side story レツ編その1 山奥の霊宅にて
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=side story=
光の忘れモノ~レツ編~
クレアとの邂逅からわずか二日。今日も今日とて僕らは学業に励む・・のだが。
カサッカサッカサッと、落ち葉を掃く音だけが響く。
「ったく、なんで落ち葉掃きなんだよ。」
「まぁそう怒るなよカイン。落ち葉が多いと”湧場”になっちゃうからね。これも大事な仕事だよ。」
イアンがなだめる。
今日は自由依頼でとある霊宅に来ている。自由依頼の日は、特待科の掲示板に貼られている依頼書を見て、グループごとに選んで依頼を受ける。今日は女子と男子で分かれ、女子は遊園地の演出の手伝いに行った。男子はイアンの選択で4人で山奥にひっそりと建つ霊宅に来たのだ。
「で、ボクたちの”司令塔”は?」
「家の用事で休みなんだと。」
ジャンの質問にアスカが答える。珍しく司令塔が早退でいないので、代理司令塔をアスカが任されていた。
「ジャン、いいぞ。」
「よーし、燃やすぞー。」
攻撃魔法、フロル・アサル。(花を焼く)
集めた落ち葉で焚火をする。
「火力ちゃんと調節しろよ。」
「大丈夫だってば。・・って、うわあ!」
言ってたそばからこれだ。明らかに燃えすぎだ。
「ったく、もう少し考えて制御してから展開しろよな。」
「うう、だってぇ。」
早くしないと近くの林に火が移ってしまうのだが。
防衛魔法、リオ・パレー。(川の壁)
炎の勢いを弱めたのは。
「お前ら、言い争う前に対処しろよな。」
「あ、レツ。」
「どうしたんだ、司令塔。」
喪服に身を包み、片手に花、片手にライターと線香を持った司令塔が、女性二人を連れて石段を登ってきたのだ。
「どうしたはこっちのセリフだ。なんでお前らがここにいるんだ。」
「自由依頼で湧場潰ししてたんだ。そっちこそ、花なんか持ってどうした?」
アスカの質問に、一度花に目を落とした後、遠い目で答える。
「何でもない。ただの墓参りだよ。この二人は僕の母と姉だ。」
二人は何も言わずに会釈をした。母親と思われる女性が、若い女性に支えられていた。
「ご愁傷様です。」
アスカが頭を下げる。それを見た3人も頭を下げる。
「お気遣いありがたく。」
そんなしんみりとしたやり取りをしていると、石段の下から誰かがやってくるのが見えたのだが。
「レーツくーん。何かあったのー?今、水の柱がブワーッて。」
石段の下からやってきたのは、まさかの”レツ”だった。
「えっ、レ・・ツ?」
「は、え、どういうことだ。」
誰だコイツという視線を感じてピタリと止まるもう一人のレツ。その様子に、呆れたレツが大きく溜め息を吐いてから口を開く。
「水の精霊様、どうしてここへ来たんですか。おとなしく待っていてくださいねって言ったじゃないですか。おかげでややこしくなりました。」
「だって、スズちゃんの墓参りでしょ。ボクも行きたいよぉ。」
「そういう子供が駄々をこねるような品格のない言動は控えてくださいよ。まったく、いくつになるんですか。」
「そろそろ4千歳。」
答えを聞いて、またレツは大きく溜め息を吐いた。
カインたちは思った。こんな4千歳にはなりたくない、と。
「まあいいじゃないの、レツ。」
母親に促され、仕方なく許可を出すと、水の精霊様はまるで保育園児のように喜んでいた。
「で、お墓ってどこだっけ。」
精霊様は霊宅の横の墓地に目を遣るが、レツは霊宅の裏の木の階段を指さす。
「ここじゃないですよ。もっと上、この山の頂上近くです。まだしばらくは登りますよ。」
「新鮮な水を浴びたいだろうって、ここの預かり人さんと山の所有者に頼み込んだのよ。あの子は水属性の魔法使いだったから。」
母親が補足する。
「それじゃあ、行くか。みんな、またな。」
「ああ。」
そして、3人+一人、仲良くまた登っていく。まぁ、一人と数えていいのかはわからないが。
背中が小さくなるまで見送った後、ジャンが口を開く。
「アレ、ホントに精霊様なの?」
テン、テン、テン。
不審感が漂う。
「マ、まぁ、レツが言うんだから、間違いないと思うよ。」
「ア、アァ。確か、精霊様はヒトに化けられるそうだからな。」
無理矢理納得しようと、慌てる4人。
「でも、あのレツが手を焼いているとはな。相当精神年齢が低いんだな。精霊様って言うのは。」
「あはは・・。まあでも、まだ上があるのがわかったから、ここ早く終わらせて、上もやってあげよう。」
「了解。」
優しい風が吹いている。
「あの事故からだいぶたったわね。さみしいわ。」
さみしさを物語るように枯れ葉が積もるお墓。名前の所だけ手で払ってお参りをしていると、一陣の風が抜ける。
特殊魔法、オハ・ウイール。(葉が逃げる)
家族が振り返ると階段を登る男子4人の姿が。
「アスカか。悪いな。」
「いいや、気にするな。」
二人の間に気安い空気が流れる。
「”スズラン・ネーピッド”。大事な人か。」
カインの質問に、懐かしそうな目をしてレツが答える。
「僕の下の姉だ。アルメリアが奇跡的に生き残ったあの事故の、犠牲者の一人だよ。」
「ああ、前に話してくれた。」
「ああ。」
アスカはしゃがんで、ほかの3人も立ったまま、手を合わせた。
二人の女性は何も言わずに一礼した。
それに応えるようにアスカたち4人も一礼した。
「どんな人だったんだろう。でも、きっと優しかったんだろうなぁ。だってこんなに愛されているもの。」
ジャンの発言に皆笑顔をこぼす。
「そういえば、レツくんはスズちゃんの声聞いたことあったっけ。」
「声?」
水の精霊様の言葉に4人がポカンとする。
「また余計なことを。」
レツが頭を抱える。
仕方ないという表情でお姉さんが口を開く。
「スズちゃんのこと、話したら?あたしは先に帰るね。お母さん、行こう。」
母親はうなずいて歩き出した。
「え、ちょっと、モクレン姉さん!?」
お姉さんは立ち止まって振り返る。
「レツくんの声、ランランに聞かせてあげてよ。」
そしてまた歩き出す。肩を落としたレツを置いて。
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