side story アマリリス編その2 憂鬱の序曲(オーヴァーチュア)
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
翌朝、3年生の教室。
「お二人とも正解です。」
「良かったー。」
昨日中途半端になってしまった問題からスタート。応用問題だったため、かなり難しかったのだが、なんとか正解に辿り着いた。
「お、その問題、もう解けたのか。凄いな。」
登校してきたヒロトが覗き込んで褒める。
「公式をきちんと理解していないと、使いどころがわからずに手が止まってしまう問題です。これが解けたということは、この公式についてはクリアしたということになりますわ。」
「やったー!」
二人は声を上げて喜ぶ。
「ここが1番わからなかったんです。丁寧に教えていただきありがとうございました。」
「この公式が理解できれば、魔法の効果をより高められると言われてて。魔法への変換の糸口が見つかりました。ありがとうございます。」
「いえ、私も、お二人へ教えることで、より理解を深めることが出来ましたわ。こちらこそありがとうございます。」
お互いに喜び合う3人の元へ、マーベラスが近づき、爆弾を投下する。
「それで、次の筆記試験は乗り切れそうか。」
「ううぅ。まだ理解しきれていない科目が・・。」
「私も。5科目全部はまだ・・。」
妹が頭を抱え、カンナもつられて気分を落とす。
「でしたら、次の休日に私の家で勉強会はいかかでしょう。休憩にはとびきりのデザートを用意いたしますわ。」
「え、いいんですか。」
二人の表情に光が差す。
「ええ。朝、校門前までお迎えに上がりますわね。」
「よろしくお願いします!」
ということで、勉強会の開催が決まったのだが、コスモスの家の大きさなど、この時の二人は想像だにしなかった。
その日のお昼休み。司令塔ミーティングがあるレツに代わり、調査結果の入った封筒をカンナが届けることになった。
「ごめんね。一緒に行ければいいんだけど。」
「だいじょぶだよ。これを渡すだけだし。」
午後の実践講義の準備をしなければならないカミルレとアマリリスが謝るが、封筒を受け取ったカンナはへーきへーきと呑気なものだ。ちなみに、アルメリアとフクシアは食堂へ行ってしまった。
「じゃあ行ってくる。」
3年生の教室に向かったカンナだったが、目的の人物はおらず、特待科棟の階段下倉庫にいると言われてそちらへ向かう。
「ハイド先輩いますか。」
「ここにいるが、ってうわぁ!」
短い梯子を登ったロフトの上にいたハイドが、身を乗り出した際に勢い余って落ちそうになる。
防衛魔法、プレスィオン・パレー。(圧力壁)
カンナがすぐに柵を作って落下を防ぐ。
「ごめん、ありがとう。ずっと変な体勢をとっていたから、足が痺れてしまったようだ。それで、俺に何か用かい?」
「はい。先輩に渡したいものがあって。」
「俺に渡したいもの?」
そしてカンナは預かっていた封筒を渡すのだが、この時のやり取りを盗み聞いて、あらぬ勘違いをした人がいたなど、知る由もなかった。
よく晴れた休日の朝の校門前。先に来ていた学校指定の背負いカバン1つのカンナの前に、遠征用のリュックに手提げバッグ2つのアマリリスが到着する。
「おはよう。うぇっ、荷物多いね。」
「教科書、ノート、問題集に資料集。教えてもらう予定の範囲の分、全部持ってきた。」
「えぇ・・。」
アマリリスの思い切った行動にカンナが若干引いていると、音もなく黒塗りの高級車が2人の横で止まり、後部座席の窓が開いた。
「お待たせ致しました。お二人とも、どうぞお乗りくださいまし。」
「あ、ありがとうございます。」
こんな高級車は初めてだ。強者感にやられて、二人して思わず引き攣った笑顔になってしまった。
ふわふわのコの字型の座席に落ち着かないうちに、長い塀が見えてくる。
「あの、先輩。もしかして・・。」
「えぇ、ここからが私の家の敷地になります。門扉はもう少し先ですわ。」
「あはは・・。」
これが社会の格差というものだろう。越えられない高い壁に打ちひしがれて乾いた笑いをたたえていると、大きな鉄の門が見えてきた。門番の一人が車に気付くと、二人がかりで重そうな扉が開いていった。
「うわぁ・・。」
思わず感嘆の声が漏れる。見渡す限りの花、花、花。立派なお屋敷を中央に、シンメトリーに配置された左右の東屋を囲むように、庭園がきちんと手入れされ整備されている。特待科棟にも庭園が併設されているが、それといい勝負だ。
目の前の噴水を左から回りこみ、エントランスまで向かうと、白髪にモノクルの執事らしき男性が待ち構えていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。準備はすでに整ってございます。お二方も、ようこそいらっしゃいました。」
執事の男性が恭しく礼をしてみせるので、カンナとアマリリスも会釈をする。
「ありがとう、ナーガ。お二人をお部屋までご案内して差し上げて。私は資料を持って参ります。」
「かしこまりました。」
静まり返った部屋の中で、ペンの走る音がふと止まる。
「では、小テストをお返ししますわね。」
「あー、また間違えた。さっきも間違えたとこじゃん。」
「私もケアレスミス多いなぁ。」
返された小テストの赤い丸やバツを確認しながら、付けられた点数を見て、二人して眉間に皺を寄せる。
「記述式の我が校の筆記試験では、減点方式が採用されています。今回の小テストもそれに合わせて減点方式で採点しております。小さなミスが大きな減点につながってしまいますので、そちらのポイントを改めて確認致しましょうか。」
「はーい。」
その日の2度目の小テストは、それぞれまずまずだったようだ。
この後も、まだまだ勉強会は続く。
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