第10楽章その2 おかえりなさい
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
司令塔組二人も驚く中、広がるだけ広がった光は、そのうち少女の体内に取り込まれていった。六面体が消え、ゆっくりと降りてきた少女をアスカが横抱きに受け止める。そして、しばらくの静寂の後、少女はゆっくりと目を醒まして笑顔を作ってみせた。
「みんな・・、ただいま。今、戻った・・よ。」
「フクシアっ!」
その笑顔に、誰もが救われた。その笑顔が見たかった、と。一気にみんなが駆け寄り、中には泣き出す人もいた。
「良かった・・。」
3年生たちがほっと息をついている間に、レツがフクシアの額に手を当てる。
「熱とかはないみたいだな。」
「レツ、手、冷たい。」
少女がクスクスと笑う。
「ようやく、終わったんですね。」
フリージアが大きく息を吐く。
「みんな、ただいま。」
「おかえり、フクシア。」
少女は言の葉を紡ぐ。みんなに笑顔の花が咲く。そしてそのまま、アスカの腕の中で安心して眠ってしまった。
「良かったです。戻ってきてくれて。本当に、良かっ・・た・・。」
アルメリアも眠気に勝てなくなり体勢を崩しかけたところを、察してすくっていたイアンの腕の中で眠ってしまった。
「病み上がりすぐにごめんね、アル・・。」
アルメリアを労いながら、アマリリスも倒れて寝てしまう。こちらも兄に支えられながらぐっすりと・・。
そんな風に1年生たちが次々と眠っていくのを見て、腕に眠ってしまった妹を抱えつつ、隊長が今後の指示を出してくれる。
「みんな、本当にお疲れ様。1年生たちは先に学校に戻っていてくれ。眠ってしまったやつらも連れていけるか。」
「はい。浮かせられれば。」
アスカが当然と言うように答える。
「よし、ヒロト、ガイ、バニラも手伝って送り届けてくれ。リーズ、ハイド、スー、アラタの4人は町の復旧を。僕ら3人は、避難してもらっている町民の様子を見に行く。討伐隊は各自仮眠を取るように。」
「了解。」
静かめな返事は間もなく朝日に吸い込まれ、それぞれが自分の役割を果たすために次の一歩を踏み出す。
「カイン。」
「はい。なんでしょう、隊長。」
不意にマーベラスに呼び止められる。
「校長は、・・ジュピター校長はどうしたんだ。」
マーベラスが聞きづらそうに確認してくる。この場に戻ってきたのが、二人だけだったからだ。校長の名前に反応したのか、散ろうとしていた誰もが足を止め、二人の方を向いた。誰もがカインの言葉を待つ中、カインは思わず空を見上げた。
「我らがジュピター・ロメオ校長は、・・解放されて鳥になりました。」
カインの言葉にマーベラスやほかのみんなもなんとなしに空を見上げると、ちょうど2羽の小鳥が2人の真上で少しホバリングして戯れた後、どこかへ飛んでいった。
「そうか・・。」
マーベラスの相槌すら連れて。
「カインもアルメリアも、大役お疲れ様。」
マーベラスはカインの肩に手を置いてそう労うと、彼に背を向けて歩き出す。そんなマーベラスの背に、カインは黙って深く一礼した。
「さ、もうひと頑張りするかな。行くぞ、リア、ベル。」
「はーい。」
マーベラスは1つ伸びをすると、わざとらしいほど明るい声で去っていった。
その後、カインたち1年生は先に学校に送り届けられ、3年生ら討伐隊は各自町の復旧作業にあたった。一度帰宅し、休息を取ったカインたちだったが、すぐに学校に登校し報告書をまとめる。ちなみに、授業は一旦お預けだ。カインたち1年生が学校で必死に報告書をまとめている間に、どうやら特待科2年生も現地に向かっていたらしく、2・3年生合同で復旧作業に当たってくれていた。町の人たちの尽力もあり、数日後に改めて町を訪れた時には、ほとんどの復旧作業に目途が立っていた。
「これだけ進んでいるなら、別にオレらいらなくね。」
すっかり元の町並みが戻りつつある景色を眺めながらふとアスカが漏らす。
「そんなの、避難で疲れ切った町の人たちの癒し役に決まってるじゃん。」
こちらもすっかりいつもの調子に戻ったイアンが意気揚々と、噴水の元で絵を描く若い女性の所へと吸い寄せられていく。
「あーあ、戻っちゃった。」
「でもイアンはこうでなくちゃ。」
「それもそっか。」
カミルレとカンナが魔法で道沿いの花々を整えながら、小声でそんな会話をしていると。
「イアン、いつも、まじめ。」
道路整備を手伝っていたフクシアが会話に混ざってくる。
「そうだね。」
ミマスの面影はどこへやら、こちらもすっかり回復した様子のフクシアに、二人で笑みを返す。
その帰り道、カインとアルメリアは一度みんなと別れ、あの山へと向かった。もちろん、火山の”聖域”に立ち入るための1回分のアンロックカードは入手済みである。
二人の最期を見届けたあの場所へと足を進める。そこだけがぽっかり穴が開いたように森が途切れた場所に、何もかもがあの時のままになっている。アルメリアが展開しておいた結界魔法のおかげで、積もった雪も融けず、その雪に身を隠すように崩れたジェイの骨もそのままに。
あの日の哀しみを伝えるかのように遺っていたそれに、二人はそっと手を合わせ、祈りを捧げる。
『私は祈り、願い乞う。私は涙し、分かち合う。私は笑い、歩み寄る。私は幸を、捧げ給う。』
精霊様への願いの言葉を二人で口にし、散っていった二人の幸せを祈祷する。
その後、あの日の笑顔を心に刻み直してから結界魔法を解き、持ってきていた箱に拾い集めた骨を丁寧に納めると、もう一度だけその場で手を合わせた後で最期の場所から立ち去った。
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