side story アマリリス編その1 とある朝の前奏曲(プレリュード)
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=side story=
燃える恋花の狂想曲
これはまだ、入学したての頃の話。
「おはようございます。」
「お二人とも、おはようございます。」
特待科棟1階の3年生の教室。1限目が始まるより一刻以上も前のこと。登校した身のまま3年生の教室に向かったカンナとアマリリスは、先輩であるコスモスに勉強を教えてもらっていた。
「でも先輩凄いです。マー兄と火属性でワンツートップだなんて。」
「そんなことありませんわ。私がただ、子供学校時代から家庭教師をお願いしていただけのこと。独学でしたらどこまでついていけているか。」
この国の財政を回す、いわゆる財閥がいくつかある。各州に1つずつはおり、それぞれで医療や教育、物資調達などの多額の資金を必要とする事業をおこし、各地域の発展に大きく貢献している。
その1つがキャンベリー家だ。このプロイ・オニラ州を中心に、銀行やデパートの運営を多く手掛け、流通に大きく関わっている。コスモスはそのキャンベリー家の一人娘である。聞けば子供学校時代から家庭教師をつけているとか。学校では一般教養を学び、経営に関わるような分野を家庭教師により深く教わっているらしい。
「数の計算や理論、魔法に起因しない現象の原理などを教わってまいりました。さらに、特待科進学後は、経営学や魔法現象学なども教わるようになりましたわ。」
その内容はかなり噛み砕かれているようだが、本来は高等学校や高等機関で学ぶ範囲である。人よりも先の学習をしているのはいうまでもない。
「お二人も、魔法の技術が素晴らしいではありませんか。ミスター・ラードンからお噂はかねがね聞いておりますわ。」
「いやぁ、あたしの場合はマー兄の見よう見まねだし。」
「私も、おじいちゃんが厳しかっただけなので。」
目をキラキラさせるコスモスと違い、カンナとアマリリスはそれぞれ別の方向に目を遣りながら頬を指で掻いている。
「おはよう。今日も勉強会?」
「お二人とも頑張りますね。」
ベルガモットとフリージアが登校してきて声をかける。
「はい。魔法以外は頑張らないとなので。」
ベルガモットと目が合ったアマリリスが答える。
「二人は火と風だっけ。」
ヒロトもカバンを背負ったまま声を掛ける。
「はい。」
「そういえば、風の女の子の技が凄い、ってウチのガイが言ってたな。」
「え、私ですか。」
後から来たハイドが思い出したように言うと、カンナが首を傾げる。
「この間の討伐同行してくれた時にやったプランタ・ティヘラスの正確さに驚いていたよ。もちろん私もだけど。」
バニラが説明する。
「案外、ころっと好きになってたりしてな。」
「いや、まさかぁ。」
ヒロトがケラケラと笑うが、カンナはそんなことはないだろうと引き笑いだ。
「お、やっぱりいた。ほい、今日のお昼。それ持ってそろそろ上がりな。」
「え、ソレあたしの?」
「まさか母さんが作ってくれてる途中で出ていくとはな。しかも、それに気づいていないときた。お前もまだまだだな。」
兄であるマーベラスから、お昼ご飯のお弁当袋を受け取る。
「あちゃー。帰ったら謝んなきゃ。」
「ま、お前が勉強頑張ってることはわかってるから、味の感想言ってあげればいいと思う。」
「うん、そうだね。ありがとう。」
「では、本日はここまでといたしましょう。先ほどの問題の正答例はまた明日の朝ということで。」
予定より少し早いですが、と前置きをしてから、コスモスが問題集を閉じる。
「ありがとうございました。」
「またよろしくお願いします。」
二人も勉強道具を片付け始める。
「そういえばさっき、教室に入ろうとしたガイが逃げるように去っていったんだが、何か知ってるか。」
マーベラスの一言に、教室内にいた全員がドキリと肩を揺らす。
「ん?本当に何かあったのか。」
「いや、まさかな。」
押し黙ってしまうみんなの代わりに、ヒロトが辛うじて口を開いた。そこでちょうど予鈴が鳴ったので、これ幸いと二人が教室を後にする。
3年生の教室から玄関を挟んだ向こう側の階段を目指していると、靴箱に隠れるようにして誰かが3年生の教室の方に行くのがわかった。
「・・まさかね。」
ねー、っと二人で顔を見合わせてから、階段を駆け上がった。
その日の午前の教室講義が終わった後。後ろの黒板の予定表を見ながら、この後の動きを確認する。
「午後は外課題だったっけ。」
「はい。自由依頼だったかと。」
アマリリスが確認すると、アルメリアがにっこり笑って答える。
「私、リリー、カロン、行く。」
「あぁ、飲食店の夜のスタッフの代役だったっけ。」
「そう。」
フクシアが選んでくれたのは、彼女の故郷にある個人経営の飲食店のお手伝い。魔法であっという間に現場に行けるので、こういった急な依頼も来るのだ。単に悪魔退治だけが依頼されるわけではない。学校側が定めた規定内であればなんだっていいのだ。
「ルーちゃんはもう決めたの?」
「いや、まだだけど。」
アマリリスがカミルレに声を掛けると、じゃあ、と意外にもレツが反応した。
「3年生のハイドさんから頼まれごとをされてて、それの手伝いをしてくれないか。」
「いいけど。レツにって言うと、水の精霊様関連?」
「ああ。とある町の水質調査を頼まれている。」
「オッケー。」
二つ返事で承諾するとカバンを手に取る。
「じゃあ、また明日。」
「お気をつけて。」
レツを追いかけて出ていくカミルレに、アルメリアが声を掛ける。
「じゃあ、あたしたちも行こっか。」
「うん。」
そうしてアマリリスもフクシアを伴って、他の人よりも少し早く教室を出た。
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