第9楽章その2 フクシアの主張
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
嗚呼、手を伸ばしても届きそうにないところにレツたちがいる。足元には隊長たちがいて、自分の動きをロックしていた。
声が聞こえる。自分の名を呼ぶ声が。
「フクシアー!ねぇ、聞こえる?聞こえてるならもうやめてー!」
「一緒に戻ろう!いつもの教室に!」
カミルレとアスカが必死に叫ぶが。
「ダメ、通じてないみたい。」
「どうしよう。」
アマリリスの言葉にカミルレが狼狽える。
「もう少し粘ってみよう。」
「そうね。やるっきゃないよね。」
一つ深呼吸をするレツに倣って、カミルレも気合を入れ直す。その様子がもどかしくて手を伸ばすと、思わずみんなを叩き飛ばしてしまった。
うわあぁぁっ。
きゃあーっ。
『ごめん、みんな。』
声が響き渡る。
「フクシア?フクシアなの?聞こえてるの?」
アマリリスが驚き興奮している。
『聞こえる。みんな、声、聞こえる。』
「どうしてこんなことになったんだ。僕たちにわかるように、ちゃんと説明してくれ!」
「フクシア、お願い。あなたを救いたいの!」
レツの怒りに触れ、カミルレの懇願を聞く。自分を思いやる心遣いに、少し考えた後、重い口を開いた。
『資料館、ガニメデ、爪、私、盗った。』
「資料館・・。あっ!?」
話しを聞いていたマーベラスが思い出す。10月の半ばに起きた盗難事件。町のオフィス街の一角にある複合ビルで、学校が運営している魔法についての資料館。そこに特別展示されていたガニメデの爪が消えた事件。その真相は未だ明かされていなかったのだが。
『爪、ガニメデ、渡した。私、報酬、もらった。』
どうやら、犯人はフクシアで、ガニメデに返すことで報酬を得ていたらしい。
「授業で習ったじゃん!そんなことすると断罪者になっちゃうって!」
アマリリスが顔を歪めるが。
『気持ち、みんな、わからない。』
憤りを覚えて意図せず体が動いてしまう。今度はミマスとしてではなく、フクシアの感情が暴走していた。3年討伐隊が応戦して、動きを封じてくれている。
防衛魔法、コヒン・アブリゴ。(クッションコート)
抑制魔法、プレスィオン・アビタスィオン。(圧力の部屋)
抑制魔法、ピエ・ブロケオ。(足を施錠)
まずアラタが攻撃を受け止め、ガイが動く範囲を固定したところで、フリージアとヒロトで動きを止める。あくまで討伐隊らは冷静だが。
アマリリスが泣き崩れ、カミルレが立ったまま動けないでいる。どう説得しようかとアスカが頭をフル回転させ、どうにかしなければと焦るレツがぎゅっと拳を握りしめる。自分の動きを封じようといくつもの技を展開し、連携して手を回す3年討伐隊の様子も相まって、その光景は半ば地獄だ。
そんなところに、3人が到着するのだが。
「やっと来たか、カンナ、ジャン、イアン。」
「お待たせ。」
アスカがすぐに気づいて、カンナが反応する。
「これ・・、フクシア・・なのか。」
イアンが言葉を失っている。
「うわぁ。大きい・・。」
ジャンもその巨大さに圧倒されているようだ。
「今はとりあえず、3年生の皆さんが動きを止めてくれている。」
「結構ギリギリみたいだね。」
アスカの最低限の説明だけで状況をある程度理解したらしいカンナが、その戦況の悪さに気を落とす。
「あ、いろいろ調べてきたよ。」
「あ、うん。フクシアの生い立ちと、断罪者について。王立魔法資料館の特別室で情報もらってきた。」
「はっ、あっ、ありがとう。早速教えてくれるか。」
「うん。」
ジャンとカンナに話しかけられて、レツは固く握っていた拳をほどいて、肩の力を抜いた。冷静さを取り戻したレツの所に、マーベラスとコスモスの3年ツートップが向かうと、こちらも落ち着きを取り戻したほかの1年生も話を聞きに集まった。
「まず前提として、フクシアの両親はもういない。何年も前に災害に巻き込まれて亡くなってた。それが、今のフクシアの始まりだったの。」
カンナが重々しく語り出し、その場にいたみんなが耳をそばだてる。
「兄弟がたくさんいる長女だったんだ。弟が2人、妹が3人いるみたい。その子たちを、学校に通いながら一人で面倒を見てたらしいんだ。」
「フクシアって、そんな生活してたのか。」
「確かに、放課後に遊びに誘っても1回も来てくれなかったけど。」
ジャンの報告に、疑問を持ったアスカが驚き、アマリリスが納得する。
「今フクシア自身は魔法学校の安い寮に入ってこっちにいるけど、フクシアの弟や妹たちは故郷であるカロンに残っているから、様子を見によく帰ってたみたい。」
カンナも情報を出す。
「家庭教師とかやって稼いでたみたいだけど、それでもかなり厳しかったみたい。」
ジャンが手帳を見ながらさらに補足する。
「さっき、ガニメデから報酬を受け取ったって言ってたよな。」
「それ、本当かよ。」
「ああ。確かにそう言ってた。」
レツの発言に、聞いていなかったイアンが懐疑的な目を向けるが、アスカやマーベラスが肯定するのを見て溜め息をついた。
「もしかしたら、最近はそういうので生活してたのかも。」
「案外、そういう理由で断罪者や断罪人になってしまう人が多いのかもな。」
妹であるアマリリスの推測を聞いて、兄であるマーベラスが推察した。
「魔法警察官の報酬金は一般企業よりも高いと聞く。それを安定して得られれば大きいだろうな。」
「もしかして、フクシアが魔法警察官になりたい理由って・・。」
「安定した収入を得て、弟さんや妹さんを養いたいから、かもしれませんわね。」
レツの持つ情報を聞いて、フクシアの夢を知っていたアマリリスが想像をする。そして、同じ想像をしたコスモスも、フクシアの苦労を思いやり、ミマスを見上げるのだった。
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