第2楽章その3 山頂訓練場
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
ヘールボップ魔法学園の校外訓練施設の一つが山頂訓練場だ。このニフタ・ミナスの街の最高地点でもある。簡単なグラウンド付きの体育館のような施設で、普段人がいるような場所ではない。
ちなみに、魔剣があった泉は、隣の州の町ネロ・ピラカのいくつもある不思議な泉の一つだ。この山頂からならその泉の数々を見ることができるが、残念ながら魔剣のあった泉を見ることは出来ない。
山頂訓練場の建物内で次の授業の為の準備をしていると、誰かが扉を叩く音がする。気になって手を止めると、続いて扉の開く音がする。振り向くと、外套を羽織りフードを被った小豆色の目をした少女が忽然と立っていた。
「さみしくて会いにきちゃった。」
「クレアか。さみしいという割には、随分と嬉しそうじゃないか。」
「まあね。そうそう、少し偵察させてもらったよ。やっと、成仏出来そうな子たちが集まったんだね。戦うのが楽しみだよ。」
「お前もそう思うのか。だが・・・悪いな、今戦う気はないぞ。」
「大丈夫。私もないから。」
二人のキョリは変わらない。だだっ広い施設の真ん中辺りでポツンと佇む私と、扉の一歩内側にいる友。顔の表情がやっとわかるくらいのキョリ。
「傷はどうなった。もう癒えたのか。」
「あともう少しってかんじかな。」
外でカラスが鳴いている。そろそろ夜になるという合図だ。空の色が少しずつ濃くなってきていた。そのうち、クレアの体が小さくなっていって鈍色の一対の羽が生える。
「人間体でいられる時間を延ばしてもらった代わりに、夜になるとコウモリになっちゃうの。でも気に入っているんだ、空も飛べるし。」
「撃ち落とされるなよ。」
「ダイジョブダイジョブ。じゃあね。」
飛んでいく一匹のコウモリ。その背中には治りかけの傷。
「撃ち落としてなんとかなるものなら、撃ち落としたいのだがな。」
ガニメデの爪の発見から一週間。800年分の思いが一気にこみ上げる。私は、溜め息を一つついて呟く。
「今年はよく眠れそうだな。」
暗い空を見上げ、頭の中で走馬灯を流す。
そして翌週。私くらいになると、1週間などまるでただの瞬きのように短く感じる。
子供たちは修行に励む。訓練場内には熱気が籠もり、逃げることを知らない。
「よしいいだろう。準備運動はそのくらいにして外に行ってこい。この山のどこか10か所に魔法陣を展開しておいた。それをすべて解除してこい。範囲は山全部だ。」
了解。
二人一組で散ってゆく。話の速い奴らだ。バランスよく5組に分かれた。さすがはレツといったところか。ペア分けが適格だ。
「魔法陣を見つけたらどうすればいいんだっけ。」
「展開されてる魔法陣には属性があるから、まずはそれを見極めるのよ。」
大雑把なジャンにきっちりしたカミルレ。
「使った魔法がわかれば、逆に唱える強制消滅が有効なんだが。」
「わからなくもないですが、正しい属性の方による回収魔法の使用のほうが得策かと。」
大胆なアスカに丁寧なアルメリア。
「でも、この山全体が範囲になっているなんて、今日中に終わるのかな。」
「大丈夫。森はウチら土属性の庭だから、ある程度の目星はつけられると思うよ。」
正確なカンナに細かいイアン。
「今日中、余裕。一人、1個。」
「じゃあ、土属性の二人に大体の位置を教えてもらった上で、それぞれが行く方向を決めるか。」
観察力の高いフクシアに手際よいレツ。
「そうだ。最近覚えた技を使ってみたいから、僕らのペア1番わかりづらいところでいいよ。」
「って勝手に決めないでよね。別にいいけど。」
大技の得意なカインと火力の強いアマリリス。
その中でも私は、一番気になっているカインとアマリリスのペアを追尾することにした。
強化魔法、ブスカンド。(探す)
「光属性の技は便利ね。それにしても、ウチは兄妹揃って火属性の上に、母も風属性の魔法使いだからさ、なんか”ケンカしたら終わり”みたいな感じだったな、ずっと。だから、兄とケンカしたことはないの。」
「そうなんだ。僕は一人っ子だけど両親共に魔法使いだから、"自分の命や能力は誰かのために"みたいな精神を教え込まれたな。」
「親も魔法使いだとやっぱり多少気を使う生活になるよね。」
「逆らえないからな。」
忍者走りで森の中を縫ってゆく、赤と黄色の光。私はまたイロ・エストレジャで空を飛び、彼らの会話を後ろ手に聞く。
「まあウチも世界大戦前みたいな状態だったけど、マー兄がかなりの切れ者だからギリギリ緩和してたかな。」
「マーベラス隊長はさすがだな。みんなの憧れの的になるわけだ。っと、一つ目発見。10時方向約200メートル先。おそらく火属性だろうから頼むぞ。」
「任せといて。」
魔法陣を解除するために使う魔法は、属性によって違う。
「あったぞ。やっぱり火属性の魔法陣だ。」
「オッケー。」
抑制魔法、グアルダル。(預かる)
到着10秒、一つ目の火属性魔法陣はあっという間に解除された。さすがは特待科、迷いがないなと思っていると、上のほうに真っ黒な球体が出現し、何かが降ってきた。
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