side story レツ編その3 襲いかかるもの
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
スズラン姉さんたちを乗せたバスが大事故を起こした。原因は運転手のアクセルとブレーキの踏み間違い。僕が母さんと駆けつけると、バスはガソリンのせいで炎上。逃げ遅れた乗客の阿鼻叫喚でまるで地獄のようだった。
「姉さん!スズラン姉さん!」
攻撃魔法、オラ・ダンサー。(波の舞)
魔法警察官に混じって救助活動を手伝う。水属性の攻撃魔法で消火しながら、バスの窓ガラスを割る。
攻撃魔法、アーグア・フレチャー。(水の矢)
「いた!」
目の前のガラスが割れると、その向こうに丁度姉さんがいた。
「スズラン姉さん!」
僕に気づいた姉さんは静かに首を横に振る。その首元は酷く火傷していた。
「姉さん、早く脱出しよう。」
必至に脱出を促す僕に、スズラン姉さんはやっとの思いで右の腕を伸ばしてくる。その服はすでに焼け焦げ、肌はすすを被って黒くなっていた。その真っ黒な手を僕の顔の前で大きく広げる。まるで僕に”来るな”と言うように。
「姉・・さん。」
最後の力を振り絞るかのように、強く、大きく手を広げて僕を止める。その行動を見た僕の口が、勝手に動く。
「姉さん・・。姉さんの分まで僕が生きるから。生きて、守るから。町も、友達も、母さんやモクレン姉さんも。全部、僕が守るから!」
その決意を聞いて姉さんが口を開き、頑張って声に出して僕に応えてくれたんだ。
「よろしくね。」
それは、オルゴールのように細いけど、まっすぐな声だった。
声の余韻に浸らせてもらえる間もなく、ほかの窓ガラスがパリンパリンと端から割れていく。
「レツ、早く下がりなさい。」
母さんの声で我に返ると、姉さんがニコッと笑うのが見えた。そして、僕がバスから離れるのを待っていたかのように、バスが大爆発を起こしたのだったーー。
「それ以来、母さんも体調を崩してしまい、モクレン姉さんが学業の傍ら介助。僕は魔法学校への入学を機に、母さんに代わって水の精霊様の使いになったってワケだ。」
話し終わって4人を見ると、みんな涙ぐんでおり、アスカが目頭を押さえていた。と、我慢の限界を迎えたジャンがレツに飛びついてきた。
「うわーん、レツゥー。さみしかったんだねー。」
「急に飛びつくな。鼻水汚いし。」
「どの家も、大変なモンだな。」
イアンが呟く。
「お父さんの墓参りもするのか。」
「いや、父さんの命日は違う日だよ。」
「そっか。」
カインが確認をする。
「いや悪いな、依頼の遂行中に引きとめて。」
レツが肩をすくめると、イアンが格好つけるように言う。
「大丈夫だ。もう大体は終わってるし、4人いるからすぐ終わるさ。」
「そうか。じゃあ悪いが僕は行かせてもらうよ。」
「ああ。ムリするなよ、明日の笑顔のためだ。」
「すまない。」
気を遣い始めるレツにアスカが胸を張る。それを確認したレツは、とぼとぼと階段を降り始めた。
「オレたちも降りよう。まだ下の片づけが途中だしな。」
「了解。」
4人も階段を降り始める。と、レツが空を見上げて突然声を上げる。
「待て、何か来る。」
レツが構える。それを見て4人が空を見上げると、悪魔の通り道たる黒い球体”風穴”から悪魔が降ってくる。次の瞬間には全員戦闘態勢に入る。
「ジャン、上だ。」
「任せて。」
攻撃魔法、ヴェラーノ・ペゾーニャ。(真夏のひづめ)
「効いて・・ない。火の耐性なのか。」
驚きながらも分析を始めるレツ。
「おそらくな。後は場所的に土属性だろうから、オレは下がる。」
「了解。じゃあ敵の動きを封じられるか。」
代理司令塔のアスカがレツに声を掛ける。
「わかった。やってみる。」
攻撃魔法、リオ・ディレクトル。(川の指揮者)
川をムチのようにして敵にぶつけるが、なぜか弾かれてしまう。
「あれ、土属性火耐性のはずだけど。」
攻撃魔法、ソル・ランサー。(光の槍)
カインの放った魔法が少し効く。
「よし、ちょっと効いてる。」
「いけいけカイン。」
空気を変えるためにジャンがかわいい応援を送る。
攻撃魔法、クチジョ・アセルビエント。(ナイフの風が吹く)
「風属性魔法も効いてるな。でも、これじゃ時間がかかり過ぎる。」
アスカの技を見て、イアンが分析をするが、舌打ちをしている。
「応援呼ぶか。」
「どうする?って、カイン危ない!」
敵が攻撃を仕掛けてきたことに気付いたレツが阻止しようとするが。
防衛魔法、リオ・パレー。(川の壁)
ザサーッ
「あ、破った。」
防衛魔法、エスペホ・コルティナ。(鏡のカーテン)
間一髪で攻撃を避けるカイン。落ち込んで自分の手のひらを見つめるレツ。その心情を察するアスカ。
と、レツに敵が襲い掛かってくる。
「危ない!」
その危機を救ったのは。
『アーグア・ボークス(水の箱)』
悪魔を水の膜が取り囲んでその動きを封じる。声のした方を見ると、そこにいたのは。
「レツ!・・じゃなくて、えっと、水の精霊様?ですよね。」
カインが混乱しながら確認する。そう、二人を送っていたはずの水の精霊様だった。
しかし、そんな水の精霊様には目もくれず、レツは自分の手をぎゅっと握りしめる。
「倒したいのに。守りたいのに。なんで。」
精霊様が戻ってきたことに対してガヤガヤと言う4人をスルーして、その精霊様はレツの呟きを聞き逃さなかった。そして余裕たっぷりにレツの顔を覗き込む。
「レツくん、こいつを倒したいんだね。だったらボクが代わりに倒してあげるよ。」
目を丸くする5人を前に、精霊様が表情を引き締めた。それによって空気が一気に変わったことを、誰も逃さなかった。
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