第9楽章その3 フクシアを救うためには
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
「今がチャーンス!!」
突然ガイの叫び声が響いて全員がミマスに注意を向けると、動きが鈍った一瞬を見逃さなかったガイの一言で、討伐隊が一気に畳みかけていた。
防衛魔法、エンフォカール・カンビオ。(焦点をずらす)
防衛魔法、リオ・パレー。(川の壁)
攻撃魔法、ソル・ランサー。(光の槍)
ベルガモットがミマスの視界を奪い、ハイドが後退を阻み、アラタの攻撃で前傾姿勢を崩し、まるでバンザイをしているかのようなポーズになっていた。
「今だ!」
強化魔法、ソル・トレンラピド。(光の特急列車)
リアトリスの援護で勢いをつけたフリージアとヒロトが、それぞれミマスの右足と左足に飛び込む。
抑制魔法、ピエ・ブロケオ。(足を施錠)
ぎやあああ。
攻撃を受けて叫びを上げるミマス。その声が、みんなにはフクシアが泣きじゃくっているように聞こえてきて。
「フクシア!お前、つらかったんだな。今まで気づいてやれなくて悪かった。」
「ごめんね、力になってあげられなくて。本当にごめん!」
レツが、カミルレが、フクシアに届けと叫んでいた。その様子に、動こうともがいていたミマスの動きがピタリと止まる。
「何か困ってることあったら言えって、レツも言ってただろ!どんな些細なことだって構わねぇ。フォローしてやるって言ってただろ!」
イアンの言葉に皆が思い出す。泣きながらも、辛い過去と向き合ったアルメリアに送った、レツの心強くあたたかな言葉を。
『大丈夫だ、安心しろ。僕たちがいる。僕たちだってお前と一緒にいたい。お前ひとりのミスなんかすぐにカバーしてやる。だから・・、困ったらすぐ言えよ。どんな些細なことでもフォローするから。わかったな。』
あの時はアルメリアに対して言っていたが、その内容は誰にでも当てはまる。あの言葉の対象は、決してアルメリア一人だけではなかったはずだ。
「フクシア!」
イアンの叫ぶ声に、ミマスの中のフクシアの意識も現実に戻り、まっすぐに見据える彼の真剣な眼差しを捉える。
「お前から見た俺たちは、そんなに頼りないのかよ!」
『うっ!?』
イアンの悲痛な叫びに、ミマスの中のフクシアが息をのんだのがわかる。みんなが、フクシアの言葉を待つ。そして、しばらくの沈黙の後、苦悩の心情を静かに吐露した。
『私、言えない。みんな、きっと、心配する。迷惑、イヤ。』
「そんな、迷惑だなんて・・。」
アマリリスの言葉を聞き終わらないうちに、フクシアが一気に激昂する。
『私、イヤ!』
ズドドドドと大きな音を立てながら、トランプ型の爆弾が大量にみんなに降りかかる。攻撃魔法、カルタ・アグハだ。フクシアの土属性の攻撃魔法だ。ただし、フクシアの意思ではなく、フクシアの哀しみに反応したミマス体による無詠唱展開だ。
うわあっ。
「危ないッ。」
防衛魔法、エスペホ・コルティナ。(鏡のカーテン)
攻撃魔法、クチジョ・アセルビエント。(ナイフの風が吹く)
攻撃魔法、フロル・アサル。(花を焼く)
アラタとリアトリスが1年生をかばっている間に、ガイとマーベラスがミマスの攻撃に対して正確に狙い撃ち、安全な空中でわざと爆破させて威力を殺す。けれど。
『う、私、みんな、傷つけたくない。』
フクシアの苦しみに比例するかのように威力が増し、その攻撃に堪えかねたフリージアとヒロトが体勢を崩してしまい、ミマスが自由を取り戻してしまう。
『イヤ、嫌、いやだ!』
フクシアの意思に反して仲間への攻撃を続けるミマスに、フクシアの怒りが混ざって、さらにミマスの手が出る足が出る。
「くっそ、どーすんだよ、マーベラス。」
吹っ飛ばされたヒロトが、傷口をかばいながらイラつく。
「手がないワケじゃないんだが・・。」
隊長マーベラスは二の足を踏んでいるようで。
「もしかして、この前やったあれ?」
リアトリスが思い出したように言う。
「ああ、あれだ。」
「えぇ・・。1年に出来るのか?あれが。」
「というか、人数欠けてるから厳しいんじゃないの。」
マーベラスの肯定に、ガイやベルガモットが渋い顔をする。その様子を女子がポカンと眺める中、1年司令塔レツが隊長に詰め寄る。その獣を射るような目を見て、マーベラスは一つ溜め息をつくと、リアトリスに指示を出す。
「僕が抑え込む。その間に説明しておいてくれ。」
「・・了解。」
攻撃魔法、フロル・レクト。(花をまっすぐ)
こちらに伸びてきていたミマスの手を、隊長が火属性の攻撃魔法で退ける。
「あの建物の蔭へ。そこで詳しく話します。」
「了解。」
リアトリスの指示に、ミマスを一瞥した後、レツが返事をした。
「皆さんは、合体魔法のスィンコ・フレチャーという技をご存じですか。」
1年生たちはお互いに顔を見合わせる。
「話には聞いたことがあります。授業の話題に一度上がった事があるので。」
カンナが答える。
「わかりました。それでは改めて私から。このスィンコ・フレチャーという合体魔法は、各属性の魔法使い5人が、それぞれ攻撃魔法のエスピリート・フレチャーを展開し、目標点でそのエネルギーを集約させる技です。」
「各属性の魔法使い5人が・・。あ、だから”スィンコ・フレチャー”。」
「その通りです。」
カミルレの気づきに、リアトリスが頷く。
「でも、エスピリート・フレチャーって、かなり難しい技ですよね。」
「はい。かなり負担のかかる技になります。だからこそ、マーベラスさんも迷われたのではないかと。」
技を知っていたレツの確認に、リアトリスが肯定する。
”難しい”という単語の登場に、一気に緊張感が走った。
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