第7楽章その3 策を練り直す
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
目下では噴き出したマグマが山を下っている。幸い、”火山の聖水”があるため、町に危険が及ぶことにはならなそうだ。そんな様子をニヤニヤと見ながら、思ったとおりね、とクレアが呟くのが聞こえて、カインの背中を悪寒が走った。
「町の心配より自分の心配をしたら?」
次の瞬間、空にいたと思っていたクレアが、よそ見をしていたジュピターに向かって突進してきた。
攻撃魔法、フロル・レクト。(花をまっすぐ)
光速移動中で視界から外れていたアルメリアの技に押されて、向かってきていたクレアが逆に吹き飛んでいく。
ぐわあぁぁぁ。
「助かった、ありがとう。」
光属性同士なら居場所がわかるのか、ジュピターはしっかりとアルメリアを捉えている。あ、いや、もう止まってた。
「一度離れて様子を見る。一旦散れ。」
「了解。」
急降下して森に退避する。山の反対側の森は火砕流によって既に赤黒くなり始めていた。
「ギリギリだったんだな、結構。」
「そのようですね。」
森の中を進むと、枝や幹がデコボコに育った木々の多いエリアを見つける。デコボコしているのに立派に育って天井を葉で覆い尽くしたそのエリアで作戦を立て直す。
「あ、今思い出したんだが。」
「ん?何ですか。」
顎に手を当ててジュピターが何かを思い出し、アルメリアが反応する。
「そういえば、予告されたとき、クレアがカードを落としていったんだ。」
「カード・・ですか。」
カインも首を傾げる。
「ああ。そこにはこう書かれていたんだ。『私を増やさないように気を付けて』と。」
「うーん。”私”がクレアさんのことだとしたら、断罪者が増えないように気を付けて、ということでしょうか。」
アルメリアの分析にジュピターは、太陽の今日最後のあがきを確認してから、おそらくな、と小さくつぶやき、岩陰に身をひそめるぞ、と指示を出した。二人は顔を見合わせた後、了解、と返事をしてから身を縮めた。
「カインくん・・、あの・・。」
右の岩と左の岩に分かれて隠れた後、アルメリアが弱々しい声でカインに話しかける。
「あぁ、皆まで言うな。・・考えたくはないが、その可能性が高くなってしまったな。」
「ええ。なんだかとても不安になってきてしまいました。」
二人して大きく溜め息を吐き出す。
「まぁでも、あいつのことは、あいつらがなんとかしてくれるはずだ。信じて僕らはこっちに集中しよう。終わったら、すぐに向かおう。」
「そう・・ですね。」
火口からは未だに煙が絶えず上がり、もう夜になろうとしているのに、マグマのせいで妙に明るい。
「うっそ、フォボス火山、噴火してるじゃん!」
その黒煙を見たカミルレが騒ぎ出す。
「そういえば、あいつらもフォボス火山行くって言ってたな。」
「大丈夫かな。」
「あいつらのことだ、きっと大丈夫だろ。校長先生もいらっしゃるんだし、心配しなくていいとは思うが。」
フォボス火山方面に向かいながらアスカ・カミルレペアが不安そうにしていたところに、イアンがニョキッと現れる。
「調査は進んでいるか。」
「あっ、イアン。見ての通り移動中で情報はゼロよ。」
目の鋭いまじめモード、通称オニアンに、カミルレが面倒くさそうに返す。
「で、どうしたんだ。」
本題を話すようにアスカが促す。
「マーベラス隊長ら3年討伐隊が動いてくれることになった。」
「え、討伐隊が?」
「ああ。」
一応、とアマリリスが兄であるマーベラス隊長に相談したところ、すぐに動いてくれたのだ。どうやら、断罪者について警戒しろとジュピター校長から忠告を受けていた先生方が、危機感を覚えて討伐隊の出動を命じてくれたらしい。表向きは”直近1年以内に悪魔が出現した地域の再調査”である。それもそうだろう。まさか”特待科生が断罪者になってしまうのを阻止するため”とは言えないだろう。
「討伐隊が動いてくれることになったため、行動が若干変更になった。まぁ、二人にはあまり関係ないが。」
「フォローの仕方が変わるだろう。変更点を教えてくれ。」
アスカが詳細を話すように促す。
「ジャンペアとレツペアの行動内容の完全入れ替え。およびレツペアの行先をフォボス火山に変更。鶴の一刻にフォボス火山修験道入り口行きのバスの始発ターミナルで合流して欲しいとのこと。」
「フォボス火山修験道入り口行きのバス、・・あ、カリスト高速バスね。」
ジャンはカンナとペアを組み、シデロ・スィーネフォー州フィーキャ・マリャ経由でネプトゥーネを目指し、レツはアマリリスとペアを組み、王都プラシノス・オケアノスのメルキュライ経由で、フォボス火山をはさんだネプトゥーネの反対側ポティリ・オミッヒリ州カミノス・チェーリを目指していたはずだが。
「始発ならディオーネか。」
アスカも変更点を理解したようだ。
フォボス・ダイモス火山の修験道入り口のすぐ横から”火山の聖水”が噴き出しているため、パワースポットとして来る人のために、フィモス・クシラシア州全域から観光用のバスが出ているのだ。
「わかった。鶴の一刻にディオーネのバスターミナルで待ってるよ。」
「じゃあ、そういうことで。」
言うだけ言うとイアンはまたストンと地面に消えていなくなる。今は竜の二刻半ば。ここはシデロ・スィーネフォー州キリマカ・ボルボロービス。一刻分あればディオーネには余裕で行ける。
火山を見上げると、修験道入り口とは違う方向に火砕流が下っていっていた。
「様子を見ながら行こうか。」
「そうね。」
二人は顔を見合わせた後、また足を進めた。
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