side story ジャン編 その1 双子の姉と、お弁当
=side story=
元気が一番~ジャン編~
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音で午前が終わり、みんなが学生食堂に駆けこむ昼休み。午後の外課題の作戦会議のために、今日は教室でお弁当を食べることに。後ろのロッカーや机の横のかばんから、各々持ってきたお弁当を広げ始める。
「午後はミッションでパトロールだからな、しっかり食べとかないと。」
カインが茶色の紙袋から大きなサンドイッチを取り出す。自家製オリーヴを使ったクラブサンドのようだ。
「今日はいつもよりパトロール範囲が広いんだろう。」
イアンもお弁当を広げる。肉々しい男子弁当だ。
「チーム、分ける。範囲、分担。3つくらい。」
フクシアも自作だろう弁当を広げる。片手に乗る程度の小さなお弁当だ。
「じゃあ、遠いところは光と風の4人で行こうよ。」
カンナがお手本のようなお弁当を広げる。
「そうだな。近いところは南側と東側で分かれるのがいいだろう。」
アスカもかわいいウサギ弁当を広げる。二人の妹の分と合わせて作っていたら、自分の分までそうしてしまったらしい。
「そういえば、リリーの家ってここからだと南方面だったよね。」
お母さんが作ったのであろう彩の良いお弁当を広げながらカミルレが問いかける。
「そうだよ。あ、あたし案内しようか。」
女子用とは思えない肉中心の豪快弁当を開けながらアマリリスが提案する。
「では、リリーさんとルーさん、あとイアンさんで南側をお願いしますね。」
おかずが卵焼きだけの小さな日の丸弁当を広げながらアルメリアが話をまとめ始める。
「じゃあ、東側は僕とジャンとフクシアで行こう。」
野菜豊富なバランスの取れたお弁当を広げながらレツが話をまとめる。
「了解。・・って、あーっ!」
かばんをひっくり返したジャンが声を上げる。
「お弁当忘れた・・。」
「またか。」
「今日も家飛び出してきたのか。」
男子が笑う。
「うん。用事があって。」
「またそれかよ。てか、用事ってなんなんだ。」
誤魔化すジャンにカインがツッコむが、ジャンはそれを華麗にスルーする。
「用事は用事だよ。それより、お昼どうしよう。」
学食まで行けばいいだけなのだが。それだと作戦会議に出られなくなる。
「学食にテイクアウトあったっけ。」
「軽食系ならあったと思うから、そういうの買ってくればいいと思う。」
「うん、そうするよ。」
アマリリスが思い付き、カンナが教えてくれる。
「待て、ジャン。」
出ていこうとするジャンをレツが止める。
「これ片付けてから行け。」
指の先には床に散らばった教科書たちが。
「確かに。これを片付けてから行ってよね。」
女子が近くのモノを拾い始める。とそこに。
「こんにちはー。ジャンいる?」
「お弁当持ってきたよー。」
勢い良く開いた扉の向こうには、よく似た二人の女子生徒がいた。
「えっと、どちら様・・。」
困惑するアスカの後ろから顔をのぞかせたジャンが、キラキラの笑顔で言う。
「あっ、お姉ちゃん。」
「え、お姉ちゃん?どっちが?」
「どっちもだよ。」
「は!?」
意味が分からないとばかりにポカンとしたみんなを置き去りにして、一人が持ってきた弁当をジャンに渡しながら自己紹介をする。
「こんにちは。ジャンの姉で2年普通科のシクラメン・バンダルと、」
「もう一人の姉のシオン・バンダルです。よろしくね。」
どーも、と首で挨拶するみんなに、ジャンが付け足す。
「お姉ちゃんたちは、一卵性の双子なんだよ。」
「ああ、なるほど。」
にしては、二人で違う色のリボンをつけている。特待科もそうだが、男子のネクタイの色と女子のリボンの色は、持っている魔法の属性に準じている。ちなみに、普通科と特待科で若干制服が違うが、シクラメンとシオンは二人とも普通科なので、違うところと言えば、髪を右でまとめているか左でまとめているかと、リボンの色だけである。
「リボンの色、違うんですね。双子なのに。」
「そう。私が風属性で、シオンが土属性。」
「双子だけど使える能力は全然違うの、不思議だよねー。」
「ってそれよりお弁当。持たずに飛び出すんだもん。」
「ごめんなさい。」
丁寧に包まれたそれを受け取りながら、雑に謝る。
「朝起きたらもういないんだもん。」
「ごめんなさい。今日は用事のある日で。」
「あーそういえばそうだったわね。」
「まぁなんでもいいけどお弁当は忘れないでよ。こっちまでくるの大変なんだから。」
双子のお姉さんたちは渡すものを渡すと、バイバーイと元気よく去っていった。
「それで、用事って何なんだ。お姉さんたちにも詳しくは話してないのか。」
「うん。お姉ちゃんたちもお母さんもお父さんも知らないよ。でも行く日は決まってるから、用事がある日はわかってるんだ。」
カインの質問に笑いながら答える。
「まあ、なんでもいいからご飯食べちゃお。」
「だね。今日のパトロール範囲広いからね。」
思いがけず話が振り出しに戻ってしまった。とはいえ、お昼ご飯は出そろったので、相談しながらご飯を食べることにする。
強化魔法、マリポサ・プルマ。(蝶の羽)
青い空に五色十本の鱗粉の尾が伸びる。そのうち、3本は南側に曲がり、4本はスピードを上げて直進していった。
「じゃあ、東側の近場は・・っと。すぐそこのシャルロの子供学校から、隣町のペケトの役場の所までだな。」
飛びながらレツが確認を入れる。
「レツ、役場、ジャン、子供学校、途中、森、やる。」
「ボクが子供学校だね。そしたら、学校への通りも見るよ。子供たちの通学路でもあるし。」
フクシアの提案にレツも頷く。
「そうだな。そんなに危険個所もないし分担するか。僕は役場と、あと商店街も見るよ。というか、ここの森って結構深いんじゃなかったか。」
「別に、余裕。」
「じゃあ頼んだ。」
と言うことで、3本の尾はバラバラに散った。




