ご飯をちゃんと食べないと、ヒトは生きていけないのにね。この国で生まれ育って良かった。」
「あ、演劇の後に皆で一緒にご飯食べるのどうかな。」
シクラメンの言葉を受けてのカンナの思い付きに、ジャンが笑顔を咲かせる。
「いいね。今度子供学校に行ったら、先生に相談してみるよ。」
そして、あっという間にイベントの当日がやってくる。
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