第9楽章その5 朝日がもたらすもの
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
魔法使いでありながら、悪魔の末裔であったことを理由に蔑まれ、自身も悪魔に成り代わってしまった少女。その親友でありながらそれを止められず、失意と後悔の果てに自身を鬼と呼び、人としての生を捨てた少女。
その二人の少女は、数百年の時を経ても1ミリたりともずれなかった運命の歯車を見事破壊した。そして、その魂は光の粒となり、今まさに空の彼方へと昇って行った。
「クレアが成仏したらガニメデが怒るかもって言ってましたね。」
代わりに降りてきた雪の粒を愛おしく両手ですくいながら、アルメリアが思い出す。
「どういう意味なんだろうな。」
魔剣を隠すように、ジュピターの骨がカラランと音を立てて形をなくす。その骨さえも隠すように雪は降りしきる。その雪を照らす一筋の光。その光はたちまち何本にもなり、いつの間にか止んでいた煙の向こうから、光の柱を作る。
「あ、朝日だ。もう朝が来たのか。」
光の筋は、骨の間の魔剣に届くくらいに細く淡く輝いていた。
「とりあえず、練習するぞ。」
「先輩、何かコツはありますか。」
人数の欠けている1年組だが、仲間を見捨てなくてはならないほど弱くはない。
「弓矢を持っているかのようにして右手の指先にエネルギーを集中させます。矢の形をはっきりとイメージすると正確に射ることができます。」
「イメージが大事なんですね。わかりました。」
「よし、とにかく挑戦あるのみだ。」
技のポイントをアマリリスが確認すると、フリージアが答え、レツが気合を入れる。
「よっしゃー!助けるぞー!」
元気な声を上げるジャンを先頭に、ぞろぞろと建物の陰から出てきた1年生たちの、鋭くヤル気に満ちた獣の目に魅せられたマーベラスが指示を飛ばす。
「同属性、同性別の1年を援護しろ。リーズは足を、アラタとリアは尻尾を狙え。」
「了解。」
攻撃魔法、エスピリート・フレチャー。(精神の矢)
指先に集中し、矢を作る。弓も矢もイメージならば、弓を張って射るのもイメージなので、かなりの集中力が必要だ。何度も何度も挑戦し精度を上げようとするが、放つポイントやタイミングが少しずれただけで軌道が変わってしまうため、なかなかに苦戦している。
「どうしよう。上手く出来ないよ~。」
隊長マーベラスからの手厚いサポートを受けていたジャンが、1番に音を上げる。
「弱音吐いてんじゃねーよ。うまくいくまでやれ。」
ヒロトから軌道安定の補助を受けていたイアンが、自身の何度目かの挑戦の後でジャンを叱る。しかも、本気モードのピリピリイアン、通称”オニアン”でだ。
「でも、元はフクシアなんだよ。もし失敗なんかしちゃったら・・。」
コスモスからのターゲット固定の補助を受けながら挑戦していたアマリリスも弱音を吐きかけるが。
「失敗したときのことなんか考えんじゃねー。とにかく集中しろ。」
案の定、オニアンに怒られる。と、ぐがああぁっと大きな唸り声を上げながら、ミマスが突然苦しみ始める。何が起きたのかとみんなでキョロキョロしていると、リアトリスが一筋の光に気付く。その光を辿って天を仰ぎ、あっと声を上げる。
「朝日だ!朝だ!朝が来たんだよぉ。」
興奮したリアトリスにつられて、みんなで空を見上げる。全員の手が止まったことで攻撃が止み、煙が段々と落ち着いてくると、その煙をすり抜けて、太陽の光が大地に降り注いでくる。
「悪魔は太陽光に弱い。朝のうちにけりをつける。全員集中しろ。」
「了解。」
太陽の明るい光と、隊長のまっすぐな声に、深呼吸をして集中力を高める。
時を同じくして、カインも太陽の明るい光に照らされた魔剣を恐る恐る手に取る。戦気を失くした刀剣は、宝石の色を淡くしていた。
「これはもう、悪魔を斬りつけた剣じゃない。悪魔を斬るための剣、魔剣ブルートブルーメだ。」
剣のために、自分のために、決意を口にする。改めて魔剣を眺めるが、以前感じた怪しい違和感はもうない。もう何もないんだなと確認していると、宝石の淡い赤の奥に悪魔が見え、さらにその深淵にフクシアを見つけ、思わず目を見開く。
「フクシアがまずい。断罪者になりかけてる。」
「え、ホントですか。」
「あぁ。もう悪魔が出て来やがった。」
その言葉を聞いて、それまで力なくへたり込んでいたアルメリアがすっくと立ちあがる。
「なら、急いで向かいましょう。その剣でなら、斬れるかもしれませんよ。フクシアさんの悪魔を。」
「そうだな。山を下りてすぐ、ネプトゥーネの景色か。」
宝石の奥を覗き込んで、見えた景色から場所を推理する。
「ネプトゥーネならすぐ行けますね。」
「あぁ。だが、行く前に、少し貯めておくか。」
本当は今すぐにでも行きたいところだが。仲間の命がかかっているのだ、失敗や妥協は許されない。万全を期して望まねば。
「さっきやったばっかりですけど、体力大丈夫ですか。」
魔剣を地面に置いて五光火のポーズを取るカインを、アルメリアが心配そうにのぞき込む。
「アルこそすっ飛ばしまくってただろ。回復魔法もかけてもらってあるし、大丈夫だ。」
カインは笑顔を見せて深呼吸をし、展開体勢を取る。
「ソル・インセンディオ、私も一発なら撃てます。それくらいは手伝わせてください。」
「ありがとう。じゃあ、一発目、お願いします。」
「了解。」
攻撃魔法、ソル・インセンディオ。(光炎)
アルメリアの炎は精度が高いので、赤の透明度がカインのものよりも少し高い。しかし、その光は10秒も持たずに消えてしまった。
「はぁはぁ。すみません、これくらいしか力が残っていなくて。」
息を荒くしたアルメリアが謝る。
「いや、十分だ、ありがとう。後は僕が代わる。今のうちに体力を回復しておいた方がいい。半分くらい貯めたら出発する。」
「了解。」
さあ、行こう。いつもの、みんなで笑い合う教室に帰るために。
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