第8楽章その1 走馬灯
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=第8楽章=
おもひで
ぐはあぁぁぁ。
岩陰で一人血を吐く。二人の活躍のおかげで私も・・と思いを馳せつつ、静かに目を閉じる。走馬灯のように思い出されるのは、数百年前の昨日の出来事。
「そういえば、久し振りに聞いたな、あの名を・・。」
それは、クレアが断罪者となる1年ほど前の話。
その日は、よく晴れた日だった。教室の机の上の置き手紙を読んで、私は山の中をクラスメイトと急いでいた。
「見えてきた!」
「あの小屋じゃねーか?」
「とにかく入ってみよう。」
バタン
勢いよく蹴破られた扉の向こうの壁際には、縛られたクレアの姿が見え、ガタイのいい山賊どもが数十人いた。扉の音と声に、一斉に動きを止めて音のする方を見る。
「クレアッッ!」
「少女の仲間か、おめえら、やっちまえ。」
頭領の一声に一斉に男たちが飛び掛かる。しかし、見習い魔法使いたちはそんなものはするりと抜けて中に入ると、頭領目がけて一直線に襲い掛かる。その隙にジュピターがクレアに近づき、縄と口のテープを取る。
「まったく、クレアったらまたムチャして。今回はメモのおかげでここに辿り着いたけど・・。書けない状況だったらどうするのよ、まったく。」
数日前に対応した事件。根城は潰したものの、盗賊団には逃げられていた。メモには、『盗られたものを、取り返してくる。』とあり、一人で盗賊団の隠れ蓑へ向かったのは明白だった。
「ごめんごめん。あいつらが許せなくて。」
えへへと笑うクレアにジュピターが呆れて溜め息をつく。
「で、戦える?」
ジュピターの確認にクレアはニヤリと笑いながら答える。
「もちろん。」
見習いたちはクレアも含めて頭領を魔法で軽くあしらうと、風のようにほかの山賊たちも倒していった。
攻撃魔法、クチジョ・アセルビエント。(ナイフの風が吹く)
もちろん、威嚇目的であり、急所は外しているが。
鎮圧が終わると、クレアの教えで小屋の裏に回る。そこには小さな蔵があって、大量の食糧とお宝を隠していた。
「よく気づいたね。」
「こっちの方角から、ガチャガチャバタバタ騒ぐ音が聞こえてたからね。」
仲間たちと手分けして持って下山する。その途中でジュピターがクレアの腕を掴み、とんでもないことを言いだした。
「ねぇ、後で魔法かけてもいい?」
「魔法って私に?いいけど、どんなやつ?」
くすくすと笑うクレア。視線を逸らしてほんの一瞬考えた後で答える。
「次にこんなことがあっても、クレアの居場所がわかる魔法。特殊な刻印魔法。」
「私の居場所がわかる?すごい呪文知ってるね、ジェイは。」
「まぁね。」
えへへと頬をかいた後、考えるポーズをとる。
「うーん、そうだなぁ。じゃあクレアは”ミランダ”ね。私は”エウロパ”かな。」
「”ミランダ”?”エウロパ”?それってこの前読んだ歴史書に出てきたワードじゃん。しかも、ミランダって確か”えぐれているもの”って説明されてたやつじゃ・・。」
「とにかく!」
深読みされたら怒られそうだったので、無理矢理話しを戻す。
「自分に危険が及びそうになったら、私を、”エウロパ”の名前を叫んで呼んでね。私も危ないと思ったら”ミランダ”って叫んで呼ぶから。」
「もしも、叫べなかったら?」
クレアが視線をずらす。おそらく、先ほどの状況を思い出しているのだろう。
「その時は、心の中で叫んでくれればいいよ。」
あまり間を開けずに答えると、クレアがふっと笑った。
「ふーん、いいよ。約束ね。」
「うん、約束。」
強く指切りをする。その後、学校で報告を済ませ、お互いに特殊魔法をかけたのだった。
ああ、あの日の指切りが懐かしい。クレアが断罪者として現れた時だって・・。
『エウロパ・・、助・・けて・・。』
彼女の悲痛な叫びが聞こえてきたから動けたのだ。動けたから、出会ったのだ。あの場所で。悪魔に成り下がってしまったクレアに。
それを思い出すだけで自然と泪が流れ流れる。けれど、つらい思い出のはずなのに、泪は右目からしか流れてくれない。
『クレアを助けるためなら、私は鬼になろう。救えるものなら私は、もう一度クレアを斬ろう。』
そう、決めたはずなのに・・。
結局、私は未だにクレアを助けられていないのだ。
あふれ出る泪は、血の味がする。
そんな風に感慨にふけっていると、空からカインが、地上からアルメリアがやってくる。
「校長!大丈夫ですか。」
カインが早口に言うのを聞いて、我に返る。
「私は大丈夫だ。それよりも、二人とも、いい動きだ。その調子でやってくれ。」
二人に必要以上に心配させてしまったようで、わざとらしく話題を逸らす。
「校長先生の推測通りに”五光火”ならば効果があることが確認できました。」
「カインくんのセジョ・アセルがクレアに効いたんです。」
「そうか。やはりな。」
”五光火”とは、光属性の魔法使いのみが展開できる火属性魔法の総称である。ちなみに、この5つの技を火属性の魔法使いは展開できず、光属性の魔法使いでも全員が全員展開できるわけではないし、5つ全てが展開できるとも限らない。素質を持つ者のみが出来る、特別な技であるのだが。
カインもアルメリアも素質を持ち、筋がいいので、すでに自分のモノにしているのだ。
火属性の技としてカウントされる”五光火”が展開できれば、光属性の魔法使いだけのパーティーにしていてもクレアに充分に対応できると思ってはいたのだが。
まさかここまでだとは思わず、ジュピターは一人ほくそ笑むのだった。
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