第10楽章その1 5人の声
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=第10楽章=
苦しいのは
ミマスの存在が霧散したところで、気が付いたフクシアが呻き叫ぶ。
あ゛あ゛ぁぁっっ。
血を吐き、荒く呼吸を繰り返すフクシアの背をバニラがさすり、ベルガモットが水筒に水を用意して駆け寄る。
「みんな、エスピリート・フレチャーは上達したか。」
フクシアの頭を優しく撫でながら、その行為とは裏腹に、おどろおどろしい声で隊長が1年生に問いかける。その醸し出す空気のあまりの重さに1年生たちが互いに顔を見合わせていると、フリージアがピースサインをしながら笑顔で補足する。
「あ、各属性1名ずつで大丈夫ですよ。あ、私はやったことないですよ。やるならヒロトくんですから。」
強張らせていた表情を緩め、カインたちにも目を向けると、目くばせによりメンバー5人を選出する。それを確認したマーベラスは、フクシアをそっと地面に横たえて立ち上がる。それを見たベルガモットがそばを離れ、背をさすっていたバニラが立ち上がり、リアトリスとハイドとヒロトが近づく。
特殊魔法、セダ・インテルメディオ。(絹の間奏曲)
3年生5人がまず技を展開する。それぞれの手からそれぞれの色の球体が浮かび上がる。直径はどれも10センチに満たないほどだが、その球体から線が伸び、1つの六面体を形作った。5つの点に支えられ形成された、三角錐を上下に2つ合わせたような六面体の中にフクシアが収まる。そして、六面体はフクシアを連れて、頭の上3メートルくらいまで浮上して静止した。
「カイン、すぐで悪いな。」
レツが声を掛ける。
「大丈夫。それより、みんなは出来るのか。」
左腕を伸ばして、あっという間に弓を形成しながら言う。実は、五光火の一つを特訓するときに、その基礎として特訓させられていたので、容易に放てるのだ。しかも、その正確さは群を抜く。
「なんとかな。」
アスカも落ち着いて弓を形成させる。
「確実にって言うと、ギリギリ一人ずつってとこだな。危なかったぜ。」
イアンもオニアンモードで弓を形成させる。形成スピードは1番速い。
「あたしたちが守るんだもん、フクシアのこと。」
アマリリスも弓を形成させる。スピードはゆっくりではあるが、形はすごくきれいだ。
「リリーが大丈夫なら、大丈夫だな。」
レツも弓を形成する。うん、安定している。
「よし、同時に行くぞ。」
「了解。」
ビエント。(風)
アーグア。(水)
フエゴ。(火)
スエラス。(土)
ソル。(光)
攻撃合体魔法、スィンコ・フレチャー。(5つの矢)
若竹色の、空色の、紅色の、土器色の、黄金色の。5つの矢が一直線に少女の元へと飛んでいき、三角錐に吸い込まれていった。
少女は泣いていた。
一人ぼっちでさみしかった。
『私、一人ぼっち。みんな、いいな。』
少女は聞く、友の声を。
「こっちへ戻ってこい。」
「お前が帰ってくるのを僕らはずっと待ってるから。」
「大丈夫。楽しい話だけじゃなくて、嫌なことも苦しいことも、ちゃんと聞くよ、あたしたち。」
「みんな苦しい中で必死にあがいてる。お前は一人なんかじゃない。だから!」
「安心して戻ってこい、こっちだ!フクシアー!」
真っ暗な世界に、いろいろな方向からカラフルな光が差し込んでくる。五色の光それぞれから仲間の声が聞こえてくる。伸ばす手の先。
光を・・掴んだ!
『ごめんね。今、戻る。』
矢を放って数秒。何も変化のない数秒。1番もどかしい時間。
「ねぇマベ、うまく・・いったのかな。」
待ちきれなくなったバニラがマーベラスに話しかける。
「バニラか。さぁ、どうだかな。そのうち光り出せばわかるんだがな。」
「どういうことですか。」
マーベラスが首をひねるので、様子を伺っていたカミルレが思わず問いただす。
「光り出した時に、光が集束すれば失敗、発散されれば成功。ただし、その確率は五分五分。まぁ、賭けに近いな。」
「五分五分って・・。」
ヒロトの説明に、カンナが呆然としていると、フリージアが解説してくれる。
「セダ・インテルメディオで対象を隔離し、スィンコ・フレチャーで対象の精神の悪を浄化する。断罪者及び断罪人を救う方法として、今のところ1番有効とされている方法です。」
「1番有効とはされておりますが、技を展開する魔法使い5名の波長の相性により成功の確率が変動するため、確実性を求める魔法使いの方は、取りたくない手段だとおっしゃるでしょうね。」
「確かに。現段階では50パーセントがいいところだとされているからな。ましてやフクシアは本当になりかけた身だ。確率は半減していると考えていいだろうな。」
「ってことは、25パーセント。そんなぁ。」
コスモスとハイドの補足にカンナが嘆くが。
「大丈夫ですよ、きっと。」
「アル?」
その様子を見ていたアルメリアが、実は痛めていた右腕を押さえながらやってきて、カンナに優しく微笑む。
「皆さんの、私たちの想いはきっと、きっとフクシアに届きます。ですから、25パーセントを信じましょう。そうすれば必ずキセキは起きますから。」
朗らかな笑顔でアルメリアがそう言うと、緊張で歪んでいた皆の顔が穏やかになっていく。なんとも不思議な子だ。アルメリアが大丈夫だというのだから、きっと成功するだろうと、その場の誰もが気持ちを落ち着けたのを見ていたかのようなタイミングで六面体が輝き出す。
「あ、光り出した。」
アマリリスが指を差す。それを合図にみんなが改めて六面体を見ていると、どうやら光がこちらに向かってくるような感覚があった。
「光が発散されれば成功。と、いうことは、まさか・・。」
「僕らは今、キセキに遭遇している。」
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