第7楽章その5 決着をつけようか
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
土の中を抜けて出てきたイアンの目の前には、フィーキャ・マリャから進路変更し、メルキュライの向こうのポティリ・オミッヒリ州カミノス・チェーリを目前に休憩中のカンナとジャンのペアが現れる。
「あぁイアンくん、お疲れ様です。」
予兆なしに出てきたイアンに1ミリも驚くことなく、水筒に入った果実水をごくごくと飲み続けるカンナ。
「レツからの指示で、エリア・ウラノースの王立魔法資料館に行ってくれ、とのことだ。」
「えー、今越えたばっかりなのに・・。」
ジャンががくりと肩を落とす。
「それで、レツくんはそこで何をしろと。」
「近年の魔法警察官の活動報告をもとに、悪魔と魔法警察官との関係性を調べてほしいとのことだ。」
「魔法警察官?」
落ち着き切ったカンナが聞き返す。
「そうだ。なんか、急ぎらしいからそちらを優先させてもらって構わないだろう。」
「うーん、よくわかんないけどわかった。」
とりあえず、ジャンが頷く。
「イアンくんはこの後どうするの。」
「マーベラス隊長に会って話してくる。」
「そうだね。お願いします。」
そう言うと、水筒を腰のベルトに提げるカンナ。
「よし、行こうか。」
V字にまた方向を変えて出発した二人を見送った後、イアンも再び戻るのだが。
「フクシアは無事だと良いが。」
それは、こみ上がる不安を地上に残した後で。
そんな仲間たちの会話など、露も聞こえぬ山の上。まだまだ噴火を続けるフォボス火山の火砕流の来ていない方向の森に身を潜める。ジュピターの握る魔剣の宝石の奥には、自身の虚ろな瞳がぼんやりと映る。そのうち、遠くの空からバサバサと羽ばたく音が聞こえてきたので、3人で気を引き締め息をこらえる。
特殊魔法、ソル・ボス。(光の声)
今度はカイン、お前も攻撃してくれ。
校長の魔法による指示に、カインが小声で了解、と返事をする。ともすれば吹き荒れる風や吹き出す炎の音の方がうるさいくらいのこの場所で、声にならない声で小さく会話をしていると、森の奥からやけに甲高い声が心の中へと響いてくる。
『ジェイ、私はここにいるよ。お願いだから助けてよ。もう時間がないの。お願いッ、エウ・・ロパ・・。』
「ぐッ、くそッ。その名を今呼ぶなよ。」
悔しそうにジュピターが歯を食いしばる。どういう意味ですか、とアルメリアが聞くと、早口でこう言った。
「クレアが”ミランダ”で、私が”エウロパ”。危機に瀕した際に、それが危機だとわかるようにと、お互いに付けた忌み名だ。」
「でも、それを今でも覚えているということは・・。」
「クレアの中に、まだ悪魔になり切っていない部分があると。つまりは、まだ人間の心を少しは残しているということですね。」
アルメリアとカインで推測する。
「おそらくな。だからこそ、早急に決着をつけねばなるまいな。」
食いしばった歯に力を入れるジュピターとは違い、希望の光を見出した二人は、自分たちに少し時間を下さいと断りを入れると、森の奥から現れたクレアに立ち向かう。
「行くぞ。」
「了解。」
強化魔法、ピエ・ラピド。(足を早く)
強化魔法、ソル・トレンラピド。(光の特急列車)
カインが光の速度で攻撃を仕掛ける。瞬時に悪魔化してクレアも避けていくが、距離は縮まるばかりだ。
攻撃魔法、ソル・ランサー。(光の槍)
カインの手からカイン以上のスピードで放たれる光の槍に、ほぼゼロ距離で貫かれたクレアが雄たけびを上げる。どうやら、属性による効力の差を距離でカバーしたようで、光耐性のクレアにダメージを負わせている。
あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛。
攻撃のダメージがクレアに効いたということは、ジュピターにも全身に痛みが走る訳で。
ううぅぅ。
やったか、と油断しているカインに、クレアの爪が容赦なく振るわれる。
「危ないっ。」
防衛魔法、パペル・アセルビエント。(紙に風が吹く)
風に吹かれた紙っペラのように、爪の軌道からカインがするりと外れた。
「カインくん、集中してください。」
「悪ぃ。サンキュ。」
そういう二人はニコニコしている。彼らは何を考えているのだ、と立ち上がろうとするジュピターだったが、先ほどの痛みがまだ残っていたようで、すぐにその場に崩れ落ちてしまう。それに気づいたアルメリアがサッと近づくと、もう少し待っていてください、と囁く。
「カインくん、お願いします。」
「了解。」
よしっと気合を入れ直したカインが、また勢いよくクレアに向かっていく。
強化魔法、ソル・トレンラピド。(光の特急列車)
「二度も同じ手には引っかからないモンね。」
爪の六刀流で突撃してくるので、カインが空に逃げると、先ほどまでカインがいた場所でアルメリアが弓矢を構えていた。
「今だ。」
カインの合図と同時に、アルメリアが矢を放つ。
攻撃魔法、ウノ・スィンコ・フレチャー。(一人版、5つの矢)
大量の五色の矢がクレア目がけて一直線に進み、様々な方向から突き刺さる。
いやあ゛ぁ゛ぁ゛。
矢の鎧に溺れているのを確認したカインは、アルメリアと一度目を合わせるとお互いに頷き合い、赤色と茶色の矢が突き刺さったままのクレアのもとへと落下していく。
攻撃魔法、セジョ・アセル。(刻印を焼く)
落下の重力を利用して押された刻印は、治りかけた傷の所にしっかり刻み込まれ、クレアに激痛が走る。
ギヤアァァァ。
これが”五光火”の一つ、セジョ・アセルの本領だ。超高温の刻印魔法。これが、内側から敵を焼き尽くすのだ。
熱さと痛みに狼狽えていると、クレアは足を踏み外し、ゴロゴロと転げ落ちていった。
二人はジュピターのもとへ急ぐ。彼女は岩陰で血を吐き、目はすでに虚ろだった。
ページの最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでもおもしろいと思ったら、評価や感想を残して頂ければ嬉しいです。これからもマイペースに投稿していきますので、続きが気になった方はブックマークをしていただければと思います。




